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保健室同盟(仮)と前期図書委員

第2話

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 僕は宮地のデータを改めて、パソコンに整理してみた。
 以前、奈落から取り寄せてもらった情報に、向井君と早川さんの情報を合わようと思ったんだ。

 初めのデータは基本的に概要で、生活環境や家族構成が主だ。
 宮地の性格の詳細は書かれていない。
 
 私情は入れずにデータとして僕は情報を整理して行った。
 
 宮地は明るくて、少しチャラくもあり人気者の資質を持っている。
 頭も良く、本来なら感情だけで動く様な人間とは思えない。
 けど…、イジメに関してはどう見ても感情をぶつけているとしか思えない。
 
 このギャップに意味があるんだ。
 抑えきれないほどのストレスが奴を縛り付けている。

 早川さんは本来なら宮地は優しいと言った。
 
 そして、ここまでの資料から十中八九家庭にイジメに走る宮地のストレスの根源があるはずだ。
 それも、父親…。
 
 では父親だけをどうにかすればいいのか…?
 違う気がする…やっぱり、もっと家庭環境に詳しくならないと答えを決め付ける事は出来ない。
 また、理由が1つだけとは限らない。
 
 人間関係ってなんでこうも複雑なんだ?
 
 親族関係ってだけで、華京院の方がお互いの事を知り尽くしてる分、わかりやすくてスッキリしてる気がする。
 本当に羨ましいかぎりだ。

 理想的なのは言いたい事を、すぐに口に出せる関係だけど…宮地相手にそんなの、あり得ない。

 パソコンから手を離して、腕組みして天井を眺めた。

 
 宮地の深層心理に近づく事は、かなり難しいだろう。
 
 …僕はここに来て、少しだけ自分の気持ちがわからなくなって来ていた。
 本当に…宮地のプライバシーにまで踏み込んでいいんだろうか?
 彼を解き放つどころか、逆に追い詰めたりしないだろうか…。
 他人を傷付けてしまう事の不安と恐怖に戸惑いを感じ始めていた。

 煮詰まった頭を切り替える様にパソコンを閉じて、図書室で拾った白い毛の様な物を取り出してみた。

 「図書室の怪人はモフモフなのかな?
 白くて柔らかいモフモフ…。」

 大型犬よりは小さくて、本を落としたり破いたり出来る…。
 ハムスターよりは大きくて力がありそうだなぁ。
 それとも、デカいモルモット?
 ネズミでも大型の物もいるしなぁ。
 でも、それって普通にそこら辺を闊歩してるなんて不自然だ。
 ましてや校内なんて人為的でなきゃ入れないぞ。

 やっぱり、ウサギとか猫とか狸辺りが無難な線かな…。

 白い狸…白い動物は昔、神様の化身とかって崇められていたんだっけ。

 図書室の怪人…白いモフモフ…抱っこしたら癒されてしまいそうだな。
 
 僕は怪人の感覚を想像して胸を抱きしめた。

 問題は…本に執着する理由…。

 そして、それは前期図書委員…もしくは図書委員長と深く関わりがありそうだ。
 神谷先輩もおそらくそう考えている。
 そして、早川さんは関係者だと僕は思う。
 本の装丁の修正などしていて、違和感を覚えたんじゃないだろうか…。
 早川さんは利発だ。
 細かいところに気が付いたんだろう。
 多分…1年ではおそらく秘密を知ってるのは早川さんだけなんじゃないだろうか。

 やっぱり、宮地の事と怪人の事に関係している早川さんの動向は注視しなければならないかもしれない…。
 明日は朝の図書室の監視は神谷先輩がやってくれる。
 早川さんの登校時間の予測はついている…。
 少しだけ…彼女の行動を調べてみようかな。
 
 あ!でも気を付けなきゃ。
 宮地の目もあるし、事情を知らない人が見たら完全にストーカー扱いされる。
 こういう時は女子の土屋先輩に頼みたいとこだけど…あの人は完全にトラブルメーカーだから無理。
 
 森園先輩…。

 僕はふと、森園先輩の存在を思い出した。
 
 森園先輩がいたら、きっと凄い戦力になったろうな…。
 頭がかなり、いいらしいし。
 
 僕は会ってもいない森園先輩に、すでに保健室同盟(仮)に入ってくれる事を期待していた。
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