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ハードで楽しい深夜のお仕事

第27話

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 少し恥ずかしそうな顔で視線を逸らすハイドさんは、ジキルさんの口元をティッシュで拭いた。

「んだよ~。
 また兄弟でイチャイチャかぁ?
 彼女にフラれるぞ!ハイド~!」

 奈落が数枚のカジュアルな服を持ってきた。
 色はてんでバラバラだった。

「安心しろ…もう、別れた。」
「はああ?3ヶ月と持たないじゃねーかよ!」
「いいんだよ。
 オレと付き合う条件はジキル込みで付き合える事だ。
 それが飲めない奴は、こっちからお断りだ。」
「くおお~!何だよそれ!
 ハイド、モテてるのにもったいねーな!」
「ゴメンね…ボクがもっと…しっかりしてれば…。」
「しっかりしてるだろ!
 仕事中のお前は人一倍しっかりしてるし、仕事も早い!オレのサポートにまで回ってくれるだろ。
 その反動が大きなだけだ。
 オレはお前に感謝してるんだぞ。」

 なるほど…仕事の緊張感が解けると、こうなるんだ。
 仕事への集中力が半端ない。

「うはぁ~この変態溺愛兄弟!
 鳥肌立ちそう~!」
「奈落~。失礼だろ。
 樹さんだって、2人に助けられてたって言ってました。」
「あっ…と、それ。
 樹を助けたんじゃなくて、オレがジキルの裾を掴んでる樹を助けたが、正解だな。
 家族、親族でもジキルに手ェ出す奴はオレが許さない!」
 
 ええええ!?そうなの~~?
 …ちょっとだけ、奈落の気持ちがわかった。
 まさに溺愛~!

「心配なだけなんだよ…ボクがこんなんだから。
 はぁー!でもトマトジュース飲んだら元気出てきた。」

 2人は槇さんと入れ違いに奥の部屋に入って着替えを始めた。

 風呂上がりで頭にタオルを乗せた槇さんが、スッキリした顔で帰ってきた。

「どう?あの2人。
 面白いだろう?」
「えっ、はい。
 もっと色々仕事の話しとか聞きたいです。
 今日、なんでモーニング着てるのかとか…。」
「ブライダルフェアの展覧会。
 ほら、来月からはジューンブライドなのに、昨今は結婚式挙げるカップルが減ってるからさ。
 盛り上げる為のイベントなんだってよ。
 で、あの2人が会場運営やら司会をやったんで、ここまで遅くなったらしい。
 物が物だけに後片付けが大変だろ?」
「ああ!だからモーニングなんですね。
 ずっと不思議だったんです。
 モーニングの仕事って何かなって。」

 槇さんは奈落の肩をポンと叩いた。

「ほら、入って来いよ。
 最後だから泡風呂にしても構わないよ。
 お歳暮でもらったバスソープセットあるから。」
「えっ!マジ?」
「その代わり、最後に風呂掃除してくれよ。」
「OK!やったー!泡風呂だぁ!」

 奈落は飛び跳ねるようにしてお風呂場に向かった。

「ははは。
 本当にお風呂場に遊びに行くんだ…。」

 絵が浮かぶようだなぁ。

「あ、…槇。
 洋服借りてるよ。」
「なんか派手な色ばっかだなぁ。
 黒無地がいいんだが。」

 ジキルさんが白っぽい上下とハイドさんが
黒っぽい上下の半袖短パンで現れた。

「それ、返品された物だからゴメンね。
 寄付する為にとってあるから、後でクリーニングして返却してくれよ。」
「寄付してるんですか?」
「あ、うん。
 基本在庫は自分達で購入する買い取りなんだけど、数が多いし。
 無駄にしたくないんで、親しくしてる孤児院や養護施設に寄付してるんだ。」
「慈善事業ですね…。」
「あ、真面目にそう取った?
 これさ…内情聞くと引くかもしれないけど…宣伝効果狙ってるんだよ。
 寄付された人達が街中で着てくれれば、宣伝効果があるだろう。
 特にロゴなんか入ってるものを障害者に着て貰えると、慈善事業に熱心な会社としても捉えてもらえる。」
「へえええ~~!下心ありありなんですね!」
「そう、単なる慈善事業じゃ会社経営は成り立たない訳です。
 ま、悪い事してる訳じゃないんだけどね。」

 確かに悪い事はしてない、けどお金がかかってる分、無償の慈善事業とはいかないのか。
 奥が深いな…。

「有村君…随分と…仕事に興味あるんだね。
 槇の…話しを熱心に聞いて。
 槇は…それで、彼をアルバイトに…?」

 ジキルさんは僕に興味を持ったらしく、興味深々な感じで体を乗り出して来た。
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