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ハードで楽しい深夜のお仕事

第26話

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「あ~、そういえば…槇がそんな…事…言ってたけどぉお…。」
「ああっ!大丈夫ですか?
 っと、…僕、下着姿だった。
 待ってて下さい、すぐに着替えたら連れて行きます。」

 ジキルさんはフラフラしながら、どこか遠くを見ながら呟くように言った。
 僕は大急ぎで服を着て、ジキルさんに肩を貸して居間の方へ連れて行った。

 「あん?なんだお前。」

 目の前に、黒い壁…じゃない!
 モーニングを来たもう1人…。
 鋭いキツネ目の透き通った鼻筋。
 ジキルさんを少しゴツくした感じで体格は一回り大きな感じだった。

「ハイド!お前、怖いってその目と態度!
 もう少し柔らかく行けよ!」
「うるさい!奈落みたいなチャラ男に言われたくねー。
 で、ジキルを返してくれないか?」
「あ、はい。
 体調悪いみたいで、グッタリしてるんです。
 大丈夫ですか…?」
「心配いらね。
 エレベーター酔いとエネルギー切れだ。
 トマトジュースでリコピン摂取すりゃ、すぐに治る!」

 へっ?リコピンで治るの…?

 ハイドさんは片手でジキルさんを持ち上げると抱き抱えたまま、ソファまで歩いて行った。

「有村君~!君もこっちで水分取れよ。
 僕は風呂に入って、目を覚まして来るから。
 奈落~、有村君にジキルとハイド紹介しておいて。」

 槇さんは僕と入れ替わりにお風呂に入りに行った。

 ソファではジキルさんがグッタリした感じでストローでトマトジュースを飲んで、ハイドさんは両手を広げて、脚を組んでソファに座っていた。
 一卵性の双子で確かに似てるけど…大きさが一回り違う。
 漆黒の艶髪にキツネ目で色白、高い鼻筋…確かに冷酷執事の見かけだけど…何でモーニング着てるの?

 「有村はこっち!で、オレンジジュースとアイスコーヒーあるけど…オレンジジュースかな?」
「あ、うん。」

 僕は奈落の隣に座ってオレンジジュースを一口飲んだ。

「じゃ、紹介するな。
 向かって右の低血圧トマトジュース男が華京院かきょういんジキル。
 で、ちょっと骨太の冷徹男が華京院かきょういんハイド。
 ロシア人の母親と日本人のハーフだ。」
「初めまして!有村 恵です。
 よ、よろしくお願いします!」

 僕はハイドさんの鋭い目つきに少しビビりながら挨拶した。

「どうも。
 ジキルは特異体質でね、体内にリコピンが無くなると体調を崩しやすいんだ。
 毎日一定量以上のトマトジュースを摂取する必要があるんだ。
 一卵性でも、オレにはその体質は無いんで、コイツの世話をしてるって訳。」

 ハイドさんはジキルさんの頭を撫でながら言った。

「ん…ありがとう…。
 血圧も低くてね…仕事モードじゃないと、こんな感じなんだよね。」

 顔に似合わず、おっとりした口調でジキルさんは口元を引き上げた。
 …笑ったのかな?

 冷酷執事ならぬドラキュラ伯爵のように、口元からトマトジュースか滴り落ちる。

「ジキル!ストローなのにこぼすなよ。
 このモーニングレンタルだぞ。
 染み付けたら、買取だ。」
「ああ、そうだった。
 衣装のままか…。
 槇に服借りて着替えようかな…。
 汚さない自信ないし…。」
「奥にあるよ。
 不良品で戻ってきた品の箱。
 俺もたまに借りてる。
 待ってろ、取ってきてやる。」

 奈落は立ち上がると奥の部屋へ消えて行った。

 ええええ!僕とこの2人きり!
 どどどどうしよう!

「あ、あのジキルさんとハイドさんは仲が良いんですね。
 奈落と神楽さんは仲良くないみたいだけど。」
「あん?
 別に仲悪いとは思わないけどな。
 嫌い嫌いも何とやら…お互いの力を意識してるからだろあいつらのは。
 双子で真逆の性格だ。
 つまり相手の持ってないものを片方は持ってる…だから羨ましいし、妬ましい。
 けど、それは嫌ってる訳じゃない。
 わかるか?チビッコ。」
「えっ…はあ。まあ。」

 チビッコって…僕の事だよね…。

「有村君…ゴメンゴメン。
 ハイドはぁ…親族以外の名前顔と名前覚えるの不得意なんだ…だからぁ…あだ名で覚えるようにしてるんだ。」
「悪いな。気分悪かったら…。」
「いえいえ!気軽に呼んでくれて嬉しいです。
 フレンドリーにあだ名付けてくれる人って、今までいなかったから…。」

 顔は鋭くて怖いけど…不器用で優しいんだな…人は見かけじゃないな。

 
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