上 下
157 / 280
ハードで楽しい深夜のお仕事

第3話

しおりを挟む
「怪人避け?
 ゴキブリなの?怪人って?
 ゴキブリホイホイなの?書物って?
 違った、怪人ホイホイ?」
「土屋先輩…。
 変なところイジらないで下さい。」

 なんだか土屋先輩のボケに付き合うのに、いささか疲れてきた。

「いや、土屋さんの言う通りかな。
 ホイホイじゃなくて、シッシッ!って感じかな。
 近づけないのが目的かも。」
「近づけない…怪人が、あのシートが苦手なんですか?」
「あー、まぁそんなとこかな。
 確証が無いんで、ここまでにしよう。
 もう少し確証を得られたら。
 今、僕の頭の中に浮かんでる者と怪人が一致するかも知れない。」

 神谷先輩は何かに気が付いたようだけど、僕と土屋先輩はサッパリだった。
 
「ずっる!神谷君だけ~。
 確証って何よお!」
「おいおい、何のために前年度図書委員長とのセッティングをお願いしに行ったんだよ。
 昨日の放課後、一緒に行ったろ。」
「あ!そうだったわ。
  でも、まだ日にちは決まってないし。」
「来週までには連絡とってくれるって先生が言ってたろ。
 焦りは禁物だよ。
 …それに、図書室に同好会の書類の避難を手伝ったんだろ、有村君。」
「あ、はい。」
「なら、戻すのも手伝う約束してるかい?」
「してます、してます。
 昼休みに。」
「ん、となるとチャンスかも。
 室内をくまなく観察して欲しい。
 匂いもね。」
「に…匂い?ですか?」
「細かく、見てって意味だよ。
 慌ててる時ほど、ミスってのは起きやすい。
 昨日は特別な状況だった…想定外のね。
 つまりヒントが残されてる確率が高いと思うんだ。」
「はあ。わかりました。
 注視してみます。」

 名探偵のように鼻をヒクヒクさせながら、神谷先輩は再び考え込んでしまった。

「もう、意外と謎解明って時間がかかるのね。
 この胸のモヤモヤから早く脱却したいわ!」

 土屋先輩は逆にストレス溜まっちゃってんのかなぁ。
 …でも確かに、モヤモヤするよなぁ。
 神谷先輩は何に気が付いたんだろう?

 あ、宮地が登校してきた。
 そろそろホームルームか。
 宮地の登校を調べるはずが、ホームルームの時報のような感じで観察していた。

 あれ?また早川さんを見なかったな。
 昨日も…でも登校してた。
 遅刻…?それともグラウンド側から…?

「ほら!行くよ土屋さん!
 ホームルーム始まるよ!」
「えー!もう?」

 土屋先輩の袖を引っ掴んで、神谷先輩は保健室を出て行った。
 僕も急いで、後を追うようにして保健室を後にした。


 昼休み…手伝いプラス宮地情報収集に室内調査、これは大忙しだなぁ。

 「はふっ。」

 思わず、溜息が漏れた…。
 
 今日は早めに帰ろう。
 昼休みだけで疲れそうだ。

 けど、それは心地よい溜息だった。
 だって…何もする事なく過ごす学校生活よりは何十倍もいい。
 僕はそれを、誰よりも知っている。
 今…思う…。
 生活が充実するっていうのはこういう事なんだって。

 慌ただしくて、疲れるけど…楽しい。
 
 生きてる実感を、肌で感じられる…。
 
 さあ!いざ行かん!
 宮地のいる教室へ!
 
 今の僕は…宮地のイジメだって、楽しんでみせる!

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

年下の婚約者から年上の婚約者に変わりました

チカフジ ユキ
恋愛
ヴィクトリアには年下の婚約者がいる。すでにお互い成人しているのにも関わらず、結婚する気配もなくずるずると曖昧な関係が引き延ばされていた。 そんなある日、婚約者と出かける約束をしていたヴィクトリアは、待ち合わせの場所に向かう。しかし、相手は来ておらず、当日に約束を反故されてしまった。 そんなヴィクトリアを見ていたのは、ひとりの男性。 彼もまた、婚約者に約束を当日に反故されていたのだ。 ヴィクトリアはなんとなく親近感がわき、彼とともにカフェでお茶をすることになった。 それがまさかの事態になるとは思いもよらずに。

恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜

k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」 そう婚約者のグレイに言われたエミリア。 はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。 「恋より友情よね!」 そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。 本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

後宮の記録女官は真実を記す

悠井すみれ
キャラ文芸
【第7回キャラ文大賞参加作品です。お楽しみいただけましたら投票お願いいたします。】 中華後宮を舞台にしたライトな謎解きものです。全16話。 「──嫌、でございます」  男装の女官・碧燿《へきよう》は、皇帝・藍熾《らんし》の命令を即座に断った。  彼女は後宮の記録を司る彤史《とうし》。何ものにも屈さず真実を記すのが務めだというのに、藍熾はこともあろうに彼女に妃の夜伽の記録を偽れと命じたのだ。職務に忠実に真実を求め、かつ権力者を嫌う碧燿。どこまでも傲慢に強引に我が意を通そうとする藍熾。相性最悪のふたりは反発し合うが──

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...