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憎しみのパズルピース

第12話

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 宮地が僕を憎む理由…早川さんは心当たりがあるかもしれない。
 けど…それを聞き出すには、僕が宮地にイジメにあってる事を話さなきゃならない。
 しかも、話したからと言って協力してもらえる保証は無い。
 クラスの奴らみたいにドン引きされる可能性だってある。

 いきなりそんな話しを切り出すのも何だな。

 けど…どうしても早川さんの協力を得たいのも事実だ。
 どうしたものか…?

 …使えるものは…ドンドン使え…。

 そうだ。
 確か加納先生はよく、早川さんが紙で指を切って絆創膏を貰いに来るって言ってたよな。

 加納先生に噂や人伝てに聞いた話として、僕の事を聞いてもらえるかな?
 運良く加納先生は僕が早川さんの事を好きだと勘違いしてくれてる。
 これくらい、協力してくれそうだ。

 僕は1時間目が終わると、教室を飛び出して加納先生を探しに保健室へ行ったが姿が見えず、職員室に向かった。

 職員室に向かうと、ちょうど加納先生が職員室から出で来たところだ。

「加納先生!」

 僕は加納先生の元にダッシュした。

「おや、有村君。
 どうしました?」
「えっと…その。
 ちょっと、こっちへ。」

 僕は加納先生を柱の陰に引っ張った。

「実は…先生に、頼み事がありまして…。
 早川さんの事で…。」
「おやおや。これは。
 何です?少しなら協力出来ますよ。」
「僕が…イジメにあってるのを知ってるかどうか…。
 その…実は僕を、あまり良いイメージでは無いんじゃないかと。」
「はは~ん。なるほど。
 確かに、イジメの件はリスクになりそうだし。
 さりげなく聞いてみようか?」
「…聞いてくれます?」
「もちろん、その位なら別にえこひいきにはのないだろう。」

 ほっ。
 やっぱり勘違いさせたままで正解だったな。
 こんなに上手く行くなんて。

「ありがとうございます。
 結果はちゃんと教えて下さい。
 僕が傷付くかも…なんて御心配無用ですから。」
「わかった。
 包み隠さず正直に教えるよ。
 もし、失恋しても保健室でヤケ酒ならぬヤケ茶でもするといい。」

 加納先生は優しく笑って保健室へと戻って行った。

 よし、これで今日中にとは行かなくても、いずれ早川さんの僕に対する心象が明らかになる。
 それを聞いて対応する事にしよう。
 僕はほくそ笑むと両手をポケットに突っ込んで、教室に戻った。

 仕込みは上々。
 勘違いしてくれた加納先生に感謝。

 

 教室に戻ると、早川さんが登校していて教室の後方の扉口で宮地と話してるのが目に入った。

 視線を逸らしつつ、目の端っこでしっかりと2人の行動を確認した。

 …お弁当…?
 どうやら、早川さんは宮地に弁当を渡していたようだ。
 そう言えば、宮地家の家事をする事もあるって言ってたっけ。

 お母さんも事故にあって大変だからか…。

 何だか…イジメられてる僕よりイジメてる宮地の方が不幸で…可哀想に思える…。
 まるで、もがき苦しんでるような…情けをかけてるって訳じゃ無いんだけど。
 切ない気持ち…。

 人間って、なんて面倒くさい生き物なんだって…。
 単純明快に生きられない…状況も…感情も…ごちゃごちゃし過ぎて…大切なものを見失ってしまう。
 
 自分自身さえも…。
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