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傾向と対策のパズル

第14話

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「あ!あった、あった…。
ICレコーダー。」
 
 専門のコーナーに辿り着くと、樹さんがピョンピョンと飛び跳ねながら商品に飛び付いた。
 そして、急に雄弁に喋り出した。

 「小さい物だと自分で外側をカムフラージュしやすいよね。
 装飾も出来るし…。
 でも…学校で常に持って歩くなら…この小さな黒いマイクのがオススメかな?」
「ピンマイク…でもシャツや上着だとすぐにバレない?
 それに…僕の声より相手の会話を録音したいんだけど…。」
「有村君…相手に知られないようにだから、着ける場所も考えないとね。
 ネクタイ裏や、襟の内側に白マイクってのもアリなんだけど…。
 僕なら…ベルト…!しかも後ろ!
 高性能ならここで十分相手の音が取れる。
 しかも、ここなら上着を着れば隠れるし、前でも黒い制服のズボンならベルト留めと重ねると…パッと見、わからなくなるだろ。」
「ああ!そうか…すごい!」
「そんなに驚く事か?
 第一ベルトが黒けりゃ、それだけでも意識しなけりゃわからない!
 まぁ…華京院が良く使う手だな…伝統芸だよ。
 樹…俺が頼みたいのはそこじゃなくて、出来るだけ性能がいいのを選んでやって欲しいんだ。
 有村がやる気出してるんだ。
 しっかりとサポートしねぇとな!」
「了解!確かに、下手なのを買うと音割れするしね。
 あと、耐久性も必要だと思うんだ。
 えっと…複数購入をオススメするよ。
 状況に応じて使い分けする方がいいよ。
 1度でも見破られた手は使えないからね。
 ペンタイプは性能が良くないのもあるから、室内専門にした方がいい、おススメじゃないけど。
それを踏まえて少し重みのあるものを選ぼう。
 これなんか長方形で掌に収まるし…筆入れに入るくらいの大きさがいいかも。 
 どうかな…。」

 樹さんの視線ががキラキラ輝きながら商品の上を滑っていく。

 「複数購入は僕も、考えてたんだ…でも2つくらいだと考えてたんだけど…。」
「そうだね、2つ3つがいいね。
 初心者だと…操作性も単純、簡単なのがいいね。
 本当ならスマホと共有とか出来るのがいいけど…少し慣れてからステップアップを考えようよ。
 失敗する方が恐いしね。
 ピンマイクの遠隔で録音する物は、今日一日僕に預けて貰えれば明日明後日には、より性能がを上げる改良をして奈落に渡せるよ。
 華京院専用の物と同レベルくらいにはなるよ。」
「あ!はい!宜しくお願いします!」
「うんと…。
 手数料は後で奈落に伝えるね。
 弱い僕等の武器は限られてるから、しっかりした物を使わないとね。」

 微笑む樹さんのセリフに共感した。
 ちゃんと僕に合わせたものを選んでくれてる。
 気持ちがわかるって、こんな感じなんだ…。
 通じてる感がハンパない!

「そうだ!商品選んだ後で飯喰いに行くけど、樹もどうだ?
 バンバーガーセットくらいしか食べないけど。」
「えっ…いいの?いいの?
 僕も…一緒にいいの?」

 さっきの雄弁さは何処へやら…急にドギマギした話し方に戻った。

「僕も樹さんともっと話したいな。
 僕からもお願いするよ。」

 僕の言葉に樹さんは涙ぐんだ。

「うん!うん!
 えっと…親族以外の人にそんな事言われたの…初めてだ。
 ありがとう。
 …有村君…僕…嬉しいよ。」
「もう泣き虫は卒業したはずだろ!
 ほら、鼻水出てるぞ!」

 奈落はさりげなく、ティッシュを取り出して、樹さんの鼻を拭いた。
 あははは。
 兄弟みたいだ…。
 そして、奈落は本当に優しくって、好かれてるんだって感じた。
 槇さんも性格が良すぎるって言ってたのを思い出した。

 奈落は槇さんの方が仕事が出来て格上だと言ってたけど…人間的には全然劣っていない。
 いや…むしろ奈落の方が上なんじゃないかと思ってしまう。
 女の子にしたら、誤解しちゃうんだろうけど。

「じゃあ、樹さんのオススメを選んで下さいよ。
 信頼出来る人に選んで貰った方が安心です。
 宜しくお願いします。」
「あ!っ…うん!」

 樹さんは慌ただしく商品を選び出して、カゴに入れた。
 そして3人でレジに持って行った。

 その後、樹さんの買い物にも付き合って、ちょうどお昼過ぎになったので、バンバーガーショップに入った。
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