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王子の眠る白い城
第14話
しおりを挟む「時間通りだね。
さすが、奈落。
職員にそれとなく、来客の医師が病院内を視察見学に来る噂を流してあるから、それ程意識しなくて構わないよ。」
!…ドアを開けたのは、僕等と同年代に見える細身で色白の看護師の男の子だった。
華京院…?
「天童さん、すいません。
わざわざ、手伝ってもらって。」
「構わないよ。
ちょうど、別仕事で潜入してたところだし。
一石二鳥。
久しぶりに、爽とも話せたし、良かったよ。」
あれ…?華京院じゃない…。
同世代の割には、珍しく奈落が畏まって見えるんだけど。
天童さん…何処かで聞いた気が…。
「若い子の仕事振りを、遠目で拝見させて貰うよ。
参考になるしね。」
「さ、参考にだなんて、そんな恐れ多い。
でも、精一杯やりますっ!
あ、有村も一応挨拶して。
天童さん。
俺たちの大先輩!もう華京院からは独立してるんだけど。」
「宜しく、君のプロジェクトには樹と共に裏情報サポートを主に請け負ってる。
樹が君に頼まれて、個人情報収集をしたよね。」
「あ!樹さんが言ってた…えっ?
でも、ええ?よ、宜しくお願いします。」
樹さんの話では確か…かなり歳上…?ええ?
「ああ、この容姿ね。
これでも20歳はとっくに超えてる…というよりアラサーかな。
社会的には、異質な感じだろうけど、仕事上はむしろ、この容姿は得なんだよ。
さ、入って。
時間に限りがあるからね。」
天童さんに招き入れられて、病院内の潜入は上手くいった。
これ以上のサポートは規約違反に触れる可能性があるとかで、天童さんはすぐにその場を離れた。
病院内は時間も時間だけあって、不要なロビーの明かりは消されていた。
まだ午後7時だっていうのに、寒気のする何かが現れそうな雰囲気だ。
省エネ化のせいか、あちこちは非常灯で照らされていた。
1階は患者が居ないから、電気を消してるのか。
と、すれば、入院患者は上の階に入院してるはずだ。
医師の姿で白衣をパタパタさせながら、奈落が北側階段の方へ進み出した。
「病室とかは分かるの?」
「もちろん!天童さんから報告して貰ってる。」
「…あ、ゴメン、その、気になって…天童さんって華京院じゃないの?その…名前。」
「あ、そっか。
うーん。つまりだ。
天童ってのは、独立後、もしくは独立確定時に華京院の名前は使わない約束の元で、新しく名乗った苗字なんだ。
だから、元華京院って事かな。」
「独立したら、華京院じゃ無くなるの?」
「どう言えばいいかな…。
秘密厳守とか、華京院を頼らないで自力でやれる力をつけるって証とか、制約って感じなんだよ。
まあ、独立ってのは華京院最上層部と対等な立場で物を言えるって事かな。」
「ええ!じゃあ、かなり凄い人なんじゃないの?天童さんって。」
「ああ、凄いよ。
あんな、穏やかな表情だけど。
以前は現、華京院トップの紘さんの右腕だったらしいからな。
ヒョロそうに見えるけど、護身術の達人だしな。」
ひえええ。
華京院って見かけとのギャップある人が、多過ぎなんですけど!
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