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王子の眠る白い城
第3話
しおりを挟む神谷先輩も重谷先輩のペースに、どう対応したらいいか、戸惑っているようで、太腿の上で指をグルグルと回していた。
「あの!では、怪人ではなくて、図書室…もしくは図書委員について話して貰っても、構わないでしょうか?」
僕は緊張の糸を断ち切って、身を乗り出した。
「ん?いいよ。
世間話し感覚でしか、話す事無いと思うけど。
あ、いいんだけど…仲間を疑うような発言はしたくないかな。
オレはあいつらを信用してる。」
「なるほど、重谷先輩は図書委員に、かなり愛情を持ってらっしゃいますね。
それで…卒業しても尚、頻繁に来校してると聞きました。
かなり親しい繋がりのように見えますけど…。
もしくは…何か特別な目的があるとか…?」
「あっれ?
もしかして、疑われてるのってオレ?
事件当日には学校に来てないはずだけど。」
「いえいえ!それは違います。
重谷先輩に事件は起こせないのは理解してます。
参考までにお聞きしたいだけで…あの…。」
ヤバい!
怒ったかな?
「別に、そんなビビらなくていいよ。
委員と来校回数の話しだっけ。
ここの図書委員ってほとんどが、本当の読書好きとか本好き。
ボランティア委員状態だけにね。
まあ、1人2人は委員の実績作りだけど。
あの図書室の雰囲気、まさに本好きにはたまらない空間でね。
建物は新しいけど…中身は古ぼけた図書室さながらで、時間の狭間に紛れ込んだ気分にさせられる。
本独特の香りに、本棚の古い木の香り、薄暗くて、妖しい雰囲気。
気の知れた仲間達。
とっても居心地が良いんだよ。
ついつい、大学のレポートもここでやらせて貰ってる。
市の図書館や大学の図書館より、快適なんだよ。」
まただ。
すんなりと答えてくれた。
自分には何一つ隠す事などないように、明るく、はっきりと。
これが策略とすれば、かなり厳しい。
質問が全て想定されてるという事になるからだ。
演技なら、それ相応の秘密を抱えてるのかも知れない。
そうまでして…重谷先輩が守りたい物って何だ?
「大野先生にしても、今の顧問の先生にしても、図書委員という真面目な奴等が集まるイメージもあって、信頼度が高い。
と、言えば聞こえは良いけど、実情は丸投げしてるんだ。
生徒が全てを任されてる。
図書委員はそれだけ、仲間意識も他の委員より強いのは確かだよ。
卒業しても尚、オレを頼って必要としてくれている。」
「確かに、不良の図書委員なんて、想像も出来ませんね。
きっと、成績も悪くなくて上級生から教えて貰ったりとかもあるんでしょうね。
僕なんて、それほどじゃないから、有村君に教えられそうもないかな。」
「そんな!神谷先輩からは色々と教わる事が多いですよ!」
「まあまあ、確かに勉強を教える事もあるけど、意外と活動も活発になんだよ。
まあ…発案者はほぼほぼ、オレなんだけど。
夏休みには山小屋借りて、夜空を見上げながらの読書感想発表会とかさ。」
演技とは思えないほど、自然に会話をどんどん進めていく重谷先輩に、引き込まれそうな自分を、何とか引き止めようと頭の中をフル回転させた。
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