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笑顔に潜む、策士の罠

第23話

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「あの…、もしかして、怪人事件の予測が外れてただけって考えられませんか?」
「予測が外れる?」
「つまり、事件の起こるのを察知出来ない…。
 予想はしてるものの、特定の日にちまでは分からないから、大体の予測で来校して様子を見る。
 また、事件が起こってから情報を聞いて、慌てて来校するとか。」
「ふふん。
 確かに、怪人が意思の疎通が出来ないものであると考えると、それもありだな。
 重谷先輩ですら手を焼いてるのかも知れない。」
「またぁ!2人だけで通じちゃって!
 わかるように説明してよ!」

 ドタドタと土屋先輩が地団駄を踏み始めたので、分かりやすく解説する事にした。

「以前から仮定していた、怪人動物説なら、こういう事もあり得るっていう事ですよ。
 誰かに飼いならされていない動物なら、なおの事、行動を予測するのは難しいです。
 何せ言葉が通じませんからね。
 どんなに注視しようとしても、想定外の行動を取られてしまう。」
「でもぉ!そんなに勝手に行動する動物なら、校内を闊歩してたら、騒ぎになるでしょう?
 そんな話しは聞かないわよ。
 それに、本を破いたりする乱暴な動物を放し飼いなんて、まともな人の発想じゃないわよ。」
「おや、土屋さんにしては、良い突っ込みどころだね。
 確かに、僕もそこは引っかかってる。
 何かがあるはずなんだ…そこに…。」
「おそらく、そこの理由が重要なんですよ。
 図書委員にしても。
 本を破く事に、意味があるのかも知れない。」

 僕のセリフを聞くなり、土屋先輩は目を丸くして僕の顔を覗き込んだ。

「何それ!
 本を破くのに意味があるって、破壊する行為に特別な意味ある?
 どう考えたって、八つ当たり、イタズラの域を超えてないと思うけど。」
「そうかな。
 単純に見ればそうだけど、それなら図書委員が秘密を隠す理由にはならないはずだ。
 本を破くなんて、本好きが許す行為じゃない。
 …ん…待てよ。
 許せる行為じゃないはずなのに、許してる?
 つまり、許せない行為以上の理由が、そこにあるんだ。」
「じゃあ、神谷君にはその理由はわかるの?」
「う…まだ。これからだよ。」
「軽く、まとめましょう。
 放課後が勝負です!
 まず、重谷先輩に事件発生当時の状況を話して貰いましょう。
 その上で、突っ込むところは突っ込む。
 で、次に頻繁に来校する目的の確認。
 現在も図書委員と関わらなければならない理由。
 そして、神部先輩について…。
 直接、神部先輩に会いたい旨を伝えて、重谷先輩の反応を見る。
 放課後はこんな感じでどうでしょう?」

 土屋先輩も神谷先輩も、僕の意見に反論する事なく、すぐに目を合わせて頷いてくれた。
 何だかんだで、意見はまとまった。
 土屋先輩の情報や行動で、緊張感も解れて、尚かつ、神谷先輩のやる気も引き出せた感じだった。
 負け戦さと思ってだけど、これは何か確実に得られそうな予感がして来た。
 放課後、職員室前で神谷先輩と落ち合う約束をして、昼休みを終えた。
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