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保健室同盟(仮)と前期図書委員

第48話

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 眠気もスッキリと冷めた頃、午後の授業は終わり、ホームルームを経て、放課後に突入した。

 さて、睡眠も取れたし、保健室に直行だ!

 鞄を抱える様にして、教室のドアを駆け抜けようとした。

 ガシッ!

「えっ!」
「ぐあっ!また、てめぇか!有村!」

 ええええ~またぁ?
 冗談でしょう!最悪だ!

 なんと、僕と宮地が同時に出ようとした為に、ドアに挟まった。

「ご、ごめ…。」
「あ!まさか、図書室じゃねーだろうな!」
「ひえっ!あ、ち、違う!全然!」
「嘘じゃねーだろうな!」
「本当!…先輩との用事で…急いでるだけで…。」
「けっ!だったら、さっさと行け!
 俺の周りをウロチョロすんな!目障りだ!」

 バシッ!

 「うっ!」

  宮地は僕の太もも裏に、回し蹴りを食らわすと、そのまま廊下を駆けて行った。

「いちいち、蹴り入れなくてもいいだろう…くそぉ!」

 ヒリヒリする太もも裏をさすりながら、上目遣いで宮地の後ろ姿を睨んだ。

 ピロリロリーン。

 おっと、奈落が気を遣ってメッセージをくれた。

『大丈夫か?
 ケツ、割れてないか?』

 おいおい!なんつーメッセージ送って来るんだよ~もう。


『元から割れてるよ!
 って、気にしてくれて、ありがとう。
 でも、下品だよ。
 実際には太ももだしね。』

 送信。

 ピロリロリーン。

『んだよ!有村相手に気取っても仕方ねーだろ。
 どうだ?
  気が少しは楽になったか?
 しかめっ面を、先輩達に見せたくは無いだろ。』

 あ…。
 ふぅ。
 なんだよ…ちょっと胸に響いたな…。
 奈落の気遣いって、きめ細か過ぎる。
 胸に小さな明かりが灯ったかのようだ。

『ん!もう大丈夫!
 帰ったら、ランニングだからね!』

 送信。

 ピロリロリーン。

『了解!』

 …あ…また例の如く、シュールなスタンプが送られて来た。
 有名漫画のスナイパーが、銃ではなく…カンチョーの指を構えていた。

 自分で選んで購入してるのか、はたまた誰かにプレゼントされてるのか…。
 これが、奈落からじゃなかったらドン引きするところだろう。

 奈落のおかげで、宮地にかき乱された心も、すっかりと穏やかになり、僕は保健室へと向かう廊下を早歩きで歩いた。

 あれ、宮地って図書室に行ったのかな…。
 今日は水曜日だから図書室は閉まってるはず。
 って事は、やっぱり怪人の為に何かをしに行くのかなぁ…早川さんと一緒に…。
 
 や、や、別にヤキモチなんかじゃなくて、多分そうだろなぁって感じで。
 …別に、好きとかタイプとかそんなんじゃなくて…。
 僕に対して普通に接してくれる女子は、数少ない訳で…。
 
 僕は廊下を歩きながら、少し顔が赤くなってしまった。
 保健室までには冷まそうと、パタパタと顔を扇いだ。
 
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