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第46話 違和感

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「まずは家と食料の確保だな」

 オズは街から遠く離れた森を歩いている。
 行き先は全く決めていなかったので、周りよりも飛び抜けて広いこの森に適当に決めた。
 オズはたくさんの木や石など、家や生活に使えそうな材料をを取ってきた。
 材料は一瞬で集まり、材料を集めるついでに食料も集めていると、いつの間にか1週間分の食料が集まっていた。

「これだけあれば大丈夫だな」
重力操作グラビティコントロール

 ゴトゴトゴトゴト

 重力操作グラビティコントロールによって集めた材料が一斉に動き出し、速攻で窓の部分だけが空いたログハウスが完成した。
 家の中には机や椅子などの木の家具も作られていた。

「窓も作らないとな」
抽出ドローからの融合フュージョン

 オズは抽出ドローによって、珪砂や石灰石などのガラスの素材を地面から取り出した。
 そうして融合フュージョンによって窓ガラスが完成した。

「これで大丈夫だな」

 オズはこのログハウスで生活しながら、ゼシルを倒す為に毎日修行をしている。


 ◆


 オズが街を出てから1ヶ月が過ぎた。

「今日も修行してくるかー」

 ガチャン

 オズが修行をしようと家を出ようとした時、ドアが何者かによって開かれた。

「魔王様、やっと見つけましたよ」

 ドアを開けたのは、ジークであった。
 ジークの服はボロボロで、とても疲れているように見える。
 恐らく、オズが街を出てからずっとオズのことを探し回ったのだろう。

「何しに来たんだ」
「ゼシル様を倒しに行かれるのですよね?」
「ああ、そうだ」
「私も共に戦います」

 ジークは背を向けるオズに、ゼシルの話を持ち出した。
 1か月前にバハムートが街を襲ったのがゼシルの仕業であることは、オズとジークしか知らない。
 Sクラスのみんなは誰かは分かっていないが、オズではないことが分かっているだけだ。

「拒否する。僕1人で十分だ」
「いいえ、私も戦います!」
「無理だと言って……」

 オズは拒否をしながらジークの方を見ると、今まで見たことのない目をしていた。
 その目は覚悟を決めた、拒否することを許さないと訴えかけているかのような目だ。
 そんな覚悟を決めた目に、オズは言葉を詰まらせた。
 そうして少し口角を上げ言った。

「フンッ。いいだろう」
「あ、ありがとうございます!」
「しかし、足手まといにはなるなよ」
「はい!」
「座れ。会議だ」

 ジークは嬉しそうに大きな返事をする。
 そして、オズは無駄に多くつくられた椅子に座るように命じた。
 ジークが椅子に座るとすぐに会議が始まった。

「ジーク、私が転生してからゼシルと会ったか?」
「はい。何度か幹部会が開かれて話し合いをしました」
「その時に何か変わったことは?」
「ゼシル様以外は変わったことはないですけど……」
「ゼシル様は会う度に異常なほど魔力が上がっていました」
「幹部以外の魔族はどうしている?」
「最近はどこに行ってもいないです」
「そうか……」

 オズはジークの話を聞き、ずっと前からゼシルが何かを企んでいたことがはっきりした。
 そうして、何をしようとしていたかさえも分かってしまった。

「何か心当たりがあるのですか?」
「ああ。魔族食いをしている」
「それって、仲間たちを食べるってことですか⁉」
「そうだ。僕が止めていたことをやったのだ」
「どうやってやるのですか?」
「なぜ知りたがる?」
「え、えっと、初めて聞くので……」

 オズはジークの動揺が気になったが、説明を始めた。
 魔族食いとは、名前の通りに魔族を食べるのだが、そのまま食べるのではない。
 まず、血を搾り取って熱する。
 その後、身体の下の内臓から入れていき、1週間煮込む。
 この方法が最も効果が出るのだ。
 また、食べる魔族が強ければ強い程効果も強くなる。
 しかし、今のゼシルは下級魔族を食べているようだ。
 しかも、違う順番で。
 恐らく、まだ完全な方法が分かっていないのだろう。

「よって、1週間後にゼシルを倒しに行く」
「分かりました。ありがとうございます」
「どうして感謝する?」
「いいや、何でもないです」

 そう言うと、ジークは立ち上がり、口角を上げて帰っていった。

「よし、修行するか」

 そうしてオズはジークの異変を気にすることなく、修行に行った。
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