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第14話 アリアの決心(2)

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「街ってすごいな」
「でしょでしょー。ここは、世界で1番賑わう場所だからね」
「そうなんだ。アリアは来たことあるんだ」
「ま、まあ、何回かね。それで……」
「アリア、なんかやってるよ。見に行こうよ」
「あ、うん。行こうか」

 アリアは、男に絡まれてから、なかなか話を言い出すタイミングが見つからないままでいた。
 オズの方はと言うと、初めての街で興奮している。
 アリアは、オズがこんなに楽しそうなのを初めて見るので、より言い出しにくいのだ。

「あ、あれも楽しそうだ。行こうよ」
「いいよ」
「さっきから、元気ないけど大丈夫?」
「えっ?」
「勘違いならいいんだけど、普段と違って静かだから」
「あ、ああ。何にもないよ! さあ、回っていこ!」
「お、おう」

 それから、2人の間には何とも言えない空気が流れていた。
 しばらくの間、街を歩き続けた。
 そうして、最後までたどり着いた。

「ここで最後かー。アリア、この大きい建物って何なんだ?」
「ああ、ここね。ここは、『魔法学校』よ」
「魔法学校? 何するところなんだ?」
「魔法学校はね、名前の通りで魔法の修行をするところなの」
「ほおー。凄いな。こんなとこがあるんだ」
「それだけじゃなくって、剣術とかも教えてくれるの」

 オズは、学校というものを知らなかった為、魔法学校にとても興味を持った。
 魔法がもっと上手くなるだけではなく、剣術までできるのだから、いいことだらけだ。

「僕、行ってみたいなー」
「私も行きたいな」
「一緒に行こうぜ」
「いいよ。まあ、15歳になってからなんだけどね」
「そうなんだな」
「ねえ、オズ」
「ん、なんだ?」
「大事な話があるんだけど……」
「あっこの広場で座って話そう」
「うん」

 そうして2人は、広場まで歩いていく。
 何の話か想像がつかないが、オズは、今までにない不安感に襲われた。
 アリアの硬い表情を見れば、いい話でないことくらい、すぐにわかる。

「ここに座ろうか」
「うん」

 日は沈みかけており、広場には誰も居らず、静かだった。
 オズは、アリアの顔を見ることができなかった。

「それで、話なんだけど……」
「うん」
「それはね、村が危ないの」
「え、どういう事だ?」
「村が何者かによって消されるの」
「えっ……」

 オズは、驚きのあまり、声を出すことができなかった。
 村がなくなるなんて、全く想像ができない。
 オズは、アリアが言っていることを信じられなかった。

「まあ驚くよね」
「信じられないな。本当なら、根拠はあるんだろ?」
「うん。実は私ね、未来が見えるの」
「それは、魔法か?」
「いいや、最近わかるようになってきたの。あそこの花を見て。落ちるから」

 ポトン。

「本当に落ちたぞ。未来が見えるって、本当なんだな」
「うん」

 アリアが言った通り、花はすぐに落ちた。
 枯れている花が落ちるというなら、たまたまでもあり得る。
 しかし、まだまだ咲きそうな花が落ちるのを予測するなんて、無理だ。
 オズは、アリアを信じることにした。

「それで、未来に何か大変なことが起きるんだな」
「そうなの」
「それは、なんなんだ?」
「グスゥン」
「大丈夫か?」

 アリアの目には、涙が溢れていた。

「未来には何があるんだ?」
「このままだと、村が、村が」
「村がどうなるんだ⁉」
「無くなっちゃう」
「え……」

 予想もしていないことを言われ、オズは固まってしまった。
 村ってことは、母さんや、父さんまでという事だろう。

「僕たちで何とかできないの?」
「今のままだと、手も足もでない……」
「マジかよ……」

 厳しい事実を伝えられたオズは、半ば絶望していた。

「オズ、聞いて」
「なんだ」
「私たちで何とかするよ!」
「でも、手も足もでないんじゃ……」
「それは、今の話。これから、修行するんだよ!」
「期間はどれだけあるんだ?」
「早くても半年後だよ。近い未来ではなかったの」
「クソッ、できる限りのことは、やるしかないよな」
「うん。私たちで村を守ろう! オズとなら、なんだか勝てそうな気がしてきた!」
「そうだな。僕たちで、やろう!」

 そうして、2人は力強い握手を交わした。
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