底辺ハンターのリベンジダンジョン！～モンスターに全てを奪われたので、雑魚の俺が最強の役職『覚醒者』を駆使して復讐しようと思います～

第四十一話 一人じゃない

「お前だったんだな、愛人あいと」
「よく覚えていたな、進しん君」

　そこには、あの日と全く変わらない顔をした『愛人あいと』が、立っていた。

「あ、あいと、くん？」
「やあ、久しぶりだね、優羽ゆうちゃん」
「愛人あいと、なんでこんなことしてるんだ？　お前はハンターだろ？」
「ハンター？　笑わせないでくれ。僕が、そんなものになるはずがないだろ」

　久しぶりに話した愛人あいとは、全くの別人のように思える程、全てが変わってしまっていた。
　まるで、闇に染まっているような感じがした。

「それに、お前たちハンターのせいで……」
「過去に何かあったのか？」
「……っ⁉　う、うるさい！　お前たちに話すことなどない！　大人しく俺に殺されるんだな！」

　―ビュゥン！

「優羽ゆう、来るぞ！　集中しろよ！」
「おっけー！」

　愛人あいとは、声を荒げると、勢いよく攻撃してきた。
　俺たちは、気を引き締める。

「来い！」
「連続スキル【炎爆フレイムバースト×4モーティプルフォー」
「そんなことしても無駄なんだよ！」
「スキル　【解除アンロック】」

　―スッ

「スキルの効果が打ち消された⁉　これならどうだ！」
「剣技　【空切くうせつ！】」
「【解除アンロック】」

　―スッ

「これもダメなのか⁉　なら、これは！」
「強化スキル　【硬化ハードボディ！】」
「【解除アンロック】」

　―スッ

「スキルが、効かないだと……」
「早速、一人をあの世に送れそうだ！　ハハハ！」

　スキルの効果を打ち消され、俺はどうすることもできずに立ち尽くしていた。
　愛人あいとは、勝ちを確信した顔で迫ってくる。

「マズい！　このままじゃ、どうすることもできねぇ！」

「無魔法　【反転リバース！】」

　―ヒュゥゥン

　―ヒュゥゥン

「クッ、せっかく進しんを殺せると思ったのに」
「優羽ゆう⁉　どうして目の前に⁉」
「魔法で私と愛人あいと君の位置を交代したのよ。でも、何回も使えるものじゃないから、しっかりしてよ」

　優羽ゆうが使った魔法【反転リバース】によって、間一髪で俺は助けられた。
　あのままだと、俺は完全に殺されていた。

「ありがとう、助かった。でも、俺のスキルはあいつに通用しない。どうすれば……」

　俺は、愛人あいとを倒すための道筋が、、一つも見えなかった。
　俺がどんなスキルを使っても、愛人あいとのスキルによって打ち消されてしまう。
　スキルしか使えない俺は、愛人あいとの前では、完全な無力となってしまう。

「進しん君、きみはスキルしか使えないようだね」
「クソッ、バレてるのかよ」
「僕の前で何もできないきみは、もう死んだの同然だよ」
「………」

　俺は、愛人あいとの言っていることが正しすぎて、何も言い返すことができない。

　俺は、S級モンスターや混合種の獣迅雷鳥ブラックバードを倒して、調子に乗っていたようだ。
　それで、今回も俺たちだけで十分勝てると思って臨んだ結果がこれだ。
　俺は、何もできない足手まといになっている。
　結局、俺は変わっていなかったんだな。

　俺は、絶望のあまり、負の感情が次々に湧き上がってきて、視界がぼやけていく。

「そう……」
「そんな訳ないじゃん！」
「っ⁉　ゆ、ゆう……」

　愛人あいとの言ったことを認めようとした時、優羽ゆうが堂々とした声で反論した。

「何を言っているんだい？　進しん君は、もう何もできなんだよ？」
「そんなことない！　進しんは、絶対に突破口を見つけてくれる！　私は信じてるから！」
「ゆう……」

　俺は、優羽ゆうが言ったことに感動して、涙が溢れそうになる。
　しかし、愛人あいとは理解できないようで、嘲笑うような目で俺たちを見てくる。

「ハハッ、面白いことを言うね。進しん君、期待に添えるように頑張ってね」
「クソッ、今の俺じゃ、何も……」
「進しん、大丈夫。一人じゃないから。一緒にがんばろ？」
「……⁉」

『一人じゃない』、その言葉が俺の心に響く。

　俺は、みんなのことを頼りにしていると思っていた。
　しかし、実際はそんな事は無い。
　自分を中心に考えて、何でも自分が解決しようとしていた。
　そして、俺自身が、どんどん強くなっていくのを実感していくと共に、『俺が戦わなければいけない』、という考えが頭のどこかに生まれていたのだ。

　しかし、優羽ゆうの言葉によって、その考えが一気に吹き飛んでいった。

「……優羽ゆう、ありがとう。一緒に頑張ろう！」

　俺の中の負の感情が消え去り、視界がはっきりとする。

「チッ、つまらない顔だ。そのまま絶望しておけばよかったのに。まあいい、お前たちは僕によって殺されるんだからな！」
「進しん、思い切り戦って、突破口を見つけて。私がちゃんとカバーするから」

　優羽ゆうは、俺が思い切りできるように魔法でカバーしてくれるそうだ。
　そうして俺は、全力で愛人あいとに攻撃を与える方法を探し出す。

「わかった、お願いするよ。俺たちで愛人あいとに勝とう！」
「うん！」
「進しん君、自分が無力だともう一度、分からせてあげるよ！」


　◆


「ムムム！　またまた緊急事態っぽいぞ！　急いで向かおう！」
「瞬間移動テレポート！」

　―シュゥゥゥ