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第三十九話 裏切り者
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「戻りましたー」
「来たか。今度は何があったんだ?」
「進君、説明してあげて」
「わかりました。えっと……」
そうして、俺は新宮さんに今回のダンジョンで起こった事を話した。
「混合種を倒したのか⁉」
「はい。三人で何とかでしたけど」
「うむ……」
「誠司、信じられないって顔してるね」
「混合種はSランクハンター数十人で何とか倒せるレベルだ。それを三人となると、信じがたいな」
「仕方ないなー。これを見せてあげるよ」
「無魔法 【念写】」
―ヒュゥゥゥ
西野さんが魔法を使うと、俺たちの目の前に画面が現れて、獣迅雷鳥との戦いが映像で流れ始めた。
新宮さんと西野さんは、立っている俺たちの前で椅子に座って映像を見ている。
【念写】は、実際に見たことを、映像として流すことのできる魔法のようだ。
~~~~~~
『追加スキル 【解!】』
―パリンッ!
―キラキラキラ
~~~~~~
「……⁉」
新宮さんは、驚いた表情をしたまま、何も言わずに映像に集中しているようだ。
俺も、客観的に見ているが、思っていた以上の激闘であった。
「この俺、めっちゃかっこいいじゃん! あ、やべ……」
俺は、戦っている自分に惚れてしまい、思わず口に出てしまった。
優羽にいじられると思い、身構える。
「かっこよかったよ……」
「……っ⁉」
優羽は、想定外の優しい笑顔で俺のことを褒めた。
その姿が言葉に表せないほど美しくて、俺は言葉が何も出なかった。
すると、映像が切り替わり、何かを映し出した。
「なんだこれは?」
「後ろでイチャイチャしてる二人の映像だよ。青春だねー」
「「……⁉ や、やめてくださいよ!」」
「アハハ! いい反応だねー」
俺たちが映っていることに気が付き、慌てて画面を隠した。
西野さんは、俺たちの反応を見て、嬉しそうに笑っている。
本当に意地悪な人だ。
「まあ、これで信じたでしょ?」
「そうだな。これは偉業だ」
「えへへ、まあ、俺がいる限り、負けませんよ!」
「調子に乗らない!」
「すいません……」
俺の伸びた鼻は、一瞬で縮んだ。
「ってか、最近、変だよね?」
「変、ですか?」
「うん、最近になってから、低級ダンジョンにこんな高ランク級モンスターが現れるようになったんだよ」
「そうだな。これについてだが、今後も君たち二人に調査を続けて欲しいんだ。これは、会長からの伝言でもある」
俺たちは、最近ハンターになったばかりで何も分からないが、新宮さんの表情を見るに、かなり重要なことなのだろう。
「わかりました。これからも頑張っていきます!」
「よろしく頼む」
「危ないと思ったら、私が今回みたいに飛んでいくから、安心してね!」
「師匠、頼りになります!」
―ガヤガヤガヤ!!!
「なんだか、外が騒がしいですけど、何かあるんですか?」
「ああ、今日は、今期の見習いハンターたちが、ここでランクの審査をするんだ。多分それだろう」
「見てよ、こんなにいるんだよ。面倒くさいよー」
「あ、そういえば!」
俺は、忘れていた大切なことを思い出した。
「あいと……逆瀬 愛人は、今日ここにいますか?」
『逆瀬 愛人』、俺の高校初の友達だ。
あの日に会って以来、当分会っていない。
愛人も見習いハンターなので、ここにいるのかもしれない。
「ちょっと待ってね、探してみる」
―パラパラパラ
西野さんが、持っている審査表で確認してくれる。
「いないよー。おかしいな、全員分あるはずなんだけどな」
「どうしてなんだ?」
なぜか、あるはずの名前が見つからなかった。
すると、新宮さんが何かを思い出したようだ。
「そういえば、一人の見習いハンターが行方不明という張り紙があったような気がするぞ」
「もしかして、それが……」
俺は、寒気が全身に流れるのを感じた。
「だ、大丈夫よ! 愛人君なら、きっと生きてるよ! だって、職業『勇者』だよ!」
「それもそうだな。愛人を信じよう」
俺の勝手な考えを振り払い、愛人のことを信じることにした。
あのステータスだ、負けるはずがないよな。
「すいません、変な空気にしちゃって。それじゃあ、失礼します」
「ちょっと待て」
「あ、はい?」
二人に挨拶をして、家に帰ろうとした時、新宮さんに呼び止められた。
「今、こんなこと言うのは不謹慎だが言っておく。最近、ハンターがダンジョン内で、切り刻まれて殺されていることが増えているそうだ」
「切り刻むって、モンスターならば、人間を食料とするのに。まさか……」
モンスターがハンターを倒したのであれば、その死体は食料とされ、骨だけが残るのが普通だ。
そのまま放置されるとなると、考えられることは一つしかない。
「そうだ。ハンター内に裏切り者がいるかもしれない」
そう、モンスター以外にハンターを倒せるのは、同じ力を持つハンターだけだ。
しかし、何のために殺すのか、その理由がわからない。
「何か手掛かりは無いんですか?」
「生存者がおらず、わかるのはこれだけだ。君たちも気を付けろよ」
「わかりました……」
そうして、俺たちは家に帰り、明日に向けて身体を休めた。
何かがおかしい。
ダンジョンで、何か大きな変化が起きているのだろうか。
愛人、お前は無事でいるのか?
◆
―シャキン!
「張り紙の男、お前が、犯人だったのか……」
―グサッ!
「うっ!」
「…………」
「醜い人間どもは、全て殺す……ハ、ハハ、ハハハハ!!!」
「仕上がってきているな、愛人」
「あなたのお陰ですよ、魔王様」
「来たか。今度は何があったんだ?」
「進君、説明してあげて」
「わかりました。えっと……」
そうして、俺は新宮さんに今回のダンジョンで起こった事を話した。
「混合種を倒したのか⁉」
「はい。三人で何とかでしたけど」
「うむ……」
「誠司、信じられないって顔してるね」
「混合種はSランクハンター数十人で何とか倒せるレベルだ。それを三人となると、信じがたいな」
「仕方ないなー。これを見せてあげるよ」
「無魔法 【念写】」
―ヒュゥゥゥ
西野さんが魔法を使うと、俺たちの目の前に画面が現れて、獣迅雷鳥との戦いが映像で流れ始めた。
新宮さんと西野さんは、立っている俺たちの前で椅子に座って映像を見ている。
【念写】は、実際に見たことを、映像として流すことのできる魔法のようだ。
~~~~~~
『追加スキル 【解!】』
―パリンッ!
―キラキラキラ
~~~~~~
「……⁉」
新宮さんは、驚いた表情をしたまま、何も言わずに映像に集中しているようだ。
俺も、客観的に見ているが、思っていた以上の激闘であった。
「この俺、めっちゃかっこいいじゃん! あ、やべ……」
俺は、戦っている自分に惚れてしまい、思わず口に出てしまった。
優羽にいじられると思い、身構える。
「かっこよかったよ……」
「……っ⁉」
優羽は、想定外の優しい笑顔で俺のことを褒めた。
その姿が言葉に表せないほど美しくて、俺は言葉が何も出なかった。
すると、映像が切り替わり、何かを映し出した。
「なんだこれは?」
「後ろでイチャイチャしてる二人の映像だよ。青春だねー」
「「……⁉ や、やめてくださいよ!」」
「アハハ! いい反応だねー」
俺たちが映っていることに気が付き、慌てて画面を隠した。
西野さんは、俺たちの反応を見て、嬉しそうに笑っている。
本当に意地悪な人だ。
「まあ、これで信じたでしょ?」
「そうだな。これは偉業だ」
「えへへ、まあ、俺がいる限り、負けませんよ!」
「調子に乗らない!」
「すいません……」
俺の伸びた鼻は、一瞬で縮んだ。
「ってか、最近、変だよね?」
「変、ですか?」
「うん、最近になってから、低級ダンジョンにこんな高ランク級モンスターが現れるようになったんだよ」
「そうだな。これについてだが、今後も君たち二人に調査を続けて欲しいんだ。これは、会長からの伝言でもある」
俺たちは、最近ハンターになったばかりで何も分からないが、新宮さんの表情を見るに、かなり重要なことなのだろう。
「わかりました。これからも頑張っていきます!」
「よろしく頼む」
「危ないと思ったら、私が今回みたいに飛んでいくから、安心してね!」
「師匠、頼りになります!」
―ガヤガヤガヤ!!!
「なんだか、外が騒がしいですけど、何かあるんですか?」
「ああ、今日は、今期の見習いハンターたちが、ここでランクの審査をするんだ。多分それだろう」
「見てよ、こんなにいるんだよ。面倒くさいよー」
「あ、そういえば!」
俺は、忘れていた大切なことを思い出した。
「あいと……逆瀬 愛人は、今日ここにいますか?」
『逆瀬 愛人』、俺の高校初の友達だ。
あの日に会って以来、当分会っていない。
愛人も見習いハンターなので、ここにいるのかもしれない。
「ちょっと待ってね、探してみる」
―パラパラパラ
西野さんが、持っている審査表で確認してくれる。
「いないよー。おかしいな、全員分あるはずなんだけどな」
「どうしてなんだ?」
なぜか、あるはずの名前が見つからなかった。
すると、新宮さんが何かを思い出したようだ。
「そういえば、一人の見習いハンターが行方不明という張り紙があったような気がするぞ」
「もしかして、それが……」
俺は、寒気が全身に流れるのを感じた。
「だ、大丈夫よ! 愛人君なら、きっと生きてるよ! だって、職業『勇者』だよ!」
「それもそうだな。愛人を信じよう」
俺の勝手な考えを振り払い、愛人のことを信じることにした。
あのステータスだ、負けるはずがないよな。
「すいません、変な空気にしちゃって。それじゃあ、失礼します」
「ちょっと待て」
「あ、はい?」
二人に挨拶をして、家に帰ろうとした時、新宮さんに呼び止められた。
「今、こんなこと言うのは不謹慎だが言っておく。最近、ハンターがダンジョン内で、切り刻まれて殺されていることが増えているそうだ」
「切り刻むって、モンスターならば、人間を食料とするのに。まさか……」
モンスターがハンターを倒したのであれば、その死体は食料とされ、骨だけが残るのが普通だ。
そのまま放置されるとなると、考えられることは一つしかない。
「そうだ。ハンター内に裏切り者がいるかもしれない」
そう、モンスター以外にハンターを倒せるのは、同じ力を持つハンターだけだ。
しかし、何のために殺すのか、その理由がわからない。
「何か手掛かりは無いんですか?」
「生存者がおらず、わかるのはこれだけだ。君たちも気を付けろよ」
「わかりました……」
そうして、俺たちは家に帰り、明日に向けて身体を休めた。
何かがおかしい。
ダンジョンで、何か大きな変化が起きているのだろうか。
愛人、お前は無事でいるのか?
◆
―シャキン!
「張り紙の男、お前が、犯人だったのか……」
―グサッ!
「うっ!」
「…………」
「醜い人間どもは、全て殺す……ハ、ハハ、ハハハハ!!!」
「仕上がってきているな、愛人」
「あなたのお陰ですよ、魔王様」
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