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第二十八話 美女からの応援(2)

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「じっとしててよ!」
「ああ、わかってるよ」

 俺は、過去最高に怯えていた。
 すると、

 ―ギュ

「さ、咲良さくら⁉」
「お兄ちゃん、寂しかった……」

 咲良さくらは、俺の後ろから優しく抱きついて言った。
 怯えていた俺が馬鹿みたいに感じられた。
 あの事件の後に一週間も放置してしまっていたのだ、寂しくなるのも仕方は無い。
 それよりも、俺は咲良さくらに対して、とてつもない罪悪感を抱いた。

「本当にごめん。お兄ちゃんが自分のこと、何も話してなかったよ。おいで」
「うん!」

 そうして、俺は咲良さくらの方を向き、優しく包み込む。
 俺は、強くなることに必死で周りを見れていなかったようだ。
 守ると言っていた咲良さくらを、放置していたなんて許されない。

咲良さくら、少し話しを聞いてくれるか?」
「うん、いいよ」
「実はな……」

 そうして、俺は自身がハンターであることやこの一週間は修行していたこと、明日に戦いがあるということなどなど、全てを話した。
 咲良さくらは、始めは驚いていたものの、少しづつ俺の状況を理解してきたようで、真剣な表情で話を聞いてくれた。

「そうだったんだね。お兄ちゃんも頑張ってたんだね!」
「心配かけて悪かったよ」
「ううん、全然いいよ。それじゃあ、咲良さくらも頑張らないとね!」

 そう言うと、咲良さくらは元気よく立ち上がって、キッチンへと向かった。
 その表情は、以前のような楽し気な、明るい表情をしていた。

「何をするんだ?」
「明日に向けて、ちゃんと食べないとね! すぐに作るから、待っててね!」
「それなら、俺も手伝うよ」
「いいから、座って待ってて!」
「わ、わかったよ」

 咲良さくらは、俺のために料理を作ってくれるようだ。
 俺が手伝おうとしたが、すぐに追い出されてしまった。
 以前から、母さんのお手伝いをしているところを見てはいたが、一人で作った料理を食べるのは、初めてかもしれない。
 俺は、ワクワクしながら料理が来るのを待っていた。

「できたよ!」
「おっ! いい匂いだな!」

 ―ドーン!

「これは……」
「じゃーん! 咲良さくら特製のオムライスだよ!」

 咲良さくらが作ってくれたのは、卵がふわふわのオムライスだ。
 本来ならば、とてもうれしいのだが、今日は少し事情がある。
 実は、修行の間のご飯が全て優羽ゆうの作ったオムライスだったのだ。
 まさか、家に帰ってまでオムライスが出てくるとは、思ってもいなかった。

「ねえ、早く食べないと冷めちゃうよ?」
「あ、うん。いただきます」

 しかし、せっかく咲良さくらが作ってくれたのだから、ちゃんと食べなくてはいけない。
 俺は、少しためらいながら、スプーンに乗ったオムライスを口に運び、ゆっくりと噛む。

「ん⁉ オムライスじゃない⁉」
「へへへ、気が付いた? いつもと味を変えてみたんだー」
「でも、なんで?」
優羽ゆうお姉ちゃんが、オムライスを差し入れしてるだろなーって思ったの」

 なんて気が利く妹なんだ!

 咲良さくら優羽ゆうは、もちろん仲が良く、お互いのことを俺以上によく知っている。
 そのため、優羽ゆうのオムライスを食べているだろうと察した咲良さくらは、オムライス風のご飯にしてくれたのだ。
 俺は、咲良さくらの配慮に涙が出そうになった。
 しかし、俺の頭に一つの疑問が浮かんだ。

「それなら、なんでオムライスの形にしたんだ?」
「それは、お兄ちゃんが一週間も可愛い妹を放置した罰だよ!」

 可愛すぎる……
 こんなにも可愛い仕返しをする妹がいるのだろうか。いや、絶対にいない!

 咲良さくらは、悪戯っぽい表情で俺のことを見た。
 俺の心は、とてもポカポカしていた。

「かわいい仕返しだな」
「次やったら、ワサビご飯だからね」
「ごめんなさい。もうしません」

 本当に次は、ワサビご飯にさせられそうなので、ちゃんと家に帰ることを心に誓った。
 そうして、咲良さくらとのほのぼのした時間を過ごしてから、俺は明日に向けてベットに潜った。

 ―ザザッ

咲良さくら、どうしたんだ?」

 俺が寝ようとすると、咲良さくらがベットの中に潜り込んできた。
 咲良さくらが中学生になって以来初めて、俺のベットに入ってきたので少し驚いた。

「寝ながら力を送ってあげる」
「そうか、ありがとう。頑張るよ」

 咲良さくら優羽ゆうの二大美女に応援されたんだ、絶対に負けられないな!

 俺は、明日への気合を十分にして、眠りについた。
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