サニーサイドアップ

日野

文字の大きさ
上 下
17 / 20

×月×日

しおりを挟む
 帯刀とは以前こんな話をしたっけ。
「お腹鳴った?」
「恥ずかしい。聞いてたの? やっぱりこんな私でも鳴るのね」
「自分は美人だからそういう所は無いと言いたいのか。アイドルは大便しない、みたいな」
「女の子に汚物の話をしないの。でも私が可愛いって認めてるな」
「世間一般の評価の反映だ」
「ふーん。ま、その話だけど食べるって生きてるって感じだな、なんて」
「昼は駅前で食べる?」
「いいね。ねぇねぇ、私の話聞いてよ」
「いつも散々聞いてるよ」
「今日も。あのさ、お腹鳴って恥ずかしい思いしたことない?」
「何回かあったと思う」
「中学生の頃に模試受けたでしょ? 私はその五時間目の英語の時間によくお腹鳴っちゃってさ。別に休み時間とか、テスト終わった後は鳴らないんだよ。静かで、お願い鳴らないでって思ったときに限って鳴るんだよね。何だろう、あれ」
「わからなくもない」
「でしょ? あるときには前に好きな男子が座っててさ、赤面して帰ったなぁ。本当に嫌だった。私は皆と協調したいと思ってるのに、体が拒絶してわざと目立とうとしてるみたいで、すごく気持ち悪かった」
「点数取れたの?」
「いつもよりは集中できなかったよね。三回目からはゼリー飲料持って行った」
「へぇ。好きな男子はどうなった?」
「結局お話もほぼできてないの。私には高嶺の華だったかな」
「男にも華って使うんだったか?」
「男女同権だよ」
「そうとは言え、くよくよした男は呆れられるし、下品な女は敬遠される」
「身分相応だよね」
「その男子の話題がどっか行ったな」
「ああ。覚えてるのはね、美術で描いた私の風景画を彼が『色が好きだ』って評価してくれたこと。あの記憶は宝物ね」
「宝? デッサンが駄目だって言われたのさ」
「なにぃ。嬉しかったんだぞ!」
「他に褒める所がありそうなもんだけどね」
「あら」
「食欲とか声量とかさ」
 もう何も面白くない。思い出は全てモノクロだった。これからは誰も信じない。誰も彼も死んでしまえば善い。そうだろ、帯刀。
 リビングの壁には月めくりカレンダーがあって、日付の上に著名な絵がプリントされている。今月の絵はヴァン・ゴッホ作『アルルの部屋』だった。なんて綺麗な絵だろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

朝起きたら女体化してました

たいが
恋愛
主人公の早乙女駿、朝起きると体が... ⚠誤字脱字等、めちゃくちゃあります

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

処理中です...