幸福は君の為に

周乃 太葉

文字の大きさ
上 下
14 / 26

12/場外バトル

しおりを挟む
ウーゴがオリビアとデートの約束を取り付けるちょっと前
ウーゴが朝イチでオリビアに渡す素材を仕事場に取りに行った帰り道

「あれ?ウーゴ」

ウーゴはパン屋の前でケリーに声をかけられた。

「おはよう、ケリー」

「おはよう、早いね?どうしたの?」

「ケリーも早いね。もう開店?」

「そ、準備中。で、ウーゴはどうしたの?あれ?その箱?」

ケリーはウーゴが抱えている箱を覗き込んだ。
ウーゴはそれに気付き、箱を見えるように持ち直した。

「あぁ、これ?オリビアにあげようと思って」

「献身的ねぇ。あ、オリビアといえば、またお店のお客さんに紹介してって頼まれちゃった」

ケリーが思い出したようにからかうように笑った。
ウーゴはケリーの挑発には乗らず、笑顔で流した。

「また?オリビアはモテるね」

「ほんとよねぇ。オリビアがいつまでも独り身でフラフラしてるから、私も行く先々でお願いされちゃうんだよ」

ウーゴが思ったのと違う反応をしたのが面白くなかったので、ケリーは違う角度から攻めることにした。

「で、ウーゴはどうなのよ?こうして貢物まで用意して日参しているってことはオリビアのこと好きなんでしょ?どうなの?落とせそうなの?」

ウーゴはそんなケリーの意図を読み取ったのか、鉄壁の笑顔でケリーの質問に答えた。

「どうかな?僕はオリビアのこと好きだけど、オリビアがどうかはわからないよ。オリビアが誰を選んでも僕はオリビアのこと諦めないけどね」

「ふーん。まぁ、いままでの中では一番いい感じではあるけど…」

「それは嬉しいね」

ケリーはウーゴじゃない…と結論付けて、ふと、幼馴染の顔が浮かんだ。

「オリビア、やっぱパトリスのなにかあったのかしら?」

ウーゴは聞き慣れない名前に悪い予感がした。

「パトリス?誰?」

ケリーはそんなウーゴの変化には気づかず、また違う男の名前を上げた。

「え?あぁ、幼馴染よ。それともユーリのほうかな?」

「ユーリ?診療所の?」

「そう。あいつも幼馴染。私の感ではオリビアはパトリスか、ユーリと何かあったと思うんだけどなぁ」

「へぇ」

ウーゴは低い声を出したが、ケリーは自分の思い込みの世界にいるから全然気がつかなかった。

「オリビアがあんな頑に恋愛しないなんて絶対何かあるはずなのよ!だから、私が過去のトラウマを克服させてあげるんだから!」

ケリーは結局何も変わらない結論を出し、気合を入れ直した。
オリビアの頑なさがケリーのお節介魂に火を着けていたことをオリビアは知らなかった。

「そっか、それで…」

「あ、やば。時間になっちゃう。ウーゴ、じゃぁ、またね」

ウーゴの話を遮り、ケリーは慌てて店の中に戻り、開店準備を慌てて再開した。
ウーゴは笑顔で手を振ってケリーと別れたが、心中穏やかではなかった。

「パトリスにユーリか……」

周りで同じように開店準備をしていた他店の人々は2人様子見ていた。虎と龍がいがみ合うような状況から急にブリザード吹き荒れる雪山と常夏のバカンスの海のような背景に切り替わって何が起こったのか興味津々だったが、敢えてその中に飛び込むものはいなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

帰らなければ良かった

jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。 傷付いたシシリーと傷付けたブライアン… 何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。 *性被害、レイプなどの言葉が出てきます。 気になる方はお避け下さい。 ・8/1 長編に変更しました。 ・8/16 本編完結しました。

処理中です...