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引っ張られる感覚がした。

死後の世界?…の通り道?

三途の川も閻魔様もいないのね。
天国や地獄はないのかしら?

それとも魂は巡る系なのかしら?
巡ったら休めないじゃない!あらやだ。

私は無の境地がいいのに…
ちょっとぐらい休んでも良いと思う


しばらくなんとなく感じる感覚に身を任せていた。
しばらくすると身体がふわっと放り出される感じがした。

それと同時に声が耳にはいってきた。

「‥xxx?」
「い、いえ…xxxx」
「xxxx!!!」

ん…?誰かが話してる?
だんどん感覚がハッキリしてくると会話の内容が理解ができるようになってきた。

「おい、xxxx!なんだコレは!」

なにやら偉そうで脂ギッシュな男が文句言ってる。
ギラギラビカビカした服装してる。

下品そうな…

まぁ…王様かなんかなんだろう。

しかし、趣味が悪い…


趣味が悪い王様を観察していると、
倒れてる人物に向かって何かを投げつけた

「この役立たずが、いつまで寝たフリしている。起きろ」

「う…うぅ…」

倒れていたのは枯れ枝のような老人にみえた。
隣でガリガリの少年が老人の身体を支えようと頑張っている。


「xxxx!xxxx!」

脂ギッシュ王(仮)がおじいさんにさらにグラスを投げつけ、更に毒づいた。

「実体がないだと!?幽体なんぞ意味がない!何のために金のかかる召喚の儀式をやったと思ってるんだ!!」

あいつ、とてつもなく失礼なヤツだ

イラッとしていると!

別の、狡賢そうな顔して綺羅びやかな神官服を着た老人が怯えながらギッシュ王(仮)に向かってボソボソと抗議を始めた。

「で、ですが…最初から申し上げたとおり、この方法では…」

ギッシュ王(仮)はそれを遮り、


「あ゛ぁ?チッ。はぁ~こんなもの召喚してどーすんだよ?俺はしらねーぞ。ヤれねぇなら意味がねぇ。チッ…役立たずどもが。チッ、いくぞ」

唾を吐き捨て、後ろの兵士たちに命令した。

「ハッ。あの…こいつ等と幽体あれはどうしたら…」

「チッ!ほっときゃ勝手に死ぬなり消滅するなりするだろ!!大神官、お前らも連れて来い!」

そう言い放って王(仮)はドスドスと足音を立て部屋から出ていき、兵士も綺羅びやかな神官を連行し出ていった。

ドアがバタンと閉まる音を合図に部屋には沈黙が訪れた。


えっ?放置かい…
状況を確認するか…

辺りをぐるりと見回すと、
どうやら私は光の円の中で浮いているようだ。
ちょっと透けてる。

なるほど、さっきいた王(仮)が言ってた幽体=オバケってのはそういうことか。

ふわふわと漂いながら辺りをキョロキョロと眺めていると、部屋の作りや、人々の服装、見た目がなんというか、一言でいうとファンタジーの世界っぽい

石造りの柱や祭壇…よくある神殿っぽい
あと、部屋で大量の倒れた人、人、人。えっ?死んでる??まさか……ね…

んー…こんな本読んだことあったかしら…?
たくさんの本を読んできたからねぇ。
どんな話だったか…

あれかな?これかな?いやいや、あっちかな?
過去読んだ作品を思い出していると声をかけられた気がした。



「も、もし…ゴホッ、も、もし、そこにいらっしゃるお方…」

声の主に視線をやった。

倒れていたおじいさんの意識が戻ったようだった。

おじいさんは立派な白装束を纏っていたが、その胸元に赤いまだら模様をつくっていた。今にも死にそうになっている中、私を探しているのか、手を宙に伸ばしていた。

おやまぁ…。私はここだよ?

おじいさんの手が宙でふらふら探している。

どうやら声は届かなかったようだ。やれやれとおじいさんの手にそっと触れた。

すると、おじいさんの身体が光に包まれた。

眩しっ

あまりの眩しさに力強く目を瞑り、光が収まった頃目を開けたら、おじいさんが隣の孫らしき人物と瓜二つの容姿になっていた。

おやまぁ‥

私と驚いたが、どうやら2人の少年たちは私以上に驚いたようだった。

2人共目を見開き、お互いを見、そして、おじいさんだった方が両手をぐーぱーぐーぱーして確認していた。

「!!?、うそ…戻った…?」

おじいさんだった少年は自分の顔や体を触って、泣きながら喜んだ。

「戻ってる!呪いが解けた!」
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