【生に神の唄】 ～護る強さと弱さ～

【ハニ×カミ の二 丹羽さん】

ーP2ー

　ゆっくりと目が覚める。
　天井は、あたしの部屋のそれとは違う。

　頬が濡れている。
　涙を流した跡。

　何が起きたか思い出そうとする。
　夢を見ていた気がする。
　お父さんとお母さん、委員長やクラスメイト、先生、たくさんの人があたしを呼んでいる夢。

　思い出そうとする夢は、霧に撒かれてぼやける。
　霧の向こうに、忘れてはいけない友達がいたはず。


　布団から起き上がると、お母さんが泣きながら抱き着いてきた。その後ろで、お父さんが涙を堪えてはにかんでいる。そして、部屋に先生やクラスメイトが入ってくる。

　みんな安堵する気持ちを言葉にしているが、状況を理解出来ない。
　辺りを見渡すと、枕の横に置かれている埴輪に気づく。

　「に わ さん？」
　そう呟いた瞬間、霧が薄れて夢の中の誰かが見えた気がする。

　出会った時から、ちょっと元気がなかった友達。
　工事用ヘルメットのあたしを笑った友達。
　唐揚げちゃんを喜んで頬張る友達。
　子供のような味覚で野菜が大嫌いな友達。
　あたしの演奏を好きだと言ってくれた友達。

　絶対に護ると決めた神の子……

　友達が、必死にあたしを呼んでいる夢。あたしが護ってあげるはずの友達が、 丹羽さん を通してあたしに生命力を送ってくれた夢。

　『だから、ボクの為に泣かないで』
　『ボクは、はにわ の笑顔が大好きだから』

　
　慌てて病室のデジタル時計を見る。今は祭りの翌日よくじつ、昼過ぎ。飛び出すようにベッドから下りると、枕元の丹羽さんと荷物起きのリコーダーを握る。

　突然動き出し、入院着のまま病室から出ようとするあたしを見て、みんなが呆気に取られている。まだ寝ているようにと促すお母さんに、向かって叫ぶ。

　「助けなきゃ、護らなきゃ、御神木が倒されちゃう、神の子が死んじゃう。」