上 下
5 / 6

雨降って地固まる

しおりを挟む
隆司が食べ物と飲み物を買ってきて、私の誕生日パーティがスタートする。

私のお金で買った物を無遠慮に食べ二人。
どうせいつものように、隆司は『借りる』といいながら返さないのだろう。
早く帰ってくれればいいのに。

私の様子に、博美はどうしたのかと聞いてくる。
でも、頷くだけでほとんど話さない私に、博美が痺れをきらした。
「なんかあるなら言ってよ、友達じゃない」

『友達』という言葉に怒りが大きくなった私が呟く。
「ふん、友達 ね。」


「隆司、最近どうして私と会ってくれなかったの?」
突然矛先が向けられ、隆司が驚いた様子に変わる。

「私が何も知らないと思ってるの?最近二人で仲よさそうにひそひそとして、私に気づくと逃げて」

博美は呆れたような口調で言う。
「別にそんなんじゃ…、偶然でしょ?」

博美の様子に、私の怒りは更に増す。
「私ね、見ちゃったんだよ。二人が仲よさそうに身を寄せてるの」

隆司が一瞬焦ったような表情に変わるが、博美は表情を変えずに返してくる。
「何それ。いつ? どこで?」

徐々にヒートアップした私は、もう怒鳴るような声に変わっていた。
「とぼける気? じゃあ教えてあげる。今日、ショッピングモールよ」


博美は一瞬焦ったような表情で、確認するようにつぶやく。
「それだけ?」

博美はしばらく私の言葉を待つようにをジッと見つめてくる。
そして、突然怒鳴る。

「ありえない、それだけで何を疑ってるの? じゃぁ教えてあげる」

「隆司が、最近あんたに会えなかったのは、誕生日プレゼントを買うために、寝る間も惜しんでバイトしてたから」

「学校で私と隆司が二人でいたのも、あんたを避けてたのも、今日のパーティをどう盛り上げるか話してたから」

「今日のショッピングモール、プレゼント選びを協力してたから」

「何うたぐってんのよ、私はあんたの親友じゃないの? 隆司はあんたの恋人じゃないの?」

「勝手に疑って、勝手に暗くなって、勝手に責めて。ふざけんじゃないわよ、私や隆司は、あんたにとって、そんなに信用できない人間なの?」

「あんたは、裕子は私の大切な…」

怒りに任せて怒鳴っていた博美だったが、急に言葉を詰まらせる。
そして、両方の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
そして、肩を震わせながら必死に言葉を絞り出す。

「裕子は、裕子は私の大切な友達なんだから、そんなことするわけないじゃない…」

言い終えて、ハンカチで顔を隠すようにして泣く博美に変わって、隆司も話し出す。

「ごめん、裕子。どんなにバイト忙しくても、ちゃんと二人の時間も作るべきだったよね。俺、不器用すぎだよね」

「それに、きっと俺と博美が裕子を喜ばせるために隠すってのが下手で、裕子に余計な心配させちゃってたんだよね。ごめん。ほんとに、マジでごめん。でも、俺は裕子のこと、マジで愛しているから」


二人の話を聞いていて、私はダムが決壊したかのように涙があふれだす。
「ごめん… ごめん… 疑ってごめん…」


雨降って地固まる という言葉がある。
きっと、その雨が涙雨であれば、より一層、地面は強く固まるであろう。


涙が落ち着いてから、3人はパーティを再開した。
私は、こんなに素晴らしい友達と彼氏を疑ったことを恥じ、それでも一緒にいてくれる二人に強い感謝と幸せを感じた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

ちょこっと怖い話・短編集(毎話1000文字前後)──オリジナル

山本みんみ
ホラー
少しゾワっとする話、1話1000文字前後の短編集です。

ホラーの詰め合わせ

斧鳴燈火
ホラー
怖い話の短編集です

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

意味が分かると怖い話 考察

井村つた
ホラー
意味が分かると怖い話 の考察をしたいと思います。 解釈間違いがあれば教えてください。 ところで、「ウミガメのスープ」ってなんですか?

京都守護大学オカルト研究会 : キャンパスでの冥婚のおまじないは禁止ですっ!

木村 真理
ホラー
四月。知花は、ようやく大学生活に慣れてきたところだった。 けれどある日から、知花の身の回りに赤い封筒が現れるようになった。 その封筒は知花にしか見えず、いつの間にか目の前に現れ、消えるのだ。 そしてその前後には、姿が見えない「誰か」の視線も感じる……。 得体のしれない恐怖におびえつつも、自分の頭を疑う知花の前に、今日も赤い封筒が現れた。 「あ、それ。触っちゃだめだよ」 封筒に触れようとした知花を止めたのは、同じ英語の授業を受けていた男子大学生・ハルだった。 ハルによると、この大学には怪奇現象に対応できる能力を持った人間が集められ、 オカルト研究会のメンバーとして、困っている人を助けているのだという。 知花の赤い封筒も、ハルとその仲間が解決してくれるというが……。 ホラーと恋の大学生活のお話です。

人形撃

雪水
ホラー
人形って怖いよね。 珈琲の匂いのする思い出が最近行き詰まり気味なので息抜きで書きます

処理中です...