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1.わたしにきょうだいができるそうです
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わたしはこの男爵家の跡取り娘。素敵な婚約者もいる。お父様の薦めで決まった婚約だけど、お相手のユーシス様は優しくて格好良い方で何の不満も無い。
わたしにもよく会いにきてくれる。いや、会いにきてくれていた、が正しい。最近は忙しいからとたまに手紙が届くくらい。
はぁ……。ユーシス様に会いたいな。次にお会いできるのはいつかしら。
勉強の気分転換に庭で花を眺めているとメイドが声をかけてきた。
「アルティナお嬢様、ユーシス様からお手紙とプレゼントが届いていますよ」
「本当? すぐにいくわ」
嬉しい! ユーシスからのお手紙。ユーシス様のことを考えていたところにお手紙が届くなんて、なんてタイミングが良いのかしら。しかもプレゼントまで……。プレゼントは何かしら。
わたしはわくわくしながら屋敷に戻る。テーブルの上には手紙と一緒に小さな小包が二つとお酒の瓶が置いてあった。
「こちらの小包は奥様、お酒は旦那様に、だそうです」
「相変わらずマメな方ね。家族の皆に贈り物を贈ってくれるなんて」
「そうですね。ユーシス様はこの家に入られる方なので、とても気を使っていらっしゃるんだと思いますよ。今回も我々にもお気をつかっていただいていますし……」
ユーシス様は屋敷の皆も何かしらの差し入れをしてくれる。今回はデザートにどうぞとリンゴをたくさん贈ってくれたようだ。さすがはユーシス様。こういうところが本当に格好良いと思う。
早く結婚したいけれど結婚式はわたしが十八歳になる二年後の予定だ。ユーシス様もこの家に入るために勉強中なので仕方がない。本当に二年後が待ち遠しいわ。
家族揃っての夕食。わたしもユーシス様からの手紙で浮かれているけど、それ以上にお父様の機嫌が良い。幸せオーラが全開、といった感じだ。
こんなに機嫌が良いなんて珍しいわ。どうしたのかしら? わたしとユーシス様の結婚が早まる、なんてことはないわよね。それだったらどんなに嬉しいことかしら。
「ご機嫌だな、アルティナ」
「えぇ、ユーシス様からお手紙とプレゼントが届いたんですもの。お父様こそ、ご機嫌じゃありませんか」
「はは、わかるか? それにしても、ユーシス君は相変わらずマメな男だな。アルティナだけでなく我々にも贈り物を欠かさないからなぁ」
「お父様には大好きなお酒でしょう?」
「あぁ。わたしの好きな銘柄だ。だが、しばらく禁酒しようと思う」
「どうしたのですか? あんなにお酒が好きなのに……」
「……いや、な。その、ロレッタに子供ができたらしいんだ。アルティナにも弟か妹ができるぞ!」
「えぇっ? 本当ですか?」
「あぁ、だから健康に気をつかわないとな。それに、ロレッタが飲めないのにわたしだけ飲むのも悪いだろう?」
お父様は気恥ずかしそうに子供ができたことを報告してきた。今までに見たことがないくらいとても喜んでいる。大好きなお酒をやめるほどに……。
「まぁ、あなたったら……。産まれたらアルティナも可愛がってあげてね」
わたしは驚きすぎてその後の会話をあまり覚えていない。自分がお年頃で、歳の離れた弟か妹ができることにショックだったわけではない。お父様と後妻の間に子供ができたことがショックなわけでもない。生まれた子が男の子だったら跡継ぎから外されてしまうかも……と不安になったわけでもない。
お義母様、お腹の子はいったい誰の子ですか?
わたしにもよく会いにきてくれる。いや、会いにきてくれていた、が正しい。最近は忙しいからとたまに手紙が届くくらい。
はぁ……。ユーシス様に会いたいな。次にお会いできるのはいつかしら。
勉強の気分転換に庭で花を眺めているとメイドが声をかけてきた。
「アルティナお嬢様、ユーシス様からお手紙とプレゼントが届いていますよ」
「本当? すぐにいくわ」
嬉しい! ユーシスからのお手紙。ユーシス様のことを考えていたところにお手紙が届くなんて、なんてタイミングが良いのかしら。しかもプレゼントまで……。プレゼントは何かしら。
わたしはわくわくしながら屋敷に戻る。テーブルの上には手紙と一緒に小さな小包が二つとお酒の瓶が置いてあった。
「こちらの小包は奥様、お酒は旦那様に、だそうです」
「相変わらずマメな方ね。家族の皆に贈り物を贈ってくれるなんて」
「そうですね。ユーシス様はこの家に入られる方なので、とても気を使っていらっしゃるんだと思いますよ。今回も我々にもお気をつかっていただいていますし……」
ユーシス様は屋敷の皆も何かしらの差し入れをしてくれる。今回はデザートにどうぞとリンゴをたくさん贈ってくれたようだ。さすがはユーシス様。こういうところが本当に格好良いと思う。
早く結婚したいけれど結婚式はわたしが十八歳になる二年後の予定だ。ユーシス様もこの家に入るために勉強中なので仕方がない。本当に二年後が待ち遠しいわ。
家族揃っての夕食。わたしもユーシス様からの手紙で浮かれているけど、それ以上にお父様の機嫌が良い。幸せオーラが全開、といった感じだ。
こんなに機嫌が良いなんて珍しいわ。どうしたのかしら? わたしとユーシス様の結婚が早まる、なんてことはないわよね。それだったらどんなに嬉しいことかしら。
「ご機嫌だな、アルティナ」
「えぇ、ユーシス様からお手紙とプレゼントが届いたんですもの。お父様こそ、ご機嫌じゃありませんか」
「はは、わかるか? それにしても、ユーシス君は相変わらずマメな男だな。アルティナだけでなく我々にも贈り物を欠かさないからなぁ」
「お父様には大好きなお酒でしょう?」
「あぁ。わたしの好きな銘柄だ。だが、しばらく禁酒しようと思う」
「どうしたのですか? あんなにお酒が好きなのに……」
「……いや、な。その、ロレッタに子供ができたらしいんだ。アルティナにも弟か妹ができるぞ!」
「えぇっ? 本当ですか?」
「あぁ、だから健康に気をつかわないとな。それに、ロレッタが飲めないのにわたしだけ飲むのも悪いだろう?」
お父様は気恥ずかしそうに子供ができたことを報告してきた。今までに見たことがないくらいとても喜んでいる。大好きなお酒をやめるほどに……。
「まぁ、あなたったら……。産まれたらアルティナも可愛がってあげてね」
わたしは驚きすぎてその後の会話をあまり覚えていない。自分がお年頃で、歳の離れた弟か妹ができることにショックだったわけではない。お父様と後妻の間に子供ができたことがショックなわけでもない。生まれた子が男の子だったら跡継ぎから外されてしまうかも……と不安になったわけでもない。
お義母様、お腹の子はいったい誰の子ですか?
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