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三ヶ月後、リディアはエリオットと共に別荘にやってきた。ここは温泉で有名な観光地となっており、伯爵家の別荘も色々な温泉を楽しめるようになっている。
エリオットの幼なじみであるヴィレムとエレインを迎える準備をしているとあっという間に二人がやってくる日が来た。
「エリオット、久しぶり。リディアも元気そうだね」
「エリオット、リディア。会いたかったわ」
「二人とも元気そうだな」
「ヴィレム様、エレイン様。ようこそお越しくださいました。お会いできて嬉しいです」
「ひどいわ」
エレインがいきなり非難の声を上げ、リディアは驚いてしまう。
(何か失礼があったかしら)
「あ、あの……」
「わたくしのことはエレインと呼んでって言っているじゃない。久しぶりに会えたのに他人行儀で淋しいわ」
「え?」
「リディア、諦めろ。素直に言うとおりにした方がいい。こうなったエレインは止められない。エレインはリディアと仲良くしたいだけだから」
「悪いね、リディア。エレインはリディアと会えるのをとても楽しみにしていたんだ。気楽に接してくれないか?」
三人にそう言われては断れない。リディアは観念した。
「エ、エレイン、どうぞゆっくりしていってくださいね」
「う~ん。まだ固いけど仕方がないわね。まぁ、でも時間はたっぷりあるから仲良くしましょう?」
「もちろんです」
「二人はゆっくりお茶でも飲んでおいで。僕たちは軽く馬を走らせてきてから温泉にでも浸かってくるよ」
「リディア。申し訳ないけど、エレインの相手を頼むよ」
リディアとエリオットはそれぞれ男女に分かれて休日を楽しむことにした。
エレインはリディアにいつものように三人の昔話をたくさん話した。長い時間を一緒に過ごしたからか、何度聞いても新しい話があり、新鮮に感じられた。
夕食の時間。4人でテーブルを囲む。昼間、お互いにどのような時間を過ごしたのかや、最近の近況などを話しつつ和やかな時間が流れていた。
突然、その時間を壊すような声がする。
「ねぇ、あなたってどうしていつもそうなの?」
エレインの怒った声が部屋に響いた。
「エレイン、落ち着いて」
「もうヴィレムなんて知らない」
エレインがヴィレムに何か腹を立てているらしい。ヴィレムがエレインをなだめようとしている。
「あー、あれはしばらく収まらないな」
二人の様子をみてエリオットは困った顔をした。
「リディア、すまない。エレインをなだめてくるよ」
そう言ってエリオットは席を立つ。
「はい」
「ヴィレム、ここは僕に任せてくれ。こうなるとエレインは手がつけられない。僕が相手をするよ」
「本当にエレインはいくつになっても変わらないな。エリオット、すまない。エレインをよろしく頼む。リディアにも申し訳ない。せっかく準備してくれたというのに」
「あぁ、任せてくれ。良かったら良いボトルを用意してあるから二人で飲んでくれ。今日開けようと思っていたやつだ」
「良いのか?」
「あぁ、ヴィレムに飲んでもらおうと思って用意しておいたんだ。エレインには別の物の方が良いだろうから気にせず飲んでくれ」
「確かにエレインはもっと甘いやつが良いな」
「ちゃんと用意してあるから安心しろ。明日にはエレイン落ち着くはずさ」
「何から何まですまないな。まったく、いくつになってもエレインはおまえに甘えっぱなしだ」
「気にするな。僕たちの仲だろ? リディア、ヴィレムの相手を頼む」
「はい。エリオット様の代わりにおもてなしさせていただきます」
エリオットはエレインの側に移動する。エリオットと会話をするとエレインは少し落ち着いたようだ。その様子を見てリディアとヴィレムは安堵した。
エリオットは二人に「大丈夫だ」と目で合図し、エレインを連れて部屋から出て行った。
「エレインがわがままで申し訳ない。昔からエレインはああなんだ。僕がエレインを怒らせて、エリオットがなだめる」
リディアも今と同じ光景を何度か目にしたことがあるため、あまり気にしない。だが、ヴィレムは少し淋しそうな顔をした。
(普段はとても仲の良さそうな二人なのに……。仲が良いからこそ衝突することもあるのかしら)
「いえ、皆さん本当に仲が良いと改めて思いました。お気になさらないでください。エリオット様にお任せしておけば大丈夫でしょうから」
「ありがとう。そうだね。さぁ、せっかくだし僕たちは飲み直そうか」
「そうですね。では、何かお酒に合う物を用意してもらいます」
食事はある程度進んでいたが、食事を再開する気にはならなかった。エレインはエリオットに任せて二人は晩酌することにした。
エリオットの幼なじみであるヴィレムとエレインを迎える準備をしているとあっという間に二人がやってくる日が来た。
「エリオット、久しぶり。リディアも元気そうだね」
「エリオット、リディア。会いたかったわ」
「二人とも元気そうだな」
「ヴィレム様、エレイン様。ようこそお越しくださいました。お会いできて嬉しいです」
「ひどいわ」
エレインがいきなり非難の声を上げ、リディアは驚いてしまう。
(何か失礼があったかしら)
「あ、あの……」
「わたくしのことはエレインと呼んでって言っているじゃない。久しぶりに会えたのに他人行儀で淋しいわ」
「え?」
「リディア、諦めろ。素直に言うとおりにした方がいい。こうなったエレインは止められない。エレインはリディアと仲良くしたいだけだから」
「悪いね、リディア。エレインはリディアと会えるのをとても楽しみにしていたんだ。気楽に接してくれないか?」
三人にそう言われては断れない。リディアは観念した。
「エ、エレイン、どうぞゆっくりしていってくださいね」
「う~ん。まだ固いけど仕方がないわね。まぁ、でも時間はたっぷりあるから仲良くしましょう?」
「もちろんです」
「二人はゆっくりお茶でも飲んでおいで。僕たちは軽く馬を走らせてきてから温泉にでも浸かってくるよ」
「リディア。申し訳ないけど、エレインの相手を頼むよ」
リディアとエリオットはそれぞれ男女に分かれて休日を楽しむことにした。
エレインはリディアにいつものように三人の昔話をたくさん話した。長い時間を一緒に過ごしたからか、何度聞いても新しい話があり、新鮮に感じられた。
夕食の時間。4人でテーブルを囲む。昼間、お互いにどのような時間を過ごしたのかや、最近の近況などを話しつつ和やかな時間が流れていた。
突然、その時間を壊すような声がする。
「ねぇ、あなたってどうしていつもそうなの?」
エレインの怒った声が部屋に響いた。
「エレイン、落ち着いて」
「もうヴィレムなんて知らない」
エレインがヴィレムに何か腹を立てているらしい。ヴィレムがエレインをなだめようとしている。
「あー、あれはしばらく収まらないな」
二人の様子をみてエリオットは困った顔をした。
「リディア、すまない。エレインをなだめてくるよ」
そう言ってエリオットは席を立つ。
「はい」
「ヴィレム、ここは僕に任せてくれ。こうなるとエレインは手がつけられない。僕が相手をするよ」
「本当にエレインはいくつになっても変わらないな。エリオット、すまない。エレインをよろしく頼む。リディアにも申し訳ない。せっかく準備してくれたというのに」
「あぁ、任せてくれ。良かったら良いボトルを用意してあるから二人で飲んでくれ。今日開けようと思っていたやつだ」
「良いのか?」
「あぁ、ヴィレムに飲んでもらおうと思って用意しておいたんだ。エレインには別の物の方が良いだろうから気にせず飲んでくれ」
「確かにエレインはもっと甘いやつが良いな」
「ちゃんと用意してあるから安心しろ。明日にはエレイン落ち着くはずさ」
「何から何まですまないな。まったく、いくつになってもエレインはおまえに甘えっぱなしだ」
「気にするな。僕たちの仲だろ? リディア、ヴィレムの相手を頼む」
「はい。エリオット様の代わりにおもてなしさせていただきます」
エリオットはエレインの側に移動する。エリオットと会話をするとエレインは少し落ち着いたようだ。その様子を見てリディアとヴィレムは安堵した。
エリオットは二人に「大丈夫だ」と目で合図し、エレインを連れて部屋から出て行った。
「エレインがわがままで申し訳ない。昔からエレインはああなんだ。僕がエレインを怒らせて、エリオットがなだめる」
リディアも今と同じ光景を何度か目にしたことがあるため、あまり気にしない。だが、ヴィレムは少し淋しそうな顔をした。
(普段はとても仲の良さそうな二人なのに……。仲が良いからこそ衝突することもあるのかしら)
「いえ、皆さん本当に仲が良いと改めて思いました。お気になさらないでください。エリオット様にお任せしておけば大丈夫でしょうから」
「ありがとう。そうだね。さぁ、せっかくだし僕たちは飲み直そうか」
「そうですね。では、何かお酒に合う物を用意してもらいます」
食事はある程度進んでいたが、食事を再開する気にはならなかった。エレインはエリオットに任せて二人は晩酌することにした。
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