3 / 6
3.
しおりを挟む
新しい布も手に入り、仕事も順調。充実した日々を送っていた。
結婚の準備も順調に進んだ。お祖父さまがとても張り切っている。
あとは結婚するだけ、といった状態になり私は家族に報告することにした。
「お父様。私、結婚を考えている方がいるのですが……」
「結婚? いきなりどうしたんだい。もしや、あの店の関係者なのかい?」
父はものすごく驚いている。それは当然だ。今まで必死に隠してきたのだから。
「まぁ、貴族では難しいからと平民のお相手をみつけてきたの?」
「お姉様、平民になられるのですね。もうなかなかお会いすることも難しくなってしまいます。さみしくなりますわ……」
義母とマリアはとても嬉しそうだ。貴族なのだから少しは顔をつくった方が良いと思う。
相手は平民と決めつけている。まぁ、親を介さずに私が貴族の結婚相手を見つけられるなんて思わないだろう。
きっと、私が平民になれば、私は一従業員になるか退職してあの商会も自分たちのものになると思っているのだと思う。
「関係者といいますか、それがご縁になったような感じです」
「そうか、そうか。それはめでたい。このまま結婚が決まらなかったらどうしようかと思っていたところだよ。マリアの結婚準備も順調だし、嬉しいことが続くなぁ。しかも、店繋がりとくればこれから益々店も発展するだろう」
私は知っている。この父は特に私のお相手を探していないことを。今はマリアの結婚準備に夢中だからだ。結婚できなくても家にいればいい、と言いつつ義母のことを考えればやはり出て行ってほしいのだろう。安堵している。そもそも跡取りはどうするつもりなのか? 義母のことだから自分の親戚を養子にするつもりだろうけど。
「そうですね。商会にとってもとても良いお話です。特に問題がないようでしたら、ご紹介したいのですが……。こちらに来ていただいても構いませんか?」
商会にとってはとても良い話なのは間違いない。特に私の服飾店にはプラスになるだろう。これから流行の布を使った新商品がいくつも出る予定だし、新しい布も入ってくる。
「もうそこまで話が進んでいるのか?」
「あら、良いんじゃないの? 平民同士の結婚だと貴族同士の結婚と違ってそんなに準備が必要ないのでしょう。平民だとこの家にくるのは気後れするかもしれないけど、私たちもぜひソフィアのお相手に会ってみたいわ。大事なこの家の娘ですもの」
平民がこの家にこれるのかしら? 私の結婚なんて準備もたいした不要だと馬鹿にしているようだ。私はスルーして会話を続ける。
「特に問題ないと思います。先方もぜひこちらにきて挨拶したいと仰っていましたので。急ではありますが、明日でも大丈夫でしょうか? お相手の方もなるべく早く挨拶をして結婚の話を進めたいと仰っていて……」
「まぁまぁ、平民の方は礼儀も知らないのね。でも結婚の挨拶ですもの。早くするにこしたことはありませんわ。明日にしましょう? 平民の方でしたらお迎えする特別な準備は必要ないでしょうし、問題はありませんよね。せっかくの結婚話が流れてしまってかわいそうですもの」
義母は早く私を追い出したくてたまらないらしい。父を無視して話を進める。
「私は問題ないよ。明日きてもらいなさい」
明日、私の婚約者が挨拶にくることが決まった。計画通りである。もちろん、日をあけないのは余計な妨害が入らないようにするためだ。
これで全ての準備が整ったわ。
結婚の準備も順調に進んだ。お祖父さまがとても張り切っている。
あとは結婚するだけ、といった状態になり私は家族に報告することにした。
「お父様。私、結婚を考えている方がいるのですが……」
「結婚? いきなりどうしたんだい。もしや、あの店の関係者なのかい?」
父はものすごく驚いている。それは当然だ。今まで必死に隠してきたのだから。
「まぁ、貴族では難しいからと平民のお相手をみつけてきたの?」
「お姉様、平民になられるのですね。もうなかなかお会いすることも難しくなってしまいます。さみしくなりますわ……」
義母とマリアはとても嬉しそうだ。貴族なのだから少しは顔をつくった方が良いと思う。
相手は平民と決めつけている。まぁ、親を介さずに私が貴族の結婚相手を見つけられるなんて思わないだろう。
きっと、私が平民になれば、私は一従業員になるか退職してあの商会も自分たちのものになると思っているのだと思う。
「関係者といいますか、それがご縁になったような感じです」
「そうか、そうか。それはめでたい。このまま結婚が決まらなかったらどうしようかと思っていたところだよ。マリアの結婚準備も順調だし、嬉しいことが続くなぁ。しかも、店繋がりとくればこれから益々店も発展するだろう」
私は知っている。この父は特に私のお相手を探していないことを。今はマリアの結婚準備に夢中だからだ。結婚できなくても家にいればいい、と言いつつ義母のことを考えればやはり出て行ってほしいのだろう。安堵している。そもそも跡取りはどうするつもりなのか? 義母のことだから自分の親戚を養子にするつもりだろうけど。
「そうですね。商会にとってもとても良いお話です。特に問題がないようでしたら、ご紹介したいのですが……。こちらに来ていただいても構いませんか?」
商会にとってはとても良い話なのは間違いない。特に私の服飾店にはプラスになるだろう。これから流行の布を使った新商品がいくつも出る予定だし、新しい布も入ってくる。
「もうそこまで話が進んでいるのか?」
「あら、良いんじゃないの? 平民同士の結婚だと貴族同士の結婚と違ってそんなに準備が必要ないのでしょう。平民だとこの家にくるのは気後れするかもしれないけど、私たちもぜひソフィアのお相手に会ってみたいわ。大事なこの家の娘ですもの」
平民がこの家にこれるのかしら? 私の結婚なんて準備もたいした不要だと馬鹿にしているようだ。私はスルーして会話を続ける。
「特に問題ないと思います。先方もぜひこちらにきて挨拶したいと仰っていましたので。急ではありますが、明日でも大丈夫でしょうか? お相手の方もなるべく早く挨拶をして結婚の話を進めたいと仰っていて……」
「まぁまぁ、平民の方は礼儀も知らないのね。でも結婚の挨拶ですもの。早くするにこしたことはありませんわ。明日にしましょう? 平民の方でしたらお迎えする特別な準備は必要ないでしょうし、問題はありませんよね。せっかくの結婚話が流れてしまってかわいそうですもの」
義母は早く私を追い出したくてたまらないらしい。父を無視して話を進める。
「私は問題ないよ。明日きてもらいなさい」
明日、私の婚約者が挨拶にくることが決まった。計画通りである。もちろん、日をあけないのは余計な妨害が入らないようにするためだ。
これで全ての準備が整ったわ。
104
お気に入りに追加
1,619
あなたにおすすめの小説
どうやら断罪対象はわたくしのようです 〜わたくしを下級貴族と勘違いされているようですが、お覚悟はよろしくて?〜
水都 ミナト
恋愛
「ヴァネッサ・ユータカリア! お前をこの学園から追放する! そして数々の罪を償うため、牢に入ってもらう!」
わたくしが通うヒンスリー王国の王立学園の創立パーティにて、第一王子のオーマン様が高らかに宣言されました。
ヴァネッサとは、どうやらわたくしのことのようです。
なんということでしょう。
このおバカな王子様はわたくしが誰なのかご存知ないのですね。
せっかくなので何の証拠も確証もない彼のお話を聞いてみようと思います。
◇8000字程度の短編です
◇小説家になろうでも公開予定です
拝啓、私を追い出した皆様 いかがお過ごしですか?私はとても幸せです。
香木あかり
恋愛
拝啓、懐かしのお父様、お母様、妹のアニー
私を追い出してから、一年が経ちましたね。いかがお過ごしでしょうか。私は元気です。
治癒の能力を持つローザは、家業に全く役に立たないという理由で家族に疎まれていた。妹アニーの占いで、ローザを追い出せば家業が上手くいくという結果が出たため、家族に家から追い出されてしまう。
隣国で暮らし始めたローザは、実家の商売敵であるフランツの病気を治癒し、それがきっかけで結婚する。フランツに溺愛されながら幸せに暮らすローザは、実家にある手紙を送るのだった。
※複数サイトにて掲載中です
妹しか興味がない両親と欲しがりな妹は、我が家が没落することを知らないようです
香木あかり
恋愛
伯爵令嬢のサラは、妹ティナにしか興味がない両親と欲しがりな妹に嫌気がさしていた。
ある日、ティナがサラの婚約者を奪おうとしていることを知り、我慢の限界に達する。
ようやくこの家を出られると思っていましたのに……。またティナに奪われるのかしら?
……なんてね、奪われるのも計画通りなんですけれど。
財産も婚約者も全てティナに差し上げます。
もうすぐこの家は没落するのだから。
※複数サイトで掲載中です
【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい
初めまして婚約者様
まる
恋愛
「まあ!貴方が私の婚約者でしたのね!」
緊迫する場での明るいのんびりとした声。
その言葉を聞いてある一点に非難の視線が集中する。
○○○○○○○○○○
※物語の背景はふんわりしています。スルッと読んでいただければ幸いです。
目を止めて読んで下さった方、お気に入り、しおりの登録ありがとう御座いました!少しでも楽しんで読んでいただけたなら幸いです(^人^)
飽きたと捨てられましたので
編端みどり
恋愛
飽きたから義理の妹と婚約者をチェンジしようと結婚式の前日に言われた。
計画通りだと、ルリィは内心ほくそ笑んだ。
横暴な婚約者と、居候なのに我が物顔で振る舞う父の愛人と、わがままな妹、仕事のフリをして遊び回る父。ルリィは偽物の家族を捨てることにした。
※7000文字前後、全5話のショートショートです。
※2024.8.29誤字報告頂きました。訂正しました。報告不要との事ですので承認はしていませんが、本当に助かりました。ありがとうございます。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
私があなたを虐めた?はぁ?なんで私がそんなことをしないといけないんですか?
水垣するめ
恋愛
「フィオナ・ハワース! お前との婚約を破棄する!」
フィオナの婚約者の王子であるレイ・マルクスはいきなりわたしに婚約破棄を叩きつけた。
「なぜでしょう?」
「お前が妹のフローラ・ハワースに壮絶な虐めを行い、フローラのことを傷つけたからだ!」
「えぇ……」
「今日という今日はもう許さんぞ! フィオナ! お前をハワース家から追放する!」
フィオナの父であるアーノルドもフィオナに向かって怒鳴りつける。
「レイ様! お父様! うっ……! 私なんかのために、ありがとうございます……!」
妹のフローラはわざとらしく目元の涙を拭い、レイと父に感謝している。
そしてちらりとフィオナを見ると、いつも私にする意地悪な笑顔を浮かべた。
全ては妹のフローラが仕組んだことだった。
いつもフィオナのものを奪ったり、私に嫌がらせをしたりしていたが、ついに家から追放するつもりらしい。
フローラは昔から人身掌握に長けていた。
そうしてこんな風に取り巻きや味方を作ってフィオナに嫌がらせばかりしていた。
エスカレートしたフィオナへの虐めはついにここまで来たらしい。
フィオナはため息をついた。
もうフローラの嘘に翻弄されるのはうんざりだった。
だからフィオナは決意する。
今までフローラに虐められていた分、今度はこちらからやり返そうと。
「今まで散々私のことを虐めてきたんですから、今度はこちらからやり返しても問題ないですよね?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる