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 新しい布も手に入り、仕事も順調。充実した日々を送っていた。
 結婚の準備も順調に進んだ。お祖父さまがとても張り切っている。

 あとは結婚するだけ、といった状態になり私は家族に報告することにした。

「お父様。私、結婚を考えている方がいるのですが……」
「結婚? いきなりどうしたんだい。もしや、あの店の関係者なのかい?」

 父はものすごく驚いている。それは当然だ。今まで必死に隠してきたのだから。

「まぁ、貴族では難しいからと平民のお相手をみつけてきたの?」
「お姉様、平民になられるのですね。もうなかなかお会いすることも難しくなってしまいます。さみしくなりますわ……」

 義母とマリアはとても嬉しそうだ。貴族なのだから少しは顔をつくった方が良いと思う。
 相手は平民と決めつけている。まぁ、親を介さずに私が貴族の結婚相手を見つけられるなんて思わないだろう。
 きっと、私が平民になれば、私は一従業員になるか退職してあの商会も自分たちのものになると思っているのだと思う。

「関係者といいますか、それがご縁になったような感じです」
「そうか、そうか。それはめでたい。このまま結婚が決まらなかったらどうしようかと思っていたところだよ。マリアの結婚準備も順調だし、嬉しいことが続くなぁ。しかも、店繋がりとくればこれから益々店も発展するだろう」

 私は知っている。この父は特に私のお相手を探していないことを。今はマリアの結婚準備に夢中だからだ。結婚できなくても家にいればいい、と言いつつ義母のことを考えればやはり出て行ってほしいのだろう。安堵している。そもそも跡取りはどうするつもりなのか? 義母のことだから自分の親戚を養子にするつもりだろうけど。

「そうですね。商会にとってもとても良いお話です。特に問題がないようでしたら、ご紹介したいのですが……。こちらに来ていただいても構いませんか?」

 商会にとってはとても良い話なのは間違いない。特に私の服飾店にはプラスになるだろう。これから流行の布を使った新商品がいくつも出る予定だし、新しい布も入ってくる。

「もうそこまで話が進んでいるのか?」
「あら、良いんじゃないの? 平民同士の結婚だと貴族同士の結婚と違ってそんなに準備が必要ないのでしょう。平民だとこの家にくるのは気後れするかもしれないけど、私たちもぜひソフィアのお相手に会ってみたいわ。大事なこの家の娘ですもの」

 平民がこの家にこれるのかしら? 私の結婚なんて準備もたいした不要だと馬鹿にしているようだ。私はスルーして会話を続ける。

「特に問題ないと思います。先方もぜひこちらにきて挨拶したいと仰っていましたので。急ではありますが、明日でも大丈夫でしょうか? お相手の方もなるべく早く挨拶をして結婚の話を進めたいと仰っていて……」
「まぁまぁ、平民の方は礼儀も知らないのね。でも結婚の挨拶ですもの。早くするにこしたことはありませんわ。明日にしましょう? 平民の方でしたらお迎えする特別な準備は必要ないでしょうし、問題はありませんよね。せっかくの結婚話が流れてしまってかわいそうですもの」
 
 義母は早く私を追い出したくてたまらないらしい。父を無視して話を進める。

「私は問題ないよ。明日きてもらいなさい」


 明日、私の婚約者が挨拶にくることが決まった。計画通りである。もちろん、日をあけないのは余計な妨害が入らないようにするためだ。
 これで全ての準備が整ったわ。
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