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エピローグ
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パーティーは無事に終わった。どうなるかと思ったけれど、夢のような楽しい時間だった。
殿下の余興?が始まるまではアッシュ様もたくさんの女性に囲まれていた。
優しくて格好よくて家柄もいい。それなのに婚約者が決まっていなかったアッシュ様はとても人気がある。そんなアッシュ様を今はわたしが独り占めしていた。
「それにしてもよかったのか? 殿下は本気だったようだが……」
「そんなの困ります。殿下はわたしのような人間がただ珍しかっただけですよ。庶民の間で流行っている物語にはそういったものがありますけど、現実にはありえないですよね。真実の愛なんてそうそうないですし、あったとしても身分差なんて大変じゃないですか。ぽっと出の貧乏貴族の娘が王族と結婚なんて無理ですよ。教育だって受けていないのに」
そもそも、一方的な想いなのに『真実の愛』っておかしいわよね。
「現実的だな……」
「よっぽど自信のある女性か、一部の勘違いしている女性ならわかりませんけど、大多数の貴族の娘なら弁えていると思いますよ。……アッシュ様は殿下とわたしをくっつけたいのですか? わたしは殿下のことをそういった対象に見ていないというのに」
「いや、クレアと両思いで嬉しいよ。クレアが俺を選んでくれるなんて思わなくてね。殿下も一緒にいることが多かったし、そういった素振りも見せてくれなかったじゃないか……」
「アッシュ様はずっとわたしを気遣ってくれていたじゃありませんか。いつも、助けて欲しいときに側にいてくれたのはアッシュ様です。そちらこそよろしいのですか? 殿下の側を離れるなんて……」
「問題ないよ。治癒魔法の使い手を保護しなければいけないのは本当で、殿下の信頼の置ける人間が側にいるのが望ましいんだ。だから丁度いい」
アッシュ様の言葉にチクりと胸が痛んだ。
わたしが治癒魔法の使い手じゃなかったら選んでもらえなかった?
「……アッシュ様はわたしが治癒魔法の使い手だから選んだんですか?」
「たしかに治癒魔法の使い手に興味はあった。けれど、クレアでなければ殿下の側を離れて君の領地にいきたいなんて思わなかったよ。一緒にいて本当に楽しいんだ」
「でしたら同じ気持ちですね。わたしもアッシュ様と一緒にいると楽しいです」
アッシュ様は優しい笑顔をわたしに向けてくれる。
「殿下には悪いがクレアのことは譲れない」
「わたしは殿下に対して王族に対する尊敬の気持ちしかありませんよ。そもそも、殿下の伴侶にアシュレイ様以上にふさわしい人なんています?」
「いや、いないな。俺も幼なじみだからよく知っているが、あれほど完璧な令嬢はいないだろう。殿下の隣に並ぶために簡単にはまねできないほど努力している」
「ですよね! アシュレイ様がいて、殿下がなぜわたしのような人間に興味を持ったのかわかりません」
「……それは理解できる。殿下以外にもクレアに興味を持っている人間はかなりいたぞ」
「そうですか? よっぽどもの珍しかったのですね。ですが、殆ど声をかけてくる男性なんていませんでしたよ?」
「クレアのような女性は珍しいといえば珍しいが……。クレアが声をかけられなかったのはお互いに牽制しあっていたり、殿下や俺に遠慮していたりしたからだな」
「はぁ……」
「興味なさそうだな」
わたしがあまり興味がないことを示すとアッシュ様は苦笑する。
「そうですね。アッシュ様以外に興味を持たれたり好かれたりしてもあまり意味がないと思いませんか? アッシュ様は綺麗なご令嬢に囲まれて嬉しいですか?」
「ちょっと困るな……」
「ちょっとしか困らないということは少しは嬉しいんですね?」
「いや! そんなことはない!」
「冗談ですよ。ちょっとからかってみました」
そう言ってわたしたちは笑いあった。殿下とアシュレイ様もうまくいってほしい。お二人はとてもお似合いなのだから。
そうだ、殿下とアシュレイ様を誘って四人でどこかにでかけるのはどうだろう。アシュレイ様と一緒なら楽しいはずだ。でもまずは二人の時間をつくりたい。せっかく気持ちが通じ合ったのだから。
「ねぇ、アッシュ様、今度――」
わたしはアッシュ様をデートに誘う。
女性の方からこんな風に誘うなんてはしたないかもしれないけれど、学園での残された時間を大切にしたい。
わたしの学園生活はこれからもっと充実する予感がした。
殿下の余興?が始まるまではアッシュ様もたくさんの女性に囲まれていた。
優しくて格好よくて家柄もいい。それなのに婚約者が決まっていなかったアッシュ様はとても人気がある。そんなアッシュ様を今はわたしが独り占めしていた。
「それにしてもよかったのか? 殿下は本気だったようだが……」
「そんなの困ります。殿下はわたしのような人間がただ珍しかっただけですよ。庶民の間で流行っている物語にはそういったものがありますけど、現実にはありえないですよね。真実の愛なんてそうそうないですし、あったとしても身分差なんて大変じゃないですか。ぽっと出の貧乏貴族の娘が王族と結婚なんて無理ですよ。教育だって受けていないのに」
そもそも、一方的な想いなのに『真実の愛』っておかしいわよね。
「現実的だな……」
「よっぽど自信のある女性か、一部の勘違いしている女性ならわかりませんけど、大多数の貴族の娘なら弁えていると思いますよ。……アッシュ様は殿下とわたしをくっつけたいのですか? わたしは殿下のことをそういった対象に見ていないというのに」
「いや、クレアと両思いで嬉しいよ。クレアが俺を選んでくれるなんて思わなくてね。殿下も一緒にいることが多かったし、そういった素振りも見せてくれなかったじゃないか……」
「アッシュ様はずっとわたしを気遣ってくれていたじゃありませんか。いつも、助けて欲しいときに側にいてくれたのはアッシュ様です。そちらこそよろしいのですか? 殿下の側を離れるなんて……」
「問題ないよ。治癒魔法の使い手を保護しなければいけないのは本当で、殿下の信頼の置ける人間が側にいるのが望ましいんだ。だから丁度いい」
アッシュ様の言葉にチクりと胸が痛んだ。
わたしが治癒魔法の使い手じゃなかったら選んでもらえなかった?
「……アッシュ様はわたしが治癒魔法の使い手だから選んだんですか?」
「たしかに治癒魔法の使い手に興味はあった。けれど、クレアでなければ殿下の側を離れて君の領地にいきたいなんて思わなかったよ。一緒にいて本当に楽しいんだ」
「でしたら同じ気持ちですね。わたしもアッシュ様と一緒にいると楽しいです」
アッシュ様は優しい笑顔をわたしに向けてくれる。
「殿下には悪いがクレアのことは譲れない」
「わたしは殿下に対して王族に対する尊敬の気持ちしかありませんよ。そもそも、殿下の伴侶にアシュレイ様以上にふさわしい人なんています?」
「いや、いないな。俺も幼なじみだからよく知っているが、あれほど完璧な令嬢はいないだろう。殿下の隣に並ぶために簡単にはまねできないほど努力している」
「ですよね! アシュレイ様がいて、殿下がなぜわたしのような人間に興味を持ったのかわかりません」
「……それは理解できる。殿下以外にもクレアに興味を持っている人間はかなりいたぞ」
「そうですか? よっぽどもの珍しかったのですね。ですが、殆ど声をかけてくる男性なんていませんでしたよ?」
「クレアのような女性は珍しいといえば珍しいが……。クレアが声をかけられなかったのはお互いに牽制しあっていたり、殿下や俺に遠慮していたりしたからだな」
「はぁ……」
「興味なさそうだな」
わたしがあまり興味がないことを示すとアッシュ様は苦笑する。
「そうですね。アッシュ様以外に興味を持たれたり好かれたりしてもあまり意味がないと思いませんか? アッシュ様は綺麗なご令嬢に囲まれて嬉しいですか?」
「ちょっと困るな……」
「ちょっとしか困らないということは少しは嬉しいんですね?」
「いや! そんなことはない!」
「冗談ですよ。ちょっとからかってみました」
そう言ってわたしたちは笑いあった。殿下とアシュレイ様もうまくいってほしい。お二人はとてもお似合いなのだから。
そうだ、殿下とアシュレイ様を誘って四人でどこかにでかけるのはどうだろう。アシュレイ様と一緒なら楽しいはずだ。でもまずは二人の時間をつくりたい。せっかく気持ちが通じ合ったのだから。
「ねぇ、アッシュ様、今度――」
わたしはアッシュ様をデートに誘う。
女性の方からこんな風に誘うなんてはしたないかもしれないけれど、学園での残された時間を大切にしたい。
わたしの学園生活はこれからもっと充実する予感がした。
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