23 / 71
2.婚約回避のための偽装を頑張ります
2-16.
しおりを挟む
完全に二人の世界を作っている。正直困るんだけど……。
コホン。わたしは軽く咳払いをした。
お父様はハッとした表情になる。お父様たちはこちらの世界に戻ってきたようだ。
「あぁ、すまない。相変わらずリーシアが魅力的でね」
「まぁ……」
戻ってきてなかったみたい。
前世が日本人のわたしからするとちょっと気恥ずかしいけど、二人って本当に仲が良いと思う。わたしも結婚するならお父様とお母様のような関係になりたい。
冷えた関係は嫌だ。貴族は政略結婚が当たり前で侯爵令嬢なら受け入れるのが普通かもしれないけれど、もう一人の私が拒否をする。政略結婚から逃げ切った二人ならきっと嫌な結婚は無理強いしないだろうけど……。
今度こそ戻ってきたかしら。
「レティシアは化粧品の開発がしたいんだろう? それはきれいになるためのもので良いのかな」
「そのつもりです」
「では、不美人になるための化粧品も一緒に開発しよう」
「それは良い考えですね。やるなら徹底的にやりましょう」
「良いんですか? そんなものは商品にはならないんじゃ……」
「別に売らないものを作っちゃいけないわけじゃない。殿下の目に留まらないようにするためと考えれば安いものじゃないか」
「えぇ、大事なことです。我が家で一番価値のあるものはレティシアですからね」
もう親馬鹿はスルーしよう……。
それでも殿下との婚約回避に協力してくれるのは心強い。
「レティシアは毎日の化粧でどれくらい時間がかかっていたんだい?」
「最近はほぼ完成形に近づいていたので一時間くらい?」
「いいえ、レティシア様。一時間半です。二時間かかることもあります」
すかさずリネットが訂正してきた。お父様もお母様も驚いている。
あれ? メイクってそれなりに時間をかけるものじゃないの?
「そんなにかかっているのか?」
「毎朝? ちゃんと眠れているの?」
「お化粧しているように見えないように細心の注意を払っていましたから……」
「わたしは特に睡眠不足は感じていないので大丈夫ですよ?」
お父様もお母様も驚いているが、わたしは元々睡眠時間が少なくても平気なのだ。アイドル業と学業で忙しかったし……。むしろ、今はゆったりしすぎて睡眠時間は多いし時間に余裕があって不安になるくらい。
今のわたしには学校も仕事も無いので拘束時間がない。病み上がりだからと勉強の量も減らされていたし、今もそんなに多いとは思わない。大丈夫だとアピールをしたのだけど……。
「何を言っているの。気持ちは十八歳になっているかもしれないけれど貴女はまだ七歳なのよ。成長に影響があっては大変だわ」
駄目だったらしい。しっかり寝ているつもりなんだけどなぁ。
けれど、余計なことを言い返す必要はない。お母様を怒らせると大変なことになる。
「睡眠時間はしっかり取るようにします……」
「まぁ、睡眠時間を取るためにも化粧の時間短縮は必要だろう? どういったところに時間がかかっているんだ?」
お父様がさりげなくお母様の意識をそらしてくれた。お父様さすがです。
「そうですねぇ。シミの大きさや色にかなり気を遣っていました。前より小さくなってはいけませんし、大きくなりすぎてもいけません。毎日同じ色になるようにしないといけないので大変です」
普段、わたしのメイクや世話をしてくれているリネットが代わりに答えてくれる。
「シミか……。シミを再現したシートを顔に貼るのはどうだ?」
「そんな便利なものがあるんですか?」
さすが乙女ゲームがモチーフの世界。便利なものがあるのね。そんなに便利なものがあるなら最初から使いたかった。まぁ、お父様たちに内緒で入手するのは難しかったかもしれないけど……。
コホン。わたしは軽く咳払いをした。
お父様はハッとした表情になる。お父様たちはこちらの世界に戻ってきたようだ。
「あぁ、すまない。相変わらずリーシアが魅力的でね」
「まぁ……」
戻ってきてなかったみたい。
前世が日本人のわたしからするとちょっと気恥ずかしいけど、二人って本当に仲が良いと思う。わたしも結婚するならお父様とお母様のような関係になりたい。
冷えた関係は嫌だ。貴族は政略結婚が当たり前で侯爵令嬢なら受け入れるのが普通かもしれないけれど、もう一人の私が拒否をする。政略結婚から逃げ切った二人ならきっと嫌な結婚は無理強いしないだろうけど……。
今度こそ戻ってきたかしら。
「レティシアは化粧品の開発がしたいんだろう? それはきれいになるためのもので良いのかな」
「そのつもりです」
「では、不美人になるための化粧品も一緒に開発しよう」
「それは良い考えですね。やるなら徹底的にやりましょう」
「良いんですか? そんなものは商品にはならないんじゃ……」
「別に売らないものを作っちゃいけないわけじゃない。殿下の目に留まらないようにするためと考えれば安いものじゃないか」
「えぇ、大事なことです。我が家で一番価値のあるものはレティシアですからね」
もう親馬鹿はスルーしよう……。
それでも殿下との婚約回避に協力してくれるのは心強い。
「レティシアは毎日の化粧でどれくらい時間がかかっていたんだい?」
「最近はほぼ完成形に近づいていたので一時間くらい?」
「いいえ、レティシア様。一時間半です。二時間かかることもあります」
すかさずリネットが訂正してきた。お父様もお母様も驚いている。
あれ? メイクってそれなりに時間をかけるものじゃないの?
「そんなにかかっているのか?」
「毎朝? ちゃんと眠れているの?」
「お化粧しているように見えないように細心の注意を払っていましたから……」
「わたしは特に睡眠不足は感じていないので大丈夫ですよ?」
お父様もお母様も驚いているが、わたしは元々睡眠時間が少なくても平気なのだ。アイドル業と学業で忙しかったし……。むしろ、今はゆったりしすぎて睡眠時間は多いし時間に余裕があって不安になるくらい。
今のわたしには学校も仕事も無いので拘束時間がない。病み上がりだからと勉強の量も減らされていたし、今もそんなに多いとは思わない。大丈夫だとアピールをしたのだけど……。
「何を言っているの。気持ちは十八歳になっているかもしれないけれど貴女はまだ七歳なのよ。成長に影響があっては大変だわ」
駄目だったらしい。しっかり寝ているつもりなんだけどなぁ。
けれど、余計なことを言い返す必要はない。お母様を怒らせると大変なことになる。
「睡眠時間はしっかり取るようにします……」
「まぁ、睡眠時間を取るためにも化粧の時間短縮は必要だろう? どういったところに時間がかかっているんだ?」
お父様がさりげなくお母様の意識をそらしてくれた。お父様さすがです。
「そうですねぇ。シミの大きさや色にかなり気を遣っていました。前より小さくなってはいけませんし、大きくなりすぎてもいけません。毎日同じ色になるようにしないといけないので大変です」
普段、わたしのメイクや世話をしてくれているリネットが代わりに答えてくれる。
「シミか……。シミを再現したシートを顔に貼るのはどうだ?」
「そんな便利なものがあるんですか?」
さすが乙女ゲームがモチーフの世界。便利なものがあるのね。そんなに便利なものがあるなら最初から使いたかった。まぁ、お父様たちに内緒で入手するのは難しかったかもしれないけど……。
0
お気に入りに追加
168
あなたにおすすめの小説
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
モブキャラ異世界転生記~モブキャラに転生しちゃったけど従魔の力で何とかなりそうです~
ボルトコボルト
ファンタジー
ソウタは憧れた異世界転移をしていた。しかし、転生先は勇者の隣に住むモブキャラ、俺TUEEEにはならず、魔法無しスキル無し、何の取り柄も力も無いソウタが、従魔の力で成り上がりざまぁしていく予定の物語。
従魔の登場はちょっと後になります。
★打たれ弱いので批判はご遠慮ください
応援は是非お願いします。褒められれば伸びる子です。
カクヨム様にて先行掲載中、
続きが気になる方はどうぞ。
特典付きの錬金術師は異世界で無双したい。
TEFt
ファンタジー
しがないボッチの高校生の元に届いた謎のメール。それは訳のわからないアンケートであった。内容は記載されている職業を選ぶこと。思いつきでついついクリックしてしまった彼に訪れたのは死。そこから、彼のSecond life が今始まる___。
貴方がLv1から2に上がるまでに必要な経験値は【6億4873万5213】だと宣言されたけどレベル1の状態でも実は最強な村娘!!
ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
この世界の勇者達に道案内をして欲しいと言われ素直に従う村娘のケロナ。
その道中で【戦闘レベル】なる物の存在を知った彼女は教会でレベルアップに必要な経験値量を言われて唖然とする。
ケロナがたった1レベル上昇する為に必要な経験値は...なんと億越えだったのだ!!。
それを勇者パーティの面々に鼻で笑われてしまうケロナだったが彼女はめげない!!。
そもそも今の彼女は村娘で戦う必要がないから安心だよね?。
※1話1話が物凄く短く500文字から1000文字程度で書かせていただくつもりです。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる