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第6話 修行―1
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紅茶を飲みながら俺は考えていた。
まずやるべきは、やはり魔力強化だ。
幾ら過去に来たと言っても、存在は同じなのだから祝福の儀で授かるクラスは前世同様に魔術師だろう。
近接戦に持ち込まれても対応出来るようにすることも重要だが、基本的に魔術を使い味方をサポートしたり敵を攻撃したりするのが役目である俺にとって
最も重要なのは魔力を切らさないことだ。
魔力を使い切った瞬間一般人と化してしまうのが魔術を使うクラスの欠点。
竜種と違い肉体に縛られている以上は限度はある。
しかし、前世の俺は技と知識で魔術を極め賢者と呼ばれるまでになったがそのエネルギーたる魔力はさほど高くはなかった。
むしろ魔力だけで言えば俺より多い魔術師はわりと……俺が知っているだけでも30人はいた。
そう、つまるところ俺は賢者などと呼ばれていたが真に魔術を極めた訳ではなかったのだ。
未だにもうちょっと改良できそうなんだけどな~、と思う魔術もあるし。
まぁ……そんなこと言っても、結局魔力が回復するタイミングは空間に満ちる魔素が最も高まる夜から朝にかけてなので、今から強化法を実行しても明日の朝まで気絶することになるだけで意味がない。
「と、いう訳だからノエル。協力してくれ」
「何がという訳なのか全く分かりませんよ!? いや、協力するのは勿論構いませんけど……」
「はは、悪い悪い。お前は戦士のクラスを授かってるだろ? だから近接戦の技術とか筋力を鍛えるのに協力して欲しくてな」
「あー、なるほど。でも技術はともかくトレーニングぐらい自分で出来ると思うのですが……未来から来たんですし」
「だからさっきから言ってんじゃん。俺は完全後衛型の魔術師だぜ? 筋力を鍛えようなんて思ったことなかったんだよ。だからトレーニング方法も全く分かんねぇ。まぁ? そりゃフィーが素振りとかいうのをしてるとこは何度か見たことあるからそれをやればいいのは分かるけどさ」
「……あー、そうでしたね。分っかりました!!! 任せてください! ヴァルドレイド様!! でも、覚悟してくださいよ? あと2年以内に近接戦に対応できるようにするんですからかなりハードなメニューになります。それこそ吐いてしまうかもしれません。それでも構いませんか?」
「おう、構わねぇ。よろしく頼む」
「……本当に、宜しいのですね?」
鋭い眼光で俺を睨むように忠告するノエル。
幾つかの修羅場を越えた歴戦の戦士でも怯んでしまいそうな、そんな雰囲気だ。
しかし俺には、どうあっても折れる訳にはいかない理由があるのだ。
「あぁ。頼む!!」
覚悟を決めて頭を下げる。
俺は強くならなくちゃいけない。
もう二度と、フィーにあんな寂しい死に方をさせるわけにはいかないんだ。
「まぁ、初めから分かっていたことでしたが……生半可な覚悟ではないようですね。分かりました。フローラ様、そういう訳ですので……」
「えぇ、家のことは任せなさい。遠慮する必要は無いわ。思いっ切り、ね?」
「……畏まりました。それでは、参りましょうか」
「おう!」
でも……実際何をするんだろうか。
俺が知ってる筋力のトレーニング方法なんて、さっき言った通り素振りとかいうのしかないんだよな。
あれってそんなに辛いのだろうか。
なんてことを考えていると、
「では、私の合図で走り出してください。ゴールはここです。魔術の使用は勿論禁止です」
早速修行が始まったようだ。
「あー、つまり村の塀に沿って一周して来ればいいのか?」
「はい。まぁ、要するにテストです。現時点のスタミナ量を確かめます。なので全力でやってくださいね? あぁ、それともし途中で少しでも休んだりしたらもう修行はつけませんので、そこのところ宜しくお願いします」
ふむ、母さんみたいにとはいかないが……なんとなく分かる。
これは本気の目だ。
もし俺が途中で根をあげたら、容赦なく突き放すだろう。
「……へ、上等! やってやる。生温い修行じゃ意味がねぇことなんざ最初っから分かってんだ」
「ふふ、それでこそです。それと、必要無いと信じたいですが一応私も後ろからついていきます」
「……ま、仕方ねぇか。分かった」
「宜しい。では、スタート!」
合図と共に走り出す。
強く地を踏みしめ、とにかく全力で走り続ける。
「はぁ、はぁ……」
息が切れてきた。
体温が著しく上昇している。
汗が滲む。
既に数分は経ったような気がするが、ゴールはまだ見えない。
「はぁ、はぁ、っく……はぁ……」
走る、というのは……これ程までに苦しいものだったのか。
俺の心は驚愕と疲労で満たされていた。
魔力が少なくなってきた時の、自分の何か大切なものが身体から抜かれていく虚脱感や疲労感や頭に釘でも打ち付けられているかのような激しい頭痛。
前世最も辛いことの一つだと思っていたそれを遥かに凌ぐ疲労感が俺を襲う。
「はぁはぁ、っぐぅ……はぁ、はぁ」
脚が悲鳴を上げている。
思わず立ち止まりそうになる。
しかし意志の力でそれをねじ伏せ前へ前へと足を進める。
前世……俺はクラスを授かってからというもの移動一つとっても魔術による身体能力強化や飛行に頼っていた。
これは、それ故に感じる疲労なのだろうか。
そんなことを考えながら、無言で走り続け……
「はぁ! はぁ! っぐ、はぁ! はぁ!」
「お疲れさまでした。今日はもう終わりにしましょう」
日が暮れ、辺りが暗くなってきた頃ようやく俺はゴールに辿り着いた。
走り始めたのは、朝食を摂って数時間経ったぐらいだったというのに。
「この、村って……はぁ、こんなに……はぁ、ひろ、かったのかッ……!」
「ん~、正確に測った訳ではありませんが……走ってみた感じ外周距離は精々3キロルあるかないかぐらいです。まぁ、ともかくお疲れさまでした。家に帰りましょう」
……どうやら俺は、自分が思っていた以上に体力がないらしい。
まずやるべきは、やはり魔力強化だ。
幾ら過去に来たと言っても、存在は同じなのだから祝福の儀で授かるクラスは前世同様に魔術師だろう。
近接戦に持ち込まれても対応出来るようにすることも重要だが、基本的に魔術を使い味方をサポートしたり敵を攻撃したりするのが役目である俺にとって
最も重要なのは魔力を切らさないことだ。
魔力を使い切った瞬間一般人と化してしまうのが魔術を使うクラスの欠点。
竜種と違い肉体に縛られている以上は限度はある。
しかし、前世の俺は技と知識で魔術を極め賢者と呼ばれるまでになったがそのエネルギーたる魔力はさほど高くはなかった。
むしろ魔力だけで言えば俺より多い魔術師はわりと……俺が知っているだけでも30人はいた。
そう、つまるところ俺は賢者などと呼ばれていたが真に魔術を極めた訳ではなかったのだ。
未だにもうちょっと改良できそうなんだけどな~、と思う魔術もあるし。
まぁ……そんなこと言っても、結局魔力が回復するタイミングは空間に満ちる魔素が最も高まる夜から朝にかけてなので、今から強化法を実行しても明日の朝まで気絶することになるだけで意味がない。
「と、いう訳だからノエル。協力してくれ」
「何がという訳なのか全く分かりませんよ!? いや、協力するのは勿論構いませんけど……」
「はは、悪い悪い。お前は戦士のクラスを授かってるだろ? だから近接戦の技術とか筋力を鍛えるのに協力して欲しくてな」
「あー、なるほど。でも技術はともかくトレーニングぐらい自分で出来ると思うのですが……未来から来たんですし」
「だからさっきから言ってんじゃん。俺は完全後衛型の魔術師だぜ? 筋力を鍛えようなんて思ったことなかったんだよ。だからトレーニング方法も全く分かんねぇ。まぁ? そりゃフィーが素振りとかいうのをしてるとこは何度か見たことあるからそれをやればいいのは分かるけどさ」
「……あー、そうでしたね。分っかりました!!! 任せてください! ヴァルドレイド様!! でも、覚悟してくださいよ? あと2年以内に近接戦に対応できるようにするんですからかなりハードなメニューになります。それこそ吐いてしまうかもしれません。それでも構いませんか?」
「おう、構わねぇ。よろしく頼む」
「……本当に、宜しいのですね?」
鋭い眼光で俺を睨むように忠告するノエル。
幾つかの修羅場を越えた歴戦の戦士でも怯んでしまいそうな、そんな雰囲気だ。
しかし俺には、どうあっても折れる訳にはいかない理由があるのだ。
「あぁ。頼む!!」
覚悟を決めて頭を下げる。
俺は強くならなくちゃいけない。
もう二度と、フィーにあんな寂しい死に方をさせるわけにはいかないんだ。
「まぁ、初めから分かっていたことでしたが……生半可な覚悟ではないようですね。分かりました。フローラ様、そういう訳ですので……」
「えぇ、家のことは任せなさい。遠慮する必要は無いわ。思いっ切り、ね?」
「……畏まりました。それでは、参りましょうか」
「おう!」
でも……実際何をするんだろうか。
俺が知ってる筋力のトレーニング方法なんて、さっき言った通り素振りとかいうのしかないんだよな。
あれってそんなに辛いのだろうか。
なんてことを考えていると、
「では、私の合図で走り出してください。ゴールはここです。魔術の使用は勿論禁止です」
早速修行が始まったようだ。
「あー、つまり村の塀に沿って一周して来ればいいのか?」
「はい。まぁ、要するにテストです。現時点のスタミナ量を確かめます。なので全力でやってくださいね? あぁ、それともし途中で少しでも休んだりしたらもう修行はつけませんので、そこのところ宜しくお願いします」
ふむ、母さんみたいにとはいかないが……なんとなく分かる。
これは本気の目だ。
もし俺が途中で根をあげたら、容赦なく突き放すだろう。
「……へ、上等! やってやる。生温い修行じゃ意味がねぇことなんざ最初っから分かってんだ」
「ふふ、それでこそです。それと、必要無いと信じたいですが一応私も後ろからついていきます」
「……ま、仕方ねぇか。分かった」
「宜しい。では、スタート!」
合図と共に走り出す。
強く地を踏みしめ、とにかく全力で走り続ける。
「はぁ、はぁ……」
息が切れてきた。
体温が著しく上昇している。
汗が滲む。
既に数分は経ったような気がするが、ゴールはまだ見えない。
「はぁ、はぁ、っく……はぁ……」
走る、というのは……これ程までに苦しいものだったのか。
俺の心は驚愕と疲労で満たされていた。
魔力が少なくなってきた時の、自分の何か大切なものが身体から抜かれていく虚脱感や疲労感や頭に釘でも打ち付けられているかのような激しい頭痛。
前世最も辛いことの一つだと思っていたそれを遥かに凌ぐ疲労感が俺を襲う。
「はぁはぁ、っぐぅ……はぁ、はぁ」
脚が悲鳴を上げている。
思わず立ち止まりそうになる。
しかし意志の力でそれをねじ伏せ前へ前へと足を進める。
前世……俺はクラスを授かってからというもの移動一つとっても魔術による身体能力強化や飛行に頼っていた。
これは、それ故に感じる疲労なのだろうか。
そんなことを考えながら、無言で走り続け……
「はぁ! はぁ! っぐ、はぁ! はぁ!」
「お疲れさまでした。今日はもう終わりにしましょう」
日が暮れ、辺りが暗くなってきた頃ようやく俺はゴールに辿り着いた。
走り始めたのは、朝食を摂って数時間経ったぐらいだったというのに。
「この、村って……はぁ、こんなに……はぁ、ひろ、かったのかッ……!」
「ん~、正確に測った訳ではありませんが……走ってみた感じ外周距離は精々3キロルあるかないかぐらいです。まぁ、ともかくお疲れさまでした。家に帰りましょう」
……どうやら俺は、自分が思っていた以上に体力がないらしい。
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