9 / 26
いっしょにお風呂
しおりを挟む
「アラバマはお風呂、どうするの」
バスタブに湯を入れはじめてから、アラバマの意思を確認する。アラバマはベッドを我が物顔に占領し、惣助のスマホでYouTubeを見ている。
「んー、どうしよっかな」
「あっ。でも、着替えが」
「同じ服でがまんする」
「まあ、それがベストかな。体はちゃんと洗うわけだし、一日くらいならなんとか」
「そうすけ、お茶とって」
「はいはい」
苦笑いをしながら緑茶のペットボトルを差し出す。アラバマは三分の一ほど残っていた液体を一気に飲み干した。
返却されたペットボトルを受けとるさい、スマホのディスプレイに注目した。セーラームーンのコスプレをした男が、誰かから逃げているらしく、人気のない山道を全力疾走していた。
*
上から順番に脱衣する。ALABAMAのパーカー、シャツ、ジーンズ、ショーツ。
脱ぎながら、惣助の脱いだ服がどこにあるのかを探したが、見当たらない。タオルを体に巻きつけ、ドアを開ける。
惣助はバスタブに浸かっている。腰に純白のタオルを巻いているのが、澄んだ湯を通して見える。
狭い空間には、バスタブと、シャワーと、洋式便器がある。
便器のフタを開け、便座に座る。惣助のほうを向き、
「誰かがお風呂入ってるときにトイレしたくなったら、どうするの?」
「我慢するしかないんじゃないかな。ていうか、入らないの?」
「入るよー。入る、入る」
便座から立ってバスタブに向かいかけて、フタを下ろし忘れていることに気づいたので下ろし、向かい合う形で湯に浸かる。
「ちょっと狭いね」
「まあね」
湯面をばちゃばちゃとやりながら、惣助の顔を見つめる。惣助は便器が置いてあるほうを向いている。
「湯、熱くない? それともぬるい?」
「ふつー。ちょうどいいとも言う」
「それは、それは。アラバマは疲れてない? 今日はいろいろあったから」
「んー、どうだろ。ドーナツおごってもらったし、かきあげそばおごってもらったし、久しぶりにYouTube見れたし」
「あ、ドーナツとそばで思い出したけど、明日のアラバマのぶんの朝食……」
「ないの?」
「僕のしか買ってない。朝一で買い出しかな、コンビニまで」
「お風呂出てからは?」
「体が冷えるから、それはできれば避けたいね」
「でも、朝眠いし。起きるのむりー」
「武器に買いに行くのは大丈夫なの」
「それはだいじょーぶ。だって十時でしょ」
「そっか。じゃあ、朝食は僕が買ってくるね。パン? おにぎり?」
「そうすけと同じでいい。そうすけはどっち派?」
「パン派だね。買ってあるのはね、クリームパン。売れきれているなんてことはないだろうし、それにしようか。同じシリーズで、ジャムパンとアンパンもあるけど、三つの中だったらどれが好き?」
「クリームパン!」
「僕も同じ。気が合うね」
「ね」
*
シャンプーをつけたアラバマの髪の毛をわしゃわしゃとかき乱す。
「ぎゃわー!」
アラバマは笑いを含んだ声を上げ、身をくねらせた。
「びっくりしたぁ。なんなの、その断末魔みたいな声は」
「きもちいい! うひゃー!」
「人に洗ってもらうと気持ちいいよね。もしかしてアラバマ、美容室とかで洗ってもらったことないの?」
「なーい。早く終わりたいから、カットだけ」
「そっか。じゃあ初体験なわけね」
「ぎゅおー!」
「悶えない、悶えない」
「ねえ、あたま! 髪の毛じゃなくて、あたま、ちょくせつぐりぐりやって!」
「頭皮をマッサージしろってこと? よし。それじゃあいくよー」
「ひゃうー!」
バスタブに湯を入れはじめてから、アラバマの意思を確認する。アラバマはベッドを我が物顔に占領し、惣助のスマホでYouTubeを見ている。
「んー、どうしよっかな」
「あっ。でも、着替えが」
「同じ服でがまんする」
「まあ、それがベストかな。体はちゃんと洗うわけだし、一日くらいならなんとか」
「そうすけ、お茶とって」
「はいはい」
苦笑いをしながら緑茶のペットボトルを差し出す。アラバマは三分の一ほど残っていた液体を一気に飲み干した。
返却されたペットボトルを受けとるさい、スマホのディスプレイに注目した。セーラームーンのコスプレをした男が、誰かから逃げているらしく、人気のない山道を全力疾走していた。
*
上から順番に脱衣する。ALABAMAのパーカー、シャツ、ジーンズ、ショーツ。
脱ぎながら、惣助の脱いだ服がどこにあるのかを探したが、見当たらない。タオルを体に巻きつけ、ドアを開ける。
惣助はバスタブに浸かっている。腰に純白のタオルを巻いているのが、澄んだ湯を通して見える。
狭い空間には、バスタブと、シャワーと、洋式便器がある。
便器のフタを開け、便座に座る。惣助のほうを向き、
「誰かがお風呂入ってるときにトイレしたくなったら、どうするの?」
「我慢するしかないんじゃないかな。ていうか、入らないの?」
「入るよー。入る、入る」
便座から立ってバスタブに向かいかけて、フタを下ろし忘れていることに気づいたので下ろし、向かい合う形で湯に浸かる。
「ちょっと狭いね」
「まあね」
湯面をばちゃばちゃとやりながら、惣助の顔を見つめる。惣助は便器が置いてあるほうを向いている。
「湯、熱くない? それともぬるい?」
「ふつー。ちょうどいいとも言う」
「それは、それは。アラバマは疲れてない? 今日はいろいろあったから」
「んー、どうだろ。ドーナツおごってもらったし、かきあげそばおごってもらったし、久しぶりにYouTube見れたし」
「あ、ドーナツとそばで思い出したけど、明日のアラバマのぶんの朝食……」
「ないの?」
「僕のしか買ってない。朝一で買い出しかな、コンビニまで」
「お風呂出てからは?」
「体が冷えるから、それはできれば避けたいね」
「でも、朝眠いし。起きるのむりー」
「武器に買いに行くのは大丈夫なの」
「それはだいじょーぶ。だって十時でしょ」
「そっか。じゃあ、朝食は僕が買ってくるね。パン? おにぎり?」
「そうすけと同じでいい。そうすけはどっち派?」
「パン派だね。買ってあるのはね、クリームパン。売れきれているなんてことはないだろうし、それにしようか。同じシリーズで、ジャムパンとアンパンもあるけど、三つの中だったらどれが好き?」
「クリームパン!」
「僕も同じ。気が合うね」
「ね」
*
シャンプーをつけたアラバマの髪の毛をわしゃわしゃとかき乱す。
「ぎゃわー!」
アラバマは笑いを含んだ声を上げ、身をくねらせた。
「びっくりしたぁ。なんなの、その断末魔みたいな声は」
「きもちいい! うひゃー!」
「人に洗ってもらうと気持ちいいよね。もしかしてアラバマ、美容室とかで洗ってもらったことないの?」
「なーい。早く終わりたいから、カットだけ」
「そっか。じゃあ初体験なわけね」
「ぎゅおー!」
「悶えない、悶えない」
「ねえ、あたま! 髪の毛じゃなくて、あたま、ちょくせつぐりぐりやって!」
「頭皮をマッサージしろってこと? よし。それじゃあいくよー」
「ひゃうー!」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる