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証言と考察①
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夕焼けに染まるには少し速い空の下を、親子ほども年齢差のある二人の男――草太朗と遼は肩を並べて歩いている。
部屋を出た直後、草太朗は美咲の自宅の場所を尋ね、遼はそれに答え、移動を開始した。
四本の脚が動き出してからの一分間、草太朗は様子見の意味から黙っていたが、遼はしゃべり出そうとしない。どうやら依然として緊張が強いらしい。
それをほぐすとともに、彼との距離を少しでも縮めたい思惑から、草太朗は趣味について尋ねてみた。
「一番の趣味はゲームですね。スマホのアプリで遊べるやつなんですけど。最近はもっぱら『ラストハルモニア』っていうファンタジーRPGを。武元さんはご存知ですか?」
「知らないね。ゲームには疎くて。王道のRPGって感じ?」
「そうですね。一言で言えば」
「王道っていう時点で面白そうだけど、覚えることとかやることとかがたくさんありそうで、おじさんにはちょっとハードルが高そうかな。僕なんてゲームといえば、むちゃくちゃ暇なときにリバーシをやるくらいだからね。同じゲームでも月とスッポンだよ」
「難しくはないですよ。簡単操作で手軽に遊べるというのが『ラスハル』の売りなので。たとえば――」
遼の顔に少年らしい明るさが感じられるようになり、口数が増えた。申告どおり、ゲームに疎い草太朗は興味が持てない話題だが、黙り込まれるよりもずっといい。
ゲームシステムの魅力、攻略の難しさ、課金額が制限されているもどかしさについて……。
「美咲に課金のことを話したら、むちゃくちゃ冷たい反応されるんですよね。あいつ、ゲームはやらないから」
「偏見かもしれないけど、ゲームを趣味にしているのは女の子よりも男の子のほうが多いイメージあるね。ゲームをしないなら、咲ちゃんはなにが好きなのかな? 遼くんとは普段どんな話題で盛り上がるの?」
「結構オタクっぽいところありますよ、美咲は。マンガとか、アニメとか。あいつは少女漫画が好きなんだけど、俺はヒーローものの少年漫画とかが好きだから、微妙に話が合わないんですよね。でも、美咲と好きなものを語っている時間は楽しいですよ。おすすめのマンガやアニメを紹介し合うとか、割とやってるんで」
趣味について知ることができた。二人の仲がいいのも確認がとれた。遼が幼なじみのことを活き活きと語るのを聞くのは素直に楽しい。
ただ、美咲が不登校・ひきこもり・人としゃべらなくなった原因は見えてこない。
遼と美咲とのあいだでなにかトラブルがあって、それが要因となったわけではなさそうだが……。
部屋を出た直後、草太朗は美咲の自宅の場所を尋ね、遼はそれに答え、移動を開始した。
四本の脚が動き出してからの一分間、草太朗は様子見の意味から黙っていたが、遼はしゃべり出そうとしない。どうやら依然として緊張が強いらしい。
それをほぐすとともに、彼との距離を少しでも縮めたい思惑から、草太朗は趣味について尋ねてみた。
「一番の趣味はゲームですね。スマホのアプリで遊べるやつなんですけど。最近はもっぱら『ラストハルモニア』っていうファンタジーRPGを。武元さんはご存知ですか?」
「知らないね。ゲームには疎くて。王道のRPGって感じ?」
「そうですね。一言で言えば」
「王道っていう時点で面白そうだけど、覚えることとかやることとかがたくさんありそうで、おじさんにはちょっとハードルが高そうかな。僕なんてゲームといえば、むちゃくちゃ暇なときにリバーシをやるくらいだからね。同じゲームでも月とスッポンだよ」
「難しくはないですよ。簡単操作で手軽に遊べるというのが『ラスハル』の売りなので。たとえば――」
遼の顔に少年らしい明るさが感じられるようになり、口数が増えた。申告どおり、ゲームに疎い草太朗は興味が持てない話題だが、黙り込まれるよりもずっといい。
ゲームシステムの魅力、攻略の難しさ、課金額が制限されているもどかしさについて……。
「美咲に課金のことを話したら、むちゃくちゃ冷たい反応されるんですよね。あいつ、ゲームはやらないから」
「偏見かもしれないけど、ゲームを趣味にしているのは女の子よりも男の子のほうが多いイメージあるね。ゲームをしないなら、咲ちゃんはなにが好きなのかな? 遼くんとは普段どんな話題で盛り上がるの?」
「結構オタクっぽいところありますよ、美咲は。マンガとか、アニメとか。あいつは少女漫画が好きなんだけど、俺はヒーローものの少年漫画とかが好きだから、微妙に話が合わないんですよね。でも、美咲と好きなものを語っている時間は楽しいですよ。おすすめのマンガやアニメを紹介し合うとか、割とやってるんで」
趣味について知ることができた。二人の仲がいいのも確認がとれた。遼が幼なじみのことを活き活きと語るのを聞くのは素直に楽しい。
ただ、美咲が不登校・ひきこもり・人としゃべらなくなった原因は見えてこない。
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