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血なまぐさい話
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「新町川沿いにある公園――藍場浜公園、でいいのかな。あそこでの激闘は、人生で十指に入る名勝負だったと思ってる。八月の死ぬほど暑い日だった」
リーフはジャンクフードを中心に据えた夕食をとりながら、食事の席に相応しくないがゆえにイナに相応しい、血なまぐさい話を語った。
「初め戦ったのは、取るに足らない狼型の怪物だったの。ほら、駅周辺って小型の怪物が多いでしょう。群れを成すタイプの。機動力が高いのが厄介だったけど、群れている割にチームワークは冴えないし、パワーもボディサイズ相応だから、難しい敵ではなかった。
でも、全頭倒した直後、突然川から飛び出してきた新手の怪物に、不覚にも一撃をもらっちゃってね。背中に、私が非現実の存在でなければ一生残ったレベルの、深い切り傷が刻みつけられて。半魚人、という表現で正しいのかな。人間の胴体に肉食魚の頭部、みたいな姿の怪物だったんだけど。緑っぽい、水藻や水草に近い体色だったから、カメレオンのように擬態していたんだろうね。水中に身を潜めて、私が弱るのを待ち構えていたというわけ。
経験上、そういう少なからず頭を使ってくるタイプは、ごり押ししてくるパワー系よりも手強い場合が多くて。不意打ちの一撃が予想以上に重かったし、これはちょっとやばいかもなって、最初から嫌な予感はしてた。一気に勝負を決めようと猛攻をしかけてきたから、防ぎきってなんとか反撃といきたかったんだけど、川に引きずり込まれてね。そうならないように注意を払ってはいたんだけど、不意打ちの一撃が重すぎた。これに尽きると思う。
それからはもう、死に物狂い。向こうは川に入ってからは一転、一気に片をつけようとするんじゃなくて、私をなるべく動き回らせて体力を消耗させる作戦をとってきて。少しでも楽をしようとすると、そうはさせまいと攻勢に出るとか、こちらの心理を踏まえた立ち回りをしてくるから、本当にしんどかった。背中から流れ出した血が川の水を赤黒く染めて、凄い光景だったんじゃないかな。もっとも、私は殺されないように抗うのでせいいっぱいだったから、景色に気を配る余裕なんてなかったけど。
勝因を挙げるとすれば、粘りに粘り抜いたことだろうね。根負けせず、自暴自棄にならず、小さな隙を抜かりなくついてダメージを蓄積させていった結果、逆転勝ちをたぐり寄せられた。
相手の敗因を挙げるとすれば、自分の庭に敵を引きずり込んだことによる慢心かな。形勢が私に傾いても逃げなかったからね、その半魚人型の怪物は。彼我の累積ダメージの差を考えれば、上手くやれば逃げおおせられたかもしれないけど、愚かにもその道は選ばなかった。
戦いの最後のほうは、疲れきった二体の生き物が、相手を先に倒すべく、懸命に得物を振るって傷つけ合っていただけだから、イナからすれば面白味に欠ける絵だったかもしれない。冒頭でこの戦いを死闘と表現したけど、最後のほうだけを切りとれば、泥仕合と呼んだほうが実態に近いんじゃないかな」
リーフはジャンクフードを中心に据えた夕食をとりながら、食事の席に相応しくないがゆえにイナに相応しい、血なまぐさい話を語った。
「初め戦ったのは、取るに足らない狼型の怪物だったの。ほら、駅周辺って小型の怪物が多いでしょう。群れを成すタイプの。機動力が高いのが厄介だったけど、群れている割にチームワークは冴えないし、パワーもボディサイズ相応だから、難しい敵ではなかった。
でも、全頭倒した直後、突然川から飛び出してきた新手の怪物に、不覚にも一撃をもらっちゃってね。背中に、私が非現実の存在でなければ一生残ったレベルの、深い切り傷が刻みつけられて。半魚人、という表現で正しいのかな。人間の胴体に肉食魚の頭部、みたいな姿の怪物だったんだけど。緑っぽい、水藻や水草に近い体色だったから、カメレオンのように擬態していたんだろうね。水中に身を潜めて、私が弱るのを待ち構えていたというわけ。
経験上、そういう少なからず頭を使ってくるタイプは、ごり押ししてくるパワー系よりも手強い場合が多くて。不意打ちの一撃が予想以上に重かったし、これはちょっとやばいかもなって、最初から嫌な予感はしてた。一気に勝負を決めようと猛攻をしかけてきたから、防ぎきってなんとか反撃といきたかったんだけど、川に引きずり込まれてね。そうならないように注意を払ってはいたんだけど、不意打ちの一撃が重すぎた。これに尽きると思う。
それからはもう、死に物狂い。向こうは川に入ってからは一転、一気に片をつけようとするんじゃなくて、私をなるべく動き回らせて体力を消耗させる作戦をとってきて。少しでも楽をしようとすると、そうはさせまいと攻勢に出るとか、こちらの心理を踏まえた立ち回りをしてくるから、本当にしんどかった。背中から流れ出した血が川の水を赤黒く染めて、凄い光景だったんじゃないかな。もっとも、私は殺されないように抗うのでせいいっぱいだったから、景色に気を配る余裕なんてなかったけど。
勝因を挙げるとすれば、粘りに粘り抜いたことだろうね。根負けせず、自暴自棄にならず、小さな隙を抜かりなくついてダメージを蓄積させていった結果、逆転勝ちをたぐり寄せられた。
相手の敗因を挙げるとすれば、自分の庭に敵を引きずり込んだことによる慢心かな。形勢が私に傾いても逃げなかったからね、その半魚人型の怪物は。彼我の累積ダメージの差を考えれば、上手くやれば逃げおおせられたかもしれないけど、愚かにもその道は選ばなかった。
戦いの最後のほうは、疲れきった二体の生き物が、相手を先に倒すべく、懸命に得物を振るって傷つけ合っていただけだから、イナからすれば面白味に欠ける絵だったかもしれない。冒頭でこの戦いを死闘と表現したけど、最後のほうだけを切りとれば、泥仕合と呼んだほうが実態に近いんじゃないかな」
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