塵埃抄

転生

　とある平凡な夫婦の間に生まれたその娘は、十五年の年月を経て、見目麗しい少女へと成長しました。娘は美貌をひけらかすことなく、至って平凡な日々を送りました。
　ある日、娘は学校からの帰宅途中、男たちに拉致されました。廃工場に連れ込まれ、男たちに代わる代わる犯されました。
　さんざ若い体を玩んだ男たちは、娘を人質に、娘の両親に身代金を要求しました。
　身代金の受け渡し当日、情報は警察にしか伝わっていないはずにもかかわらず、男たちが指定した場所には大勢の記者の姿がありました。美少女が誘拐されたこの事件に注目したマスコミは、極秘裏に情報を得て、受け渡し場所に先回りをしていたのです。
　金を受け取り損ねた男たちは、腹立ち紛れに娘を激しく暴行し、殺してしまいました。
　数日後、身代金受け渡し場所近くの河原で、少女の遺体が発見されました。遺体の有り様は無惨の一言で、第一発見者の男性は豚の死骸かと思ったそうです。
　変わり果てた娘と対面した母親は、慟哭しました。
　娘の葬儀はしめやかに営まれました。もし生まれ変わるなら、平凡な家庭に生まれ、平凡な日々を送ってほしい。最後にそう願って、母親は娘に永遠の別れを告げました。
　それから百年の歳月が流れました。
　娘の魂は巡り巡って、とある平凡な夫婦の間に産まれた女の子として、現世に舞い戻りました。娘は平凡な日々を送りながらも、見目麗しい少女へと成長しました。
　そんなある日、娘は下校途中に男たちに拉致され、代わる代わる犯されました。男たちは娘を人質に身代金を要求しましたが、受け取りは失敗。その腹癒せに、男たちは娘に激しく暴力を振るい、殺してしまいました。
　百年前、娘の前世における母親が、平凡な家庭に生まれ、平凡な日々を送ってほしいと願いさえしなければ、娘の魂が再び悲惨な目に遭うことはなかったでしょうに。