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3-8 終わりの始まり
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土方の言葉にも、誰も立ち上がる者はいない。
「俺を斬れば伊東の元へ行けるぞ」
茨木がやっとの思いで口を開く。
「暫時お待ちいただけないか」
「いいだろう。じっくり話し合うが良い」
頭を下げる茨木。
かたじけない」
「俺は別室で待つ。話が決まったら呼んでくれ」
土方は刀を下げて、部屋を後にした。
彼らには土方と立ち会って勝つか、負けるかしか道は残されていない。
どんな結論を出すのか。
詫びて組へ戻るというなら、近藤は許すまいが俺が口を聞いてやっても良い。
別室で土方はいばらぎの連絡を待っていた。
あれだけ残虐の仕打ちを見せたのだ。
茨木はじめ全員が蒼白になっていた。
自分はああなりたくはないだろう。
しかし、彼らに道は残されていない。
どうするのか。
ゆっくりと茶をすすりながら土方は待った。
そこへ慌ただしく会津の侍が駆け込んで来た。
「大変です。すぐ奥座敷の方へ!」
刀を柄んで立ち上がる土方。
侍とともに座敷へ急ぐ。
奥座敷へ入るなり。土方は立ちすくんだ。
茨木たち全員が切腹して果てていたからだ。
血の海だった。
中村、宮川たち八名の切腹を茨木が介錯し、彼が最後に腹を切って苦しんでいる。
すぐさま、兼定を抜き茨木の首を落とす土方。
侍は呆然としてそれを見ている。
頭を下げる土方。
「彼らは新選組隊士のまま屠腹してござる。お手数ですが、屯所まで彼らの遺骸をお運び願いたい」
「承知いたしました。すぐに手配いたします」
土方、刀の血振りをして座敷を出る。
なんとか佐野たちの問題は決着をみたが、屯所では難題が土方を待っていた。
総司の病気が急変したのだ。
腹を抑えてもがき苦しみ、かかりつけ医の丈庵がついていたが土方を見て首を振った。
総司の労咳はすでに末期に入っていたのだ。
初期では激しい咳やたんに苦しむが、労咳は末期になると全身症状となって全身の臓器が労咳に犯される。
やせ細り、全身臓器の激痛にのたうちまわる。
土方は最後まで総司を看取ろうと決意した。
丈庵には丁重に礼を言って帰ってもらった。
「何か変化がありましたら、すぐに知らせなさい」
そう言って丈庵は戻って行った。
すでに手の施しようがないのだろう。
土方は意識のない総司の枕元で、夜を明かした。
明け方、決定的な知らせが飛び込んで来た。
昨夜、竜馬が殺されたというのだ。
兼定を掴んで飛び出そうとする土方を、近藤が大手を広げて止めた。
「どいてくれ!近藤さん!」
まるで近藤を斬りかねない勢いで叫ぶ土方に、近藤は言った。
「今行っても、近江屋の周辺は土佐、薩摩、長州の奴らが密使有している!奴らは気が立っている!いくら歳でも斬られるさぞ!」
近藤のう通りだった。
まだ下手人が見つかっていない。
新選組の副長が現れたら、やつらは問答無用斬る!
無言で総司の枕元へ引き返す土方。
これで最後の頼みの綱が切れた!
竜馬は公武合体を唱える最後の大物なのだ。
孝明帝亡き後、竜馬が最後の希望だったのだ。
土方は意識のない総司の前で頭を抱えた。
どうする!
どうする!!
後装式連発銃も、竜馬が血用達してくれるはずだった。
全てが潰えた。
この三日間、どうしても竜馬の元へ行けなかった!
物言わぬ総司に土方はつぶやいた。
「終わった!すべては終わった!」
「俺を斬れば伊東の元へ行けるぞ」
茨木がやっとの思いで口を開く。
「暫時お待ちいただけないか」
「いいだろう。じっくり話し合うが良い」
頭を下げる茨木。
かたじけない」
「俺は別室で待つ。話が決まったら呼んでくれ」
土方は刀を下げて、部屋を後にした。
彼らには土方と立ち会って勝つか、負けるかしか道は残されていない。
どんな結論を出すのか。
詫びて組へ戻るというなら、近藤は許すまいが俺が口を聞いてやっても良い。
別室で土方はいばらぎの連絡を待っていた。
あれだけ残虐の仕打ちを見せたのだ。
茨木はじめ全員が蒼白になっていた。
自分はああなりたくはないだろう。
しかし、彼らに道は残されていない。
どうするのか。
ゆっくりと茶をすすりながら土方は待った。
そこへ慌ただしく会津の侍が駆け込んで来た。
「大変です。すぐ奥座敷の方へ!」
刀を柄んで立ち上がる土方。
侍とともに座敷へ急ぐ。
奥座敷へ入るなり。土方は立ちすくんだ。
茨木たち全員が切腹して果てていたからだ。
血の海だった。
中村、宮川たち八名の切腹を茨木が介錯し、彼が最後に腹を切って苦しんでいる。
すぐさま、兼定を抜き茨木の首を落とす土方。
侍は呆然としてそれを見ている。
頭を下げる土方。
「彼らは新選組隊士のまま屠腹してござる。お手数ですが、屯所まで彼らの遺骸をお運び願いたい」
「承知いたしました。すぐに手配いたします」
土方、刀の血振りをして座敷を出る。
なんとか佐野たちの問題は決着をみたが、屯所では難題が土方を待っていた。
総司の病気が急変したのだ。
腹を抑えてもがき苦しみ、かかりつけ医の丈庵がついていたが土方を見て首を振った。
総司の労咳はすでに末期に入っていたのだ。
初期では激しい咳やたんに苦しむが、労咳は末期になると全身症状となって全身の臓器が労咳に犯される。
やせ細り、全身臓器の激痛にのたうちまわる。
土方は最後まで総司を看取ろうと決意した。
丈庵には丁重に礼を言って帰ってもらった。
「何か変化がありましたら、すぐに知らせなさい」
そう言って丈庵は戻って行った。
すでに手の施しようがないのだろう。
土方は意識のない総司の枕元で、夜を明かした。
明け方、決定的な知らせが飛び込んで来た。
昨夜、竜馬が殺されたというのだ。
兼定を掴んで飛び出そうとする土方を、近藤が大手を広げて止めた。
「どいてくれ!近藤さん!」
まるで近藤を斬りかねない勢いで叫ぶ土方に、近藤は言った。
「今行っても、近江屋の周辺は土佐、薩摩、長州の奴らが密使有している!奴らは気が立っている!いくら歳でも斬られるさぞ!」
近藤のう通りだった。
まだ下手人が見つかっていない。
新選組の副長が現れたら、やつらは問答無用斬る!
無言で総司の枕元へ引き返す土方。
これで最後の頼みの綱が切れた!
竜馬は公武合体を唱える最後の大物なのだ。
孝明帝亡き後、竜馬が最後の希望だったのだ。
土方は意識のない総司の前で頭を抱えた。
どうする!
どうする!!
後装式連発銃も、竜馬が血用達してくれるはずだった。
全てが潰えた。
この三日間、どうしても竜馬の元へ行けなかった!
物言わぬ総司に土方はつぶやいた。
「終わった!すべては終わった!」
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