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8 小夜の死
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寝ていた織部がゆり起こされた。
父の左衛門が起こしていた。
織部は驚いて飛び起きた。
父が自分を起こすなど始めてだ。
「起きろ!小夜さんが死んだ!」
その声に織部は飛び起きた。
「今朝、河に死体で浮いてるのを、
朝早く仕事にでかける町人が発見した」
なぜ、なぜ小夜さんが死ぬんだ!
「奉行所の調べでは、小夜さんの腹には
子供がいた」
織部は唇を噛んだ。
これで全ての謎が解けた。
昨夜あれほど俺に助けてくれ
と言ったのも、奥田主馬を斬ってくれ
と言ったのも!
腹の子供は主馬の子だ!
右門の言葉に惑わされ、彼女を
信じてやらなかった自分を悔やんだ。
織部は着替えると刀を手に家を出た。
「どこへ行く!」と言う父の声に
返事もしなかった。
やることは一つだけ。
これから道場へ行って主馬を斬る!
二人の秘密を知るのは俺だけだ。
主馬は小夜の死で安心して
道場へ出でいるだろう。
小夜の言葉を信じてやらなかった
自分に彼女の死の責任がある。
その責任をこれから果たしてくる。
道場へ行くと騒然としていた。
無理もない道場主の一人娘が
死んだのだ。
やはり主馬は道場へ出ていた。
俺は彼に言った。
「刀を持って外へ出ろ!」
主馬は薄ら笑いをした。
「刀を持ってとは、穏やかじゃないな」
「小夜のことでカタをつける」
その一言で主馬の顔色が変わった。
小夜の死で二人の人は消えたと
思っていたのに、こいつが知っている!
主馬が本気で、俺を斬る気になったのがわかった。 それもできるだけ早く!
小夜の父、道場主がそれを知ったら
大変なことになる。
二人は裏庭へ行った。
ここなら誰も来ない。
切紙も取って織部など、
主馬は問題にもしていない。
主馬が立ち止まると、織部はさらに歩いた。
「どこへ行く気だ。勝負はここで出来る」
五間の距離をとって織部は振り向いた。
「貴様は小夜さんに責任をとらなかった。
俺がここで責任を取らせてやる」
「面白い!俺と小夜の死は何の関係もない」
織部が刀を抜いて八相に構えた。
「見苦しい!言い訳をするな」
主馬も刀を抜いた。
免許者だけあって、正眼に構えても隙がない。
「キェェェーーーーッ!」
奇声をあげて織部が走り出した。
初めて主馬はそれが示現流とは気づく。
むろん、示現流と対するのは初めてだ。
織部の体を乗せた一撃を、
主馬は体を開いてかわそうとした。
半身の主馬の頭上に織部の
渾身の一刀が降りた。
頭上から顔面半分近くを割られ、
主馬は崩れた。
織部はそのまま血刀を手に裏庭から走り去った。
走りながら、小夜のために涙を流した。
信じてやれなかったことを詫びた。
父の左衛門が起こしていた。
織部は驚いて飛び起きた。
父が自分を起こすなど始めてだ。
「起きろ!小夜さんが死んだ!」
その声に織部は飛び起きた。
「今朝、河に死体で浮いてるのを、
朝早く仕事にでかける町人が発見した」
なぜ、なぜ小夜さんが死ぬんだ!
「奉行所の調べでは、小夜さんの腹には
子供がいた」
織部は唇を噛んだ。
これで全ての謎が解けた。
昨夜あれほど俺に助けてくれ
と言ったのも、奥田主馬を斬ってくれ
と言ったのも!
腹の子供は主馬の子だ!
右門の言葉に惑わされ、彼女を
信じてやらなかった自分を悔やんだ。
織部は着替えると刀を手に家を出た。
「どこへ行く!」と言う父の声に
返事もしなかった。
やることは一つだけ。
これから道場へ行って主馬を斬る!
二人の秘密を知るのは俺だけだ。
主馬は小夜の死で安心して
道場へ出でいるだろう。
小夜の言葉を信じてやらなかった
自分に彼女の死の責任がある。
その責任をこれから果たしてくる。
道場へ行くと騒然としていた。
無理もない道場主の一人娘が
死んだのだ。
やはり主馬は道場へ出ていた。
俺は彼に言った。
「刀を持って外へ出ろ!」
主馬は薄ら笑いをした。
「刀を持ってとは、穏やかじゃないな」
「小夜のことでカタをつける」
その一言で主馬の顔色が変わった。
小夜の死で二人の人は消えたと
思っていたのに、こいつが知っている!
主馬が本気で、俺を斬る気になったのがわかった。 それもできるだけ早く!
小夜の父、道場主がそれを知ったら
大変なことになる。
二人は裏庭へ行った。
ここなら誰も来ない。
切紙も取って織部など、
主馬は問題にもしていない。
主馬が立ち止まると、織部はさらに歩いた。
「どこへ行く気だ。勝負はここで出来る」
五間の距離をとって織部は振り向いた。
「貴様は小夜さんに責任をとらなかった。
俺がここで責任を取らせてやる」
「面白い!俺と小夜の死は何の関係もない」
織部が刀を抜いて八相に構えた。
「見苦しい!言い訳をするな」
主馬も刀を抜いた。
免許者だけあって、正眼に構えても隙がない。
「キェェェーーーーッ!」
奇声をあげて織部が走り出した。
初めて主馬はそれが示現流とは気づく。
むろん、示現流と対するのは初めてだ。
織部の体を乗せた一撃を、
主馬は体を開いてかわそうとした。
半身の主馬の頭上に織部の
渾身の一刀が降りた。
頭上から顔面半分近くを割られ、
主馬は崩れた。
織部はそのまま血刀を手に裏庭から走り去った。
走りながら、小夜のために涙を流した。
信じてやれなかったことを詫びた。
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