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さかなとひつじ
しおりを挟むこんなちっぽけな水槽で
自由に泳げるはずなんかないのにー…
色とりどりの魚や珊瑚たちが来館客の目を奪う、青と大きな水槽の世界。
小学校の遠足ぶりだろうか?
久しぶりに来た水族館は、とても幻想的に見えた。
(こんなに優雅に泳げたら、どんなに気持ちいいんだろ…)
ほぅっと、圧倒的な海の姿に見られていた。
「ねー、聞いてる?あと20分くらいでアシカショーだってさ。せっかく来たんだし観るよね?」
「え?あ…、うん」
自由に泳ぐ巨大なマンタを眺めていると、横から菊池に話しかけられ、ハッと我に返った。
パンフレットを見て次にあるイベントのスケジュールを確認している姿は、はしゃいでいるようにも見える。
『せっかくだから、デートしよっか』
バイト先で水族館のチケットを貰ったから一緒に行こうという誘いだった。
行かないと言えば機嫌が悪くなるのも分かっていたので拒否権などなかったけれど…
本当に、これはどういう風の吹き回しだろうか?
「あれ?ショーとか、あんまし興味ない?」
「いや、好きだよ。アシカ可愛いし」
こうやって菊池と普通の学生のように外へ遊びに行くのは実は初めてで、何かよくないことを企んでいるんじゃないかと怪しんでしまう。
けど予想とは裏腹に、外へ出てからは俺に触れることもなければ一定の距離を置いて接してくる。
『あの人めっちゃかっこよくない?』
『隣の子、友達かなぁ?声かけてみる?』
ヒソヒソと聞こえる会話。確かに俺と菊池は釣り合わない。傍から見れば恋人と呼ぶより"友達"の姿に見えるのが普通だろう。
けど、菊池はそんな会話など気にしていない様子だ。
「日曜日だし混んでるかと思ったら、案外空いてて良かった」
「うん、そうだね…」
なんでいきなり、俺をデートなんか誘ったんだろ。
あの人は、首輪を付けた…平凡なΩが隣にいるのは恥ずかしいからって、周囲に見られたくないって…こんなことをしたことはなかった。
(でも、ダメだ…俺は……)
気分転換にはなるし、外にでたくなかったわけじゃないけど、これをデートと呼ぶものなら
あの人と、一度でいいからしてみたかった…。
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