24 / 28
24 エピローグ
しおりを挟む
すっかり春だというのに、しんしんと雪が舞う社。
人の声など一切ない。ただ静かな神社を根城にしている一匹の狐は、愉快気に口元を歪ませていた。
そうか、そうか
お前はそういう生き方を選ぶのか‥‥ 実に面白い。
「随分と楽しそうですね」
「そうだ。人間とはいつも予想外の行動で私を楽しませてくれる」
ぺろっと目の前の美酒を舐める。
ふん、人間とは本当に器用な生き物だ。先ほどの油揚げも中々のものだった。
「残念ながら貴様の息子は、アレとともにあることを選んだようだぞ―――― 藍之助?」
狐にその名前を呼ばれようと正座し、狐と同じ酒を嗜む初老の男は何も言わない。
「生身で神と対話できる異端の一族。そしてそれが呪われた時貴様達を愛した女神、母大樹が滅びぬように苦肉の策として用意した子宮持ちらよ」
「‥‥天之宇迦」
「呼ぶな、その名前は心底好かん。貴様は息子を普通に育て、普通の人生を歩ませたかったのだろう?子宮持ちを番いに持てば、呪いは次世代へと継続される。藍之介…お前はお前の代で、滅びようとしていたのだろう?」
その問いに、人間の男は酒を飲むだけでなにも言わない。
相変わらず静かで、柔らかい。昔よりもずいぶん小さくなった背中だが――― 人が背負うにはあまりにも大きなものを背負っている。
(先先代かの母大樹も酷なことをしたのぉ)
神々と心を通わせ対話をできる鬼崎の人間は 一部の神から熱烈に愛された。
これが滅びるのは おもしろくない
これが滅びるのは かなしい
これが滅びるのは 勿体ない
どの血族よりも 愛おしい。
――――神達はいずれも身勝手な理由で、いままで彼らの血が絶えぬよう生かした。
「アレは雪路だったか?あの子宮持ちと貴様の利害が一致したからこそ、私は憎まれ役を買って出たというのに……真斗にまで嫌われてしまったではないか?」
ただ一人の、何も持たぬ人の願いや恨みを叶えようなど 神は思わない。
あの時雪路の死を願ったのはもう一人いた.
「数少ない子宮を持つ彼らを巡り、散々骨肉の争いを繰り広げた一族に未来などないでしょう。とっくに滅びておけばよかったのです」
「難儀なものだ」
心底哀れんでの言葉だった。
「今では国に飼われ人を殺し神をも殺す、その罪は私が持っていくつもりでしたが……」
滅びるのであれば、せめて平穏な日々を―――
藍之助が雪路を許したのは、一目見て榊雪路が鬼崎を背負う器になれないと知った上でのことだった。
己の代で鬼崎という一族に終止符を打つつもりだったが計画が狂い始めている。
「そうだった― アレの魂を迎えようとして分かったことだが‥‥
もしも呪いを解呪できる人間がいるとしたなら、どうする?」
まさか…、そんなことがあるものか。
目を見開く人間に 狐はにニヤリと笑った。
(さぁて この行く末を、誰が見届けるのだろう)
――――――――――――――――――
あとがき
ここまで読んでいただきありがとうございました。
思わず続きました
もう少し書きたいお話があります・・が、続きを書くのに時間を頂きます。
いったんこちらの話はここまで。です
次の話がまとまればまた更新再開します
不穏になってしまいましたが、お約束します
雪路くんと真斗さんは一生ずっと 幸せです!!!!
人の声など一切ない。ただ静かな神社を根城にしている一匹の狐は、愉快気に口元を歪ませていた。
そうか、そうか
お前はそういう生き方を選ぶのか‥‥ 実に面白い。
「随分と楽しそうですね」
「そうだ。人間とはいつも予想外の行動で私を楽しませてくれる」
ぺろっと目の前の美酒を舐める。
ふん、人間とは本当に器用な生き物だ。先ほどの油揚げも中々のものだった。
「残念ながら貴様の息子は、アレとともにあることを選んだようだぞ―――― 藍之助?」
狐にその名前を呼ばれようと正座し、狐と同じ酒を嗜む初老の男は何も言わない。
「生身で神と対話できる異端の一族。そしてそれが呪われた時貴様達を愛した女神、母大樹が滅びぬように苦肉の策として用意した子宮持ちらよ」
「‥‥天之宇迦」
「呼ぶな、その名前は心底好かん。貴様は息子を普通に育て、普通の人生を歩ませたかったのだろう?子宮持ちを番いに持てば、呪いは次世代へと継続される。藍之介…お前はお前の代で、滅びようとしていたのだろう?」
その問いに、人間の男は酒を飲むだけでなにも言わない。
相変わらず静かで、柔らかい。昔よりもずいぶん小さくなった背中だが――― 人が背負うにはあまりにも大きなものを背負っている。
(先先代かの母大樹も酷なことをしたのぉ)
神々と心を通わせ対話をできる鬼崎の人間は 一部の神から熱烈に愛された。
これが滅びるのは おもしろくない
これが滅びるのは かなしい
これが滅びるのは 勿体ない
どの血族よりも 愛おしい。
――――神達はいずれも身勝手な理由で、いままで彼らの血が絶えぬよう生かした。
「アレは雪路だったか?あの子宮持ちと貴様の利害が一致したからこそ、私は憎まれ役を買って出たというのに……真斗にまで嫌われてしまったではないか?」
ただ一人の、何も持たぬ人の願いや恨みを叶えようなど 神は思わない。
あの時雪路の死を願ったのはもう一人いた.
「数少ない子宮を持つ彼らを巡り、散々骨肉の争いを繰り広げた一族に未来などないでしょう。とっくに滅びておけばよかったのです」
「難儀なものだ」
心底哀れんでの言葉だった。
「今では国に飼われ人を殺し神をも殺す、その罪は私が持っていくつもりでしたが……」
滅びるのであれば、せめて平穏な日々を―――
藍之助が雪路を許したのは、一目見て榊雪路が鬼崎を背負う器になれないと知った上でのことだった。
己の代で鬼崎という一族に終止符を打つつもりだったが計画が狂い始めている。
「そうだった― アレの魂を迎えようとして分かったことだが‥‥
もしも呪いを解呪できる人間がいるとしたなら、どうする?」
まさか…、そんなことがあるものか。
目を見開く人間に 狐はにニヤリと笑った。
(さぁて この行く末を、誰が見届けるのだろう)
――――――――――――――――――
あとがき
ここまで読んでいただきありがとうございました。
思わず続きました
もう少し書きたいお話があります・・が、続きを書くのに時間を頂きます。
いったんこちらの話はここまで。です
次の話がまとまればまた更新再開します
不穏になってしまいましたが、お約束します
雪路くんと真斗さんは一生ずっと 幸せです!!!!
62
お気に入りに追加
876
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる