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(二章)小ネタ

あったかもしれないやり取り

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①シオウの声





「なんで、俺を一人にしたの」
「――――――」
「ずっと待ってた、待ってたのに…・・俺は、」


「シオウ」

いくら名前を呼んでも手を伸ばしても、聞こえてくるのはシオウの哀しげな声ばかりだ。
どうやら魔石にユリアが仕掛けをしたらしく、時々ゼアロルドだけに聞こえる声が届いた。

「シオウ…」

ただし、石にそっと触れてもぬくもりまでは届けてくれない。ヒヤッとした無機質な冷たさしか感じない。
聖人、神子だと勝手に祭り上げているだけで、彼はこんなにも心が弱くて、ゼアロルドがいなければ…。

(……俺にはその資格がない)

少し前までは当たり前にあった、この両腕の中に彼はいた。
娘が出来たのは予想外だったが、三人で過ごすのも当たり前だった。

「ゼアロンさんに、会いたい」
「俺もだ」

王龍を倒した魂が、どうなるのかは分からない。
一説によると目も当てられないほどに醜い、魔物化するという話もある。
それでも選べるのなら、シオウのそばに還りたいと願う。


「……、っ、ん、」
「!」

この魔石は、稀に声は違うモノを送ってくることもあった。
ごそっと服の擦れる音が聞こえた瞬間、ゼアロルドはなにも聞かぬように、そっと部屋を出た。


(……は?自分で触っただけで…声を?まさか…っ、そんなに敏感でシオウは大丈夫なのか?)


ゼアロルドから全くいらない心配をされていることを、シオウは知らない。






②浮気…? in 死の森


それは二人が魔石でユリア達と通信をしていた頃。

たまに聞こえてくるオズグ、オズの名前だ。
ゼアロルドの大半は移動と道中の討伐で、シオウについては最低限の情報と安否しか確認することが出来なかった。


「その、オズグとは誰だ?」
「あ。俺と同行してくれてたマクミランの魔法使いです」
『そしてママの新しい男ね』
「は?」
「確かにオズグさんは男だけど仲間、友達な?」

というか、さっき真面目にしろってゼアロンさんに叱られたばかりだろ?
ユリアも話ができて嬉しいのも分かるけど…、ん?

「ゼアロンさん?」
「えぇ問題ありません、なにも。決して、私は冷静です」
「え、いや…全然そうは見えないんですが」
「大丈夫です。そうですね、最初にシオウと寝たのも過ごしたのも私ですからね。おかげでユリアという娘まで授かってますので全然平気だ」
「ちょっとゼアロンさん!?!?」

魔石越しでも何言い始めるんですか!?と顔を真っ赤にして慌てふためくシオウ。



(ゼアロン、君は…!)と、悟られない程度に腹を抱えて笑うイーリエと。
(ママが浮気した場合、全力でわたしが守らなきゃ)と、謎の決意をしたユリア。


『私は一体、なにを聞かされているんだ…?』


か細く困惑するオズグの聞こえた。

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