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2章 脇役と不死の王龍

小ネタ:すれ違いはどこまでも~隊長と占い~

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小ネタ
ドキドキ☆運命占い ゼアロルド版
――――――――――――――――




「アレやりたい、やろう!?」

シオウが興味津々げに指を刺したのは「占い」の看板だった。
まだ遊び足りないのか…、しょうがない。とゼアロルドは思ったが、すぐに先ほどシオウが研磨前の魔石を見つめていた事を思い出した。
アレは大人が楽しむものではなく、子供たちにとっての”宝探しゲーム”感覚の一つだ。小さいころ育った村でゼアロルドとイーリエもよくやっていたが、魔石よりもただ綺麗なだけの石ころしかでない。

さらに占いも… 見るからに胡散臭そうな占い師だ。

「シオウ」
「……ダメかな?やっぱり?」
「いや、ダメではないが… 分かったよ。この店で”待機”だ、いいね?」
「はい!」

嬉しそうなシオウの顔に、やはりと思った
シオウは、幼い頃ですら娯楽に興じることが出来なかったのだ。自由になった今、少しでも遊びを堪能してくれればいいとゼアロルドも軽い気持ちだった。




「これは珍しい。認識阻害のフードを着たお兄さん、何を知りたいのでしょう?」
「…………」
「えぇ、ご安心ください!防音魔石の効果により、占いの最中は誰にも聞かれませんので」
「(アルタイル、ロイン、ガルゼはそのままシオウから目を離すな)すまないが、私に構わず好きに話をすすめてくれ。報酬は支払う」
「それはよいのですが…占う内容くらい、聞かせていただけないかしら?金運や恋占いとか」
「仮にも占い師だろう。この状況くらい察してくれ」

なんという無茶ぶりか。
女占い師を見る事をせず、チラチラと露店の外を気にする風変わりな男だが……纏っているオーラが圧倒的に違う。
周囲への警戒を怠ることをしない強い風の加護と、それを使いこなす正体不明の手練れ。


「早くしろ、怪しまれる」


―――――占い師の女は焦っていた、かなり。
店の売れ行きをよくするために始めた魔石探しゲームだが、実はほとんどがクズ石ばかりだ。それも意図的に仕組んでいた。
もちろん当たりなしの魔石探しゲームなどは詐欺罪に問われる。

(まさか通報があって調査に来たの…!?)

この男が言った言葉の意味は、早く口を割れと言うこと!?
まだ確証はないと静かに息を飲む。


「では、定番の恋占いを。気になる子はいらして?」
「(     ) あぁ、すぐそばに」
「その子は… えぇっと貴方よりも年下かしら?貴方もとても魅力的だけどその… お相手様の方は顔や年齢ではなくて、違ったところで魅力溢れるようなタイプの」
「違いない。無防備で危機感が足りない。今まで無事だったのが不思議なくらいだ」
「…………不味いわね」

「行動力は認めるが、やや考えが浅い。それは育った環境のせいかもしれないが」


思わずヒェッと小さな叫び声をあげそうになった占い師、改めて詐欺師。
”―――――この男、まさか私に自首を促している!?”


「え、えぇっと…・ 見えました。貴方とその子の相性は、非常に良くないです」
「―――― なるほど。分かっていたことだ」

やや低い声で、
分かってはいたというくせに、暗く重い声……まるで残念だと言わんばかりだ。

そして、ここで初めて男が占い師を見た。


「…お、お相手の人は、貴方ほど成熟していません。知恵もなく、自身の生き方にも悩んでるのでしょう。一方で貴方は……み、道しるべのような人です。罪な人よ」
「道しるべ?……、釣り合わないとは思っているが、考えたこともない」
「えぇ。本来ならば出会うことすら、ありません」


そう、出会わない
けれど、出会ってしまったのだ。


「……確かに。我々は、育った環境も価値観も宗教すら違う。けれど、――――懸命な姿は美しい。もし、私が道しるべならば……」




「ざ、残念ながら、―――子供がいますので!!」







「は?????」





――――――――――――――――――――



あとがき



はぁ?????

ゼアロンさんは全て無自覚。
お姉さんの詐欺罪については後日、ちゃんと書類送検されました。

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