上 下
38 / 83
(一章)小ネタ

お礼(♡8888ありがとうございました)

しおりを挟む
小ネタ :シオウと酒場



最初の村から移動した一行もついに宿屋と飯屋が充実している町に到着した。
シオウは知らなかったが、この頃には王都にいる騎士団長達とも連絡が取れるようになっていた。さらにここまで来ればマクミラン国からの刺客を警戒する必要もない。

"油断は出来ないがここまでよくやった。しかし王都まではまだまだ遠い。"

軍資金と共にゼアロルドには皆を労うよう許可が降りた。

そして、その夜。
羽目を外しすぎないように念押しをした飯屋兼酒場で酒を解禁した。のだが、


「なんでだよ!?!?」


ただひとり、不満を漏らす者がいた。





シオウは怒っていた、遺憾の意を表していた。
確かにシオウには言葉が分からない。この世界のルールも知らない。
自分は騎士達よりは年下だと思っていたし、自分が仲間だと認められていたところで新参者。故に下っ端だと理解もしている。
けれどこれだけは分かった。


絶対に、彼等はシオウを子供(未成年者)だと思っている。


町を歩くときは誰かが隣にいる、シオウが人混みに紛れると判断したときは手を繋ぐ。
さらに今回!なんでも好きなのを頼んでいいと言われたのに、皆んなが飲んでいるビールを指差せばノーときた。
今日までは冗談だと思っていたが、いい加減察した。

この世界には日本…というか地球と似た文化、価値観や道具と多くのものが存在している。もしかすると一種のパラレルワールドなのかもしれない。
この酒場のメニュー表もいい例だ。おそらく上が酒で下がジュース類(ノンアルコール)だ。
だってアルコール欄を指差せば首を振られてしまうのに、下と他メニューはなんでもオッケーが出るんだ。一桁多そうな金額のメニューでも。



(これは妥協しちゃダメだ!絶対に)

そこまでして酒が飲みたいわけではない。
―――鯖を読むなんて、恥ずかしすぎて無理。
さらに未成年者と同じ扱いを受けるなんて、大人としていかがなものか!?俺はいつの時代のアイドルか!?

「俺のこと、子供扱いしてますよね!?」

俺は20歳を超えた大人だ。(彼等がはるかに長命な人種でない限り)。


一方的でゼアロルドや一部の騎士は困っていた。
が、「そんなに飲みたいなら一口飲むか?」なんてニュアンスでジョッキをシオウに見せればゼアロルドとルカルが睨む。
しかし、それがシオウは不服で嫌なのだろう。不貞腐れてしまう。


「シオウ。これも美味しいですよ」
「俺は、あっちがいいです」
「シオウ」
「同じもの。俺は、飲む、飲むです」

言葉は拙いが、癇癪を起こさず意志を崩さない。
すると場を見兼ねたのか、店員がゼアロルドに話しかけた。

「!」


そして――――
ドンっとシオウの前に出された全員と同じ琥珀色のビール。


「ありがとうございます!」


考慮されたのか置かれたジョッキは一回り小さいが、シオウにはそれで十分。なにせここまで乗り越えてこれたんだ、やはり日本人特有の「空気読んで察してくれよ」の訴えは共通であった。

やっと伝わった――――!!

改めて乾杯をして、みんなで酒場と料理を堪能する。

誤解が解けてよかったと安心するシオウと


【実は、最近飲めない冒険者用に酒に似せたジュースを仕入れているのですがどうですか?】。



この異世界にもノンアルビール類が存在することを知らないシオウ。




彼らの誤解はまだまだ続く。







しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います

たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか? そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。 ほのぼのまったり進行です。 他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

異世界転生して病んじゃったコの話

るて
BL
突然ですが、僕、異世界転生しちゃったみたいです。 これからどうしよう… あれ、僕嫌われてる…? あ、れ…? もう、わかんないや。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 異世界転生して、病んじゃったコの話 嫌われ→総愛され 性癖バンバン入れるので、ごちゃごちゃするかも…

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

処理中です...