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一章:性奴隷になりませんか?

異世界はうるさい

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時々、繰り返して自分に言い聞かすことがある。
それが自分の経歴だなんて不思議な話だよな ―――。




俺の名前は、本庄 万里ほんじょう ばんり
生まれは日本のS県。それも田んぼと山に囲まれた田舎の中でも"ど"のつく田舎だったけど、それも高校卒業するまでの話だ。しがない広告会社でも勤務地は高校ん頃から憧れていた都会だ、俺は親を説得して上京することが出来た。
不慣れな公共交通機関に人混みと情報量の多さには大いに戸惑った。

それでも人間って環境に適応してくんだなぁ。
数年後も経てば今日も営業マンとして飛び込みの営業に向かっていた。


――― 穴に落ちるまでは。


なんの穴か??それは俺が一番知りたい。

取引先から会社に戻る途中、いきなり足下にマンホールくらいの穴が現れて不回避。あーれー…と、不思議の国のアリスのごとく俺は真っ逆さまに落ちていった。


そして、目が覚めたとき俺はーー…




「ただいま戻りやした!」
「はやく風呂、いや酒が飲みてぇな」
「はは確かに。けど今回は初心者用ダンジョンにしては珍しいレア素材が手に入ったな」

大声をあげながら一体此処はどこのドーム球場ですか?ってくらい広い地下へと戻ってきた男達。
右から順にサラリーマンならば一発アウトをくらうだろう明るい茶色に、青、ピンクの頭髪。日本人とは馴染みのない瞳の色ときた。
さらに180cmは前後ありそうな高身長に負けないくらい鍛えられた筋肉達はボディビルダー並みだ。

…は?ボディビルダーに失礼だわ。
腕どころか顔面にまで刺青いれてる時点でカタギじゃない、見た目の治安が悪すぎる。
RPGもしくはハリウッド映画にでてくる蛮族のような格好をした男達は紛れもなく、この洞窟を根城にしている盗賊団だった。



(そもそも日本人なんてどこにもいないんだろうけどさ)


そう。俺が目覚めた場所は、地球上のどこでもなかった。
なんの冗談か、神の悪戯か?


俺の身に降りかかったのは、まさかの異世界転生だった。


定番の神様からの懇切丁寧なご挨拶やパンフレットなどはなく、当時14・15歳くらいの少年の魂と溶け合って「俺」という一人の存在になった。
万里の思い出は前世の記憶と呼ぶべきなんだろう、だから乗っ取ったわけではない(はずだ)。
まぁ人生経験の差か日本にいた万里の記憶や影響が強いけどさ、今の…少年だったころの記憶や価値観だって存在している。

だけど正直前世なんて… なんのメリットもない。


(本当はニホンなんて宇宙のどこにもない。前世なんて俺の空想だって、俺自身にも証明できねぇしなぁ)

ごりごりのファンタジーでも前世を語るなど狂人だ。周りから頭がおかしいと思われるならまだしも、転生する国を間違えたなら俺の命はなかっただろう。それが分かっていたから今まで口をつぐんでいた。

思ってたんと違う!!

平和に暮らしてた平凡なサラリーマンが前世を思い出したところで生かせる知恵なんてない。役に立たない知識や経験を持つくらいなら思い出さない方がいくらか幸せだったよ。


「あの。カシラ??」
「あぁ、また考え事ですか」
「はー??ちょっと旦那!聞こえてますか!?」


あ… あぁ、ごめんごめん。無視は駄目だよな。



――――そして、ようやく男はゆっくりと顔をあげて部下達を見据える。

季節問わず霧が深く、"迷いの森"と恐れられる深い森を拠点とする盗賊団【赤の獣】。



ぴくっと反応した彼らの”王”が、声を出すまで誰もが黙る。



希少なホワイトウルフの毛皮を纏い

血のように赤い長髪に狼のように鋭い金色の瞳を持った男。

冷ややかに凍りついた眼圧。



まるで地を這うような低い声で、




「うるせぇな、聞こえてんだよ」





頭領 バンリ。

仲間すら射殺すような鋭い眼に全員がゴクリと息を飲んだが、そんな彼らを見てバンリが思うことは一つ。





(全員、顔がうるさい)







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