上 下
24 / 54
逃げたいの番外編〜

番外編 VS 高級食材

しおりを挟む
番外編 VS 高級食材



先生が、「今日は親戚からいいもの貰ったよ」と持って帰ってきたのは四角形の発砲シチロール。ほんのりと磯のにおいがする箱の中の食材をみた瞬間、俺は驚いた。

「わっ、牡蠣だ!」

――――それも殻付きときた。
こんな上等なもの俺はTVでしか見たことがない。

「生でも美味しいけど唯君も食べてみる?」
「え、いいの?」
「勿論。下処理するから待ってて」

スーパーで値引き品を見ても手に取れない牡蠣!よく海のミルクって聞くけど本当にそんな味がするのかな?


「す、すごい…」

キラキラした牡蠣が食卓に並ぶだけで、まるで俺の作った料理が料亭でつくられたみたいに豪華に見える。
さぁて!いざ、実食だ。

「………!」
「どう?」
「お、おいしい…」
「ほんと?気に入ってもらえたなら嬉しいよ。久しぶりに食べたけどここまで大粒だと食べ応えがあっていいね」
「うん。先生の親戚にも感謝しないとだな」

先生は笑うけど

(―――どうしよう、苦手だ…)

内心はだらだらと汗をかいていた。
なんてゆうか独特な磯臭さがある。食感も独特で、飲み込むタイミングが分からない…。
だって先生と違って俺はこんな高級食材を食べたことがないんだ、不味いよりも食べ慣れない味に困惑していた。

(せめて熱々の米でごまかして・… いや、でも…そんな食べ方が許されていいのか?)

できるなら茹でたい、火を通してポン酢とか…?あぁけど生で食べれる新鮮な食材にそんなことしちゃダメだ。
欲張って何個でも食べる!と言った自分に激しく後悔していた。


「あのさ、先生…」
「ごめん。やっぱり唯君は苦手な味だった?」
「やっぱりって、バレてた?」
「最初の表情でなんとなくね」
「うっ…、せっかく貰ってきたものなのに…。俺、牡蠣って料理したことないから何にしたらいいのかもわかんねぇし…」

どうしよう… 今後一生食べられるかわかんない高級品なのに…。
それも人の好意だ。美味しく食べてあげられないことへの罪悪感と申し訳なさで凹んでしまう。

「なら、明日は唯君に代わって俺がカキフライでも作ろうかな」
「えっ?先生が…料理すんの?」
「あれ?そんなに心配かい?大丈夫だよ、ちゃんとレシピ通りに作るってば」

君にも好き嫌いがあってもいいじゃないか、ちなみに俺はトマトが嫌いだよ。と先生は俺を慰めてくれた。

「それは流石にウソだろ?一昨日のトマトスパゲッティ、バクバク食っておかわりまでした癖に」
「それは君が作ったものを食べないって選択肢がないからだ。実際、美味しかったよ」
「い、意味わかんねぇよ…」
「俺はそうゆう人間だよ」

笑われると照れ臭くなってなんも言えなくなった。



そして翌日。
先生が有言実行したカキフライの美味しさに感動して、おいしいおいしい!と喜び過ぎた結果
とても気をよくした先生が、ネット通販で色んな店のカキフライを大量に取り寄せてきた。


「も、もういらない…」


一生分のカキフライを食べた俺は本当に牡蠣が嫌いになりそうになった。








end



新野さんは唯君に色んなものを食べさせたいし、唯君が美味しいと喜ぶなら毎日食べてもらいたい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元会計には首輪がついている

笹坂寧
BL
 【帝華学園】の生徒会会計を務め、無事卒業した俺。  こんな恐ろしい学園とっとと離れてやる、とばかりに一般入試を受けて遠く遠くの公立高校に入学し、無事、魔の学園から逃げ果すことが出来た。  卒業式から入学式前日まで、誘拐やらなんやらされて無理くり連れ戻されでもしないか戦々恐々としながら前後左右全ての気配を探って生き抜いた毎日が今では懐かしい。  俺は無事高校に入学を果たし、無事毎日登学して講義を受け、無事部活に入って友人を作り、無事彼女まで手に入れることが出来たのだ。    なのに。 「逃げられると思ったか?颯夏」 「ーーな、んで」  目の前に立つ恐ろしい男を前にして、こうも身体が動かないなんて。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

次期当主に激重執着される俺

勹呉
BL
「いいかジーク、何度も言うが――今夜も絶対に街へ降りるな。兄ちゃんとの約束だ」 王宮から離れた薄暗い場所で、ジークは兄と暮らしていた。新聞売りとして働きに出る兄を見送り、いつも一人で留守番に徹する。 しかし、そんなある日。兄の忘れ物に気づいたジークは、約束を破り外へ出てしまう。 「コイツを王宮へ連れて帰れ。今すぐに」 そんなジークを待っていたのは――次期当主と謳われる男だった。 王宮で巻き起こる激重執着ストーリーを、どうぞお楽しみください。

俺の番が変態で狂愛過ぎる

moca
BL
御曹司鬼畜ドS‪なα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!! ほぼエロです!!気をつけてください!! ※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!! ※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️ 初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀

親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺

toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染) ※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。 pixivでも同タイトルで投稿しています。 https://www.pixiv.net/users/3179376 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/98346398

大好きな幼馴染は僕の親友が欲しい

月夜の晩に
BL
平凡なオメガ、飛鳥。 ずっと片想いしてきたアルファの幼馴染・慶太は、飛鳥の親友・咲也が好きで・・。 それぞれの片想いの行方は? ◆メルマガ https://tsukiyo-novel.com/2022/02/26/magazine/

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編連載中】

晦リリ
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

処理中です...