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【番いのαから逃げたい話】
運命の君へ①(新野視点)
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(新野視点)
「唯…」
やや瞼は腫れぼったいがその表情にあった悲壮感は消えていた。いまは空腹が満たされただけでなく、同じ空間に番いがいることで安心できるのか… ベッドの上ですやすやと気持ち良さそうに眠っている。
『俊哉さん、ここにいて』
言われなくても伝わる気配。発情期が近いらしい唯はなるだけ体力を温存しようとしているし、それがいつ来てもいいよう傍にいたいと思うのはαの性だ。
平和で誰が見ても円満な"二人の番い"だ、さらに新野の微笑んだ視線の先にはキラッと輝く指輪があった。
「せっかくのペアリングなのに」
シンプルな形になってしまったと若干の後悔はあるものの、受け取る側(唯)のことを考えれば丁度いいデザインだったと思う。高価過ぎても唯は受け取らない、さらに新野が同じ指輪をつけていたなら指輪を壁に投げつけて癇癪を起こしていたに違いない。
―――『婚約者がいるのになに考えてんだよ!』。
婚約者の方が新野に優先されるべきだと考えている唯は顔を真っ赤にしていくらでも新野を罵倒したはずだ。
「わがままで困った番いだ」
唯の頬を撫でれば、愛おしさと同時に憎しみにも似た感情が顔を覗かせる。それは自分を頼らなかったことや抑制剤欲しさに"他の男"に触れさせたことへの怒りではなく、思っていた以上に唯が頑なに新野の存在を、”番い”を拒む事への苛立ちだ。
『ごめんなさい、先生…』
罪悪感につけ込むことはできても、唯は自分の存在が新野の幸せを奪ってしまうと本気で思い込み離れたがっている。健気でいじらしい性格も美点と思うが、どれだけ新野が説得しても唯自身の中で繰り広げられる押し問答が面倒で厄介、そして頑固なのだ。
ついつい長いため息を出してしまったが、それも近い将来を想えば苦でもない。
(俺だってこれくらいじゃ諦めないよ)
そもそも君は何も知らないのだから、今の現実を疑う事さえできない。
誰もいない教室で彼の抑制剤を誘発剤にすり替えた愚かな生徒がいたこと
その様子を目撃しておきながら、見逃した教師がいたことも。
助けに行ったなど言い訳をする気はない。
甘くて切ないαを誘うフェロモンを嗅いだ瞬間、本能に抗うのをやめΩの体を貪るαになることを選んだのだから。
『やっぱり君が、運命だった』
もう一度触れたかった匂いを前に歓喜の声が漏れ、全身が沸き立った。
誘われるがまま押し倒して、既に裸同然になっていた唯の体は犯される事を待ち侘びていたようだった。
―――――いや、耐えきれず待っていたのだろう。
まさしく案ずるより産むが易しだの、鶏が先か卵が先かの問題だ。これがαの幸せなら、回りくどいやり方で満足しようとしていた俺は馬鹿だったと思ったほどだ。
「やめ…ッ、…がっこ、っ…」
唯が、"学校"と泣いたところで開いていた口を抑えた。
これほどの忍耐力を試されるのは勘弁して欲しいが、番い契約は、Ωの一度っきりだ。学校なんて場所が彼の心の傷になるのも許せないほど独占欲が勝った。
「君がΩでよかった、生まれてきてくれてありがとう」
耐え兼ねて気絶した唯を自分の家へと連れて帰ると、今度こそ本能に身を任せた。
そして本心からでた言葉の数々は、まさに唯が望んでいたものだった。
【…っ、噛んで・…】。
嬉し涙を浮かべて、蕩けきった表情でαに強請る姿は実に淫靡で美しかった。
「唯…」
やや瞼は腫れぼったいがその表情にあった悲壮感は消えていた。いまは空腹が満たされただけでなく、同じ空間に番いがいることで安心できるのか… ベッドの上ですやすやと気持ち良さそうに眠っている。
『俊哉さん、ここにいて』
言われなくても伝わる気配。発情期が近いらしい唯はなるだけ体力を温存しようとしているし、それがいつ来てもいいよう傍にいたいと思うのはαの性だ。
平和で誰が見ても円満な"二人の番い"だ、さらに新野の微笑んだ視線の先にはキラッと輝く指輪があった。
「せっかくのペアリングなのに」
シンプルな形になってしまったと若干の後悔はあるものの、受け取る側(唯)のことを考えれば丁度いいデザインだったと思う。高価過ぎても唯は受け取らない、さらに新野が同じ指輪をつけていたなら指輪を壁に投げつけて癇癪を起こしていたに違いない。
―――『婚約者がいるのになに考えてんだよ!』。
婚約者の方が新野に優先されるべきだと考えている唯は顔を真っ赤にしていくらでも新野を罵倒したはずだ。
「わがままで困った番いだ」
唯の頬を撫でれば、愛おしさと同時に憎しみにも似た感情が顔を覗かせる。それは自分を頼らなかったことや抑制剤欲しさに"他の男"に触れさせたことへの怒りではなく、思っていた以上に唯が頑なに新野の存在を、”番い”を拒む事への苛立ちだ。
『ごめんなさい、先生…』
罪悪感につけ込むことはできても、唯は自分の存在が新野の幸せを奪ってしまうと本気で思い込み離れたがっている。健気でいじらしい性格も美点と思うが、どれだけ新野が説得しても唯自身の中で繰り広げられる押し問答が面倒で厄介、そして頑固なのだ。
ついつい長いため息を出してしまったが、それも近い将来を想えば苦でもない。
(俺だってこれくらいじゃ諦めないよ)
そもそも君は何も知らないのだから、今の現実を疑う事さえできない。
誰もいない教室で彼の抑制剤を誘発剤にすり替えた愚かな生徒がいたこと
その様子を目撃しておきながら、見逃した教師がいたことも。
助けに行ったなど言い訳をする気はない。
甘くて切ないαを誘うフェロモンを嗅いだ瞬間、本能に抗うのをやめΩの体を貪るαになることを選んだのだから。
『やっぱり君が、運命だった』
もう一度触れたかった匂いを前に歓喜の声が漏れ、全身が沸き立った。
誘われるがまま押し倒して、既に裸同然になっていた唯の体は犯される事を待ち侘びていたようだった。
―――――いや、耐えきれず待っていたのだろう。
まさしく案ずるより産むが易しだの、鶏が先か卵が先かの問題だ。これがαの幸せなら、回りくどいやり方で満足しようとしていた俺は馬鹿だったと思ったほどだ。
「やめ…ッ、…がっこ、っ…」
唯が、"学校"と泣いたところで開いていた口を抑えた。
これほどの忍耐力を試されるのは勘弁して欲しいが、番い契約は、Ωの一度っきりだ。学校なんて場所が彼の心の傷になるのも許せないほど独占欲が勝った。
「君がΩでよかった、生まれてきてくれてありがとう」
耐え兼ねて気絶した唯を自分の家へと連れて帰ると、今度こそ本能に身を任せた。
そして本心からでた言葉の数々は、まさに唯が望んでいたものだった。
【…っ、噛んで・…】。
嬉し涙を浮かべて、蕩けきった表情でαに強請る姿は実に淫靡で美しかった。
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