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830. ジェルミラ領進撃22
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誠一たちが魔物たちと激戦を繰り広げている時、
籠城していたジェミロ・ジェルミラの軍が、
城門を打って出てきた。
その軍は、王国軍の先鋒隊を率いるダグリー伯爵の軍と
正面から激突した。
後方に控えるティモフェイは敵の策を読み切っていた。
否、居並ぶ貴族、将軍たちの誰もが敵軍の意図を理解していた。
城と後方から挟撃して、殲滅するつもりであった。
後方で激しい戦闘が行われていることは、
風に乗り運ばれてくる怒声、叫び声、臭い、狂気で
本陣に待機するどの将も感じていた。
「父上、後方が抜かれると厄介なことになります。
何かしらの手を打たねば、兵が動揺します」
ティモフェイの言っていることは至極、
真っ当であり、この場に居並ぶ将兵一同が
感じていることであった。
ストラッツェール侯爵家の現当主ドルレアンの様子には
全く動揺する様子が無かった。
この男が周囲を一瞥すると、彼等の動揺、
不安は一瞬にして収まった。
「アルフレート・フォン・エスターライヒに伝令を出す」
侯爵家近衛兵団の一名が片膝をつき、ドレルアンの言葉を待った。
「その場を死守しろ。一兵たりとも我が軍の後方に侵入を許すな」
ざわついた。しかし、そのざわめきは一瞬だった。
ドレルアンの顔には、凄みのある笑みが浮かんでいた。
伝令を受け賜わった騎士は一礼するとすぐさま
この場を去った。
「さて、我々は、城門をわざわざ開門した
無能な敵の殲滅を開始しようではないか」
ドレルアン率いる本隊が敵城に向けて、行軍を開始した。
ダグリーの率いる軍は、敵軍に押され気味であった。
兵数、勢いで敵軍を圧倒したのはほんの一瞬であった。
500名に満たない敵兵は、一人一人が
一騎当千の強者のようだった。
敵兵の一振りが味方の兵1人を戦闘不能に
追い込んでいた。
「これは一体、どういう事だ」
ダグリーの面前に広がる光景は、
全く受け入れがたいものであった。
敵兵は分厚い鎧を身に纏った重騎士だったが、
軽やかに動き、バスターソードのように分厚く長い剣を
軽々と片手で振るい、楕円形の大型の盾を
悠然と片手で扱っていた。
真っ当な訓練で得た力でないことは明白であった。
魔術もしくは薬による身体強化でしかなしえない力であった。
ダグリーの元へ次々と名のある将、
貴族の討ち死にの報が伝えられた。
「ダグリー様、本隊が動き始めたようです」
側近の一人からそう伝えられた。
「ふっふざけるなー」
ダグリーは絶叫した。
誉ある先鋒を任されたが、惨めにも撃破され、
その上、派閥の違うドレルアンに命を救われるとなれば、
ダグリーに立つ瀬はなかった。
故に再び絶叫した。
しかし、崩れ、混乱する隊の惨状に拍車をかけるだけであった。
「一歩たりとも退くこと許さず。一歩でも前進せよ。
王国の名に恥じぬ性根をここに示せ。突撃だ、突撃しろ」
ダグリーに返ってくる声は、戦士の雄叫びでなく、
兵士の悲鳴、怒号であった。
籠城していたジェミロ・ジェルミラの軍が、
城門を打って出てきた。
その軍は、王国軍の先鋒隊を率いるダグリー伯爵の軍と
正面から激突した。
後方に控えるティモフェイは敵の策を読み切っていた。
否、居並ぶ貴族、将軍たちの誰もが敵軍の意図を理解していた。
城と後方から挟撃して、殲滅するつもりであった。
後方で激しい戦闘が行われていることは、
風に乗り運ばれてくる怒声、叫び声、臭い、狂気で
本陣に待機するどの将も感じていた。
「父上、後方が抜かれると厄介なことになります。
何かしらの手を打たねば、兵が動揺します」
ティモフェイの言っていることは至極、
真っ当であり、この場に居並ぶ将兵一同が
感じていることであった。
ストラッツェール侯爵家の現当主ドルレアンの様子には
全く動揺する様子が無かった。
この男が周囲を一瞥すると、彼等の動揺、
不安は一瞬にして収まった。
「アルフレート・フォン・エスターライヒに伝令を出す」
侯爵家近衛兵団の一名が片膝をつき、ドレルアンの言葉を待った。
「その場を死守しろ。一兵たりとも我が軍の後方に侵入を許すな」
ざわついた。しかし、そのざわめきは一瞬だった。
ドレルアンの顔には、凄みのある笑みが浮かんでいた。
伝令を受け賜わった騎士は一礼するとすぐさま
この場を去った。
「さて、我々は、城門をわざわざ開門した
無能な敵の殲滅を開始しようではないか」
ドレルアン率いる本隊が敵城に向けて、行軍を開始した。
ダグリーの率いる軍は、敵軍に押され気味であった。
兵数、勢いで敵軍を圧倒したのはほんの一瞬であった。
500名に満たない敵兵は、一人一人が
一騎当千の強者のようだった。
敵兵の一振りが味方の兵1人を戦闘不能に
追い込んでいた。
「これは一体、どういう事だ」
ダグリーの面前に広がる光景は、
全く受け入れがたいものであった。
敵兵は分厚い鎧を身に纏った重騎士だったが、
軽やかに動き、バスターソードのように分厚く長い剣を
軽々と片手で振るい、楕円形の大型の盾を
悠然と片手で扱っていた。
真っ当な訓練で得た力でないことは明白であった。
魔術もしくは薬による身体強化でしかなしえない力であった。
ダグリーの元へ次々と名のある将、
貴族の討ち死にの報が伝えられた。
「ダグリー様、本隊が動き始めたようです」
側近の一人からそう伝えられた。
「ふっふざけるなー」
ダグリーは絶叫した。
誉ある先鋒を任されたが、惨めにも撃破され、
その上、派閥の違うドレルアンに命を救われるとなれば、
ダグリーに立つ瀬はなかった。
故に再び絶叫した。
しかし、崩れ、混乱する隊の惨状に拍車をかけるだけであった。
「一歩たりとも退くこと許さず。一歩でも前進せよ。
王国の名に恥じぬ性根をここに示せ。突撃だ、突撃しろ」
ダグリーに返ってくる声は、戦士の雄叫びでなく、
兵士の悲鳴、怒号であった。
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