839 / 872
829. ジェルミラ領進撃21
しおりを挟む
「これで仕上げだ。ファイアボール、エアパレット!
アル、そろそろ、メイスで叩き倒せ」
若干、苦手とする風系の魔術を織り交ぜながら、
ヴェルがトレントへの攻撃を重ねた。
トレントの身体が大きく左右に振れた。
誠一の残影が揺らいだ。その残影を他者が認識したとき、
既に誠一はトレントの懐深くにいた。
「全てを打ち砕け、破砕棍」
両腕で握られた7面メイスが細くなっている
トレントの幹に叩きつけられた。
トレントは折れて、地面に叩きつけられた。
しかし、死んだわけでなく、枝が蠢いていた。
幹を刈り取られた根は、不規則に動き回っていたが、
次第に動かなくなった。
「おいおい、アル、これってどうすりゃいいんだよ」
「さっさあ。そのうち、腐り果てるんじゃないかな」
樹液の様な液体を折れた部分から流すトレント。
それを見てヴェルがそこへ魔術を放った。
「全てを焼切れ―ファイアスライサー」
「枝が誰かを襲うかもしれないしね、処置しておくかな。
踊れ、風の刃!エアスライサー」
誠一の放った魔術が蠢くトレントの枝を斬り刻んだ。
そのうち、トレントはピクリとも動かなくなった。
翼を失い空へ逃げる事の出来なくなかった悪魔と
アミラ、サリナは対峙していた。
「アミラ、一応、言っておくけど、
あの魔物に致命傷を与えるような強烈な技は
持ち合わせていないよ」
「ええ、わかっているです。
あの魔物の注意を引きつけるです。
そうすれば私の技でも当たるです」
サリナは軽く頷くと両手に短剣を握り、
悪魔の後方へ回る素振りをした。
「小賢しい」
悪魔は三叉槍を振り回し、サリナの動きを牽制した。
たまらずサリナは短剣を投擲した。
しかし、短剣は弾かれて、悪魔の皮膚を傷つける事はなかった。
表情を読み取ることが難しい悪魔の顔に喜色が
浮かんだように二人に映った。
対照的に愕然とした表情のサリナだった。
悪魔はアミラの方へ向き直った。
全く相手にされていないサリナは、容易に
悪魔の背後を取ることができた。
そして、再度、短剣を投擲した。
無論、悪魔を傷つけることなく、地面に落ちた。
アミラと悪魔は睨み合ったまま、動かなかった。
お互いに出方を探っているようであった。
痺れを切らしたアミラが動いた。
「拳に宿れ、竜の力。一撃必殺、竜撃破!」
アミラは一気に悪魔との距離を詰めた。
その速度は目を見張るものであったが、
悪魔を動揺させるには至らなかった。
「ぎゃああ」
突然、悪魔が叫んだ。
その直後、アミラの一撃を腹部に悪魔は受けた。
腹部の皮と肉が削がれていた。
「ぐぎゃああ」
断末魔の叫びをあげる悪魔。
翼の削ぎ落された背中の傷口には
短刀が突き刺さっていた。
その背中は、遠目からでも見える程に帯電していた。
「ふう、よく見てたよね」
「はい、見てたです。
いつもひねた表情のサリナが愕然としていたですが、
一瞬、にやりとしたです」
サリナには、いささか気になる表現であったが、
ここは戦場であった。
些細な事をきにするより、素早く次の行動に移った。
悪魔の背中を黒焦げにした短刀を引き抜き、
もう一つの短刀で魔石を抉りだした。
アミラは悪魔の死体に全く興味を示さず、
その視線はヴェルの方へ向かっていた。
「流石に特異種の魔石は貴重でしょ。
アミラ、先に彼らに合流しても大丈夫」
アミラの顔つきを見ていると
何となく死体を漁る自分が惨めになり、
サリナは弁解がましく言った。
「いえ大丈夫です。
それより貴重な部位を剥ぎ取るです。
サリナの方がそれは手際よくできるはず。
私は周囲を警戒します」
アミラに気を使われていると感じたが、
アミラの言い分は最もだったので
言い返すことなくサリナは、作業のペースを上げた。
アル、そろそろ、メイスで叩き倒せ」
若干、苦手とする風系の魔術を織り交ぜながら、
ヴェルがトレントへの攻撃を重ねた。
トレントの身体が大きく左右に振れた。
誠一の残影が揺らいだ。その残影を他者が認識したとき、
既に誠一はトレントの懐深くにいた。
「全てを打ち砕け、破砕棍」
両腕で握られた7面メイスが細くなっている
トレントの幹に叩きつけられた。
トレントは折れて、地面に叩きつけられた。
しかし、死んだわけでなく、枝が蠢いていた。
幹を刈り取られた根は、不規則に動き回っていたが、
次第に動かなくなった。
「おいおい、アル、これってどうすりゃいいんだよ」
「さっさあ。そのうち、腐り果てるんじゃないかな」
樹液の様な液体を折れた部分から流すトレント。
それを見てヴェルがそこへ魔術を放った。
「全てを焼切れ―ファイアスライサー」
「枝が誰かを襲うかもしれないしね、処置しておくかな。
踊れ、風の刃!エアスライサー」
誠一の放った魔術が蠢くトレントの枝を斬り刻んだ。
そのうち、トレントはピクリとも動かなくなった。
翼を失い空へ逃げる事の出来なくなかった悪魔と
アミラ、サリナは対峙していた。
「アミラ、一応、言っておくけど、
あの魔物に致命傷を与えるような強烈な技は
持ち合わせていないよ」
「ええ、わかっているです。
あの魔物の注意を引きつけるです。
そうすれば私の技でも当たるです」
サリナは軽く頷くと両手に短剣を握り、
悪魔の後方へ回る素振りをした。
「小賢しい」
悪魔は三叉槍を振り回し、サリナの動きを牽制した。
たまらずサリナは短剣を投擲した。
しかし、短剣は弾かれて、悪魔の皮膚を傷つける事はなかった。
表情を読み取ることが難しい悪魔の顔に喜色が
浮かんだように二人に映った。
対照的に愕然とした表情のサリナだった。
悪魔はアミラの方へ向き直った。
全く相手にされていないサリナは、容易に
悪魔の背後を取ることができた。
そして、再度、短剣を投擲した。
無論、悪魔を傷つけることなく、地面に落ちた。
アミラと悪魔は睨み合ったまま、動かなかった。
お互いに出方を探っているようであった。
痺れを切らしたアミラが動いた。
「拳に宿れ、竜の力。一撃必殺、竜撃破!」
アミラは一気に悪魔との距離を詰めた。
その速度は目を見張るものであったが、
悪魔を動揺させるには至らなかった。
「ぎゃああ」
突然、悪魔が叫んだ。
その直後、アミラの一撃を腹部に悪魔は受けた。
腹部の皮と肉が削がれていた。
「ぐぎゃああ」
断末魔の叫びをあげる悪魔。
翼の削ぎ落された背中の傷口には
短刀が突き刺さっていた。
その背中は、遠目からでも見える程に帯電していた。
「ふう、よく見てたよね」
「はい、見てたです。
いつもひねた表情のサリナが愕然としていたですが、
一瞬、にやりとしたです」
サリナには、いささか気になる表現であったが、
ここは戦場であった。
些細な事をきにするより、素早く次の行動に移った。
悪魔の背中を黒焦げにした短刀を引き抜き、
もう一つの短刀で魔石を抉りだした。
アミラは悪魔の死体に全く興味を示さず、
その視線はヴェルの方へ向かっていた。
「流石に特異種の魔石は貴重でしょ。
アミラ、先に彼らに合流しても大丈夫」
アミラの顔つきを見ていると
何となく死体を漁る自分が惨めになり、
サリナは弁解がましく言った。
「いえ大丈夫です。
それより貴重な部位を剥ぎ取るです。
サリナの方がそれは手際よくできるはず。
私は周囲を警戒します」
アミラに気を使われていると感じたが、
アミラの言い分は最もだったので
言い返すことなくサリナは、作業のペースを上げた。
0
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説
異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
リケジョの知識で異世界を楽しく暮らしたい
とも
ファンタジー
私、遠藤杏奈 20歳。
某私立大学 理工学部の3年生。
そんなリケジョの卵だったんだけど、バイトに行く途中、交通事故に巻き込まれて…
…あれ、天国で目が覚めたと思ったのに、違うってどういうこと?
異世界転生?なにそれ?美味しいの?
元の世界には戻れないっていうし、どうやら転生者の先輩もいるそうだから、仕方がないので開き直って楽しく生きる方法を考えよう。
そんな杏奈がのんびりまったり、異世界ライフを楽しむお話。
神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる