832 / 872
822. ジェルミラ領進撃14
しおりを挟む
ラムデールとファブリッツィオは、
勝手気儘に動き出した誠一たちに遅れた。
「ラムデール、どうする?」
近寄って来た小鬼を斬り倒すと
ファブリッツィオは、誠一たちの方へ目を向けた。
「難敵はアルフレートたちに任せますか。
将なくば兵もどう動いていいか困るでしょう」
ラムデールはため息をつくでもなく
淡々と兵士たちを指揮し始めた。
「それもそうだな。
それにしてもアルフレートの野郎、
リーダーならしっかりと指示しやがれよな。
俺は混乱している後方へ向かう。
ここは任せるぞ」
ファブリッツィオは怒号と悲鳴の上がる後方へ
向かって走り出した。
ラムデールは、2,3匹の小鬼を斬り倒すと、
兵士たちに向かって叫んだ。
「落ち着け!大した魔物はいない。
難敵は我らがリーダーのアルフレートが倒す。
敵は知性のない魔物だ。策など持ち合わせていない。
目の前の敵に集中しろ!」
王都で雇った幾人かの気の利いた傭兵たちが
ラムデールに合わせて雄叫びを上げると、
軍の混乱は次第に落ち着き始め、魔物の大軍を押し返し始めた。
ジェミロの居城の前に軍を展開するドレルアンや
ティモフェイも誠一たち後方の混乱に気が付いた。
しかし、積極的に動く様子はなかった。
「父上、底の浅い策ではありますが、いかがいたしますか?」
城外と城内から王国軍を挟撃する意図がありありと
王国軍の諸将にはわかった。
ティモフェイの発言にドレルアンの反応は鈍かった。
「如何にとは?」
聞き返されたティモフェイは鼻白んだ。
ドレルアンはティモフェイを一瞥すると、城壁の方を見つめた。
「ダグリー伯爵を大将、メルディアン子爵を副将として、
両翼をヘンリッキ男爵、エリアス男爵が指揮せよ。
これよりジェルミラ家の居城を落す」
ストラッツェール家の派閥に属さない貴族たちが
攻城戦の先陣をドレルアンより任された。
ここまでの南方戦役ではあまり目立った活躍はなく、
他の貴族たちの後塵を拝していた。
そのため、抜擢された諸将はこの戦功をあげる機会に興奮した。
「ははっ!命に代えても彼の居城を落します。
我が王国への忠誠、しかとご覧に入れましょう」
ダグリーが代表して応え、一同、ドレルアンへ
一礼すると軍を指揮するために本陣を後にした。
彼らの姿が見えなくなると、
ティモフェイは父へ食って掛かった。
「父上!戦場の誉たる先陣を
彼らに任せるとは一体、どういうことですか?」
ティモフェイはドレルアンに与する派閥の
貴族たちの疑問を代表して尋ねる形となった。
ドレルアンはじろりとティモフェイたちを睨みつけた。
「そのようなことすら説明しないと分からんか」
「その表情、本当に分からないようだな」
ドレルアンは天を仰いだ。
「溜まった不満は時に解消させてやらねばならぬ。
丁度、良い戦場であろうよ。
奴らが損害を被るも戦功を挙げるも
我らにとって失うものはない」
年嵩の貴族たちは顔を見合わせていた。
納得はしているが、釈然としないものを感じていた。
ただ一人、ティモフェイだけは承服しかねる
という表情であった。
「ティモフェイ様、ここは彼らに任せるべきですな」
「そうそう、彼らは必死に攻めるでしょう。
それを賞賛してこそのティモフェイ様です」
取り巻きに宥められて、幾分落ち着きを
取り戻したティモフェイだった。
「わかりました。彼らの後詰として、兵を指揮いたします」
ドレルアンは鷹揚に頷いた。
勝手気儘に動き出した誠一たちに遅れた。
「ラムデール、どうする?」
近寄って来た小鬼を斬り倒すと
ファブリッツィオは、誠一たちの方へ目を向けた。
「難敵はアルフレートたちに任せますか。
将なくば兵もどう動いていいか困るでしょう」
ラムデールはため息をつくでもなく
淡々と兵士たちを指揮し始めた。
「それもそうだな。
それにしてもアルフレートの野郎、
リーダーならしっかりと指示しやがれよな。
俺は混乱している後方へ向かう。
ここは任せるぞ」
ファブリッツィオは怒号と悲鳴の上がる後方へ
向かって走り出した。
ラムデールは、2,3匹の小鬼を斬り倒すと、
兵士たちに向かって叫んだ。
「落ち着け!大した魔物はいない。
難敵は我らがリーダーのアルフレートが倒す。
敵は知性のない魔物だ。策など持ち合わせていない。
目の前の敵に集中しろ!」
王都で雇った幾人かの気の利いた傭兵たちが
ラムデールに合わせて雄叫びを上げると、
軍の混乱は次第に落ち着き始め、魔物の大軍を押し返し始めた。
ジェミロの居城の前に軍を展開するドレルアンや
ティモフェイも誠一たち後方の混乱に気が付いた。
しかし、積極的に動く様子はなかった。
「父上、底の浅い策ではありますが、いかがいたしますか?」
城外と城内から王国軍を挟撃する意図がありありと
王国軍の諸将にはわかった。
ティモフェイの発言にドレルアンの反応は鈍かった。
「如何にとは?」
聞き返されたティモフェイは鼻白んだ。
ドレルアンはティモフェイを一瞥すると、城壁の方を見つめた。
「ダグリー伯爵を大将、メルディアン子爵を副将として、
両翼をヘンリッキ男爵、エリアス男爵が指揮せよ。
これよりジェルミラ家の居城を落す」
ストラッツェール家の派閥に属さない貴族たちが
攻城戦の先陣をドレルアンより任された。
ここまでの南方戦役ではあまり目立った活躍はなく、
他の貴族たちの後塵を拝していた。
そのため、抜擢された諸将はこの戦功をあげる機会に興奮した。
「ははっ!命に代えても彼の居城を落します。
我が王国への忠誠、しかとご覧に入れましょう」
ダグリーが代表して応え、一同、ドレルアンへ
一礼すると軍を指揮するために本陣を後にした。
彼らの姿が見えなくなると、
ティモフェイは父へ食って掛かった。
「父上!戦場の誉たる先陣を
彼らに任せるとは一体、どういうことですか?」
ティモフェイはドレルアンに与する派閥の
貴族たちの疑問を代表して尋ねる形となった。
ドレルアンはじろりとティモフェイたちを睨みつけた。
「そのようなことすら説明しないと分からんか」
「その表情、本当に分からないようだな」
ドレルアンは天を仰いだ。
「溜まった不満は時に解消させてやらねばならぬ。
丁度、良い戦場であろうよ。
奴らが損害を被るも戦功を挙げるも
我らにとって失うものはない」
年嵩の貴族たちは顔を見合わせていた。
納得はしているが、釈然としないものを感じていた。
ただ一人、ティモフェイだけは承服しかねる
という表情であった。
「ティモフェイ様、ここは彼らに任せるべきですな」
「そうそう、彼らは必死に攻めるでしょう。
それを賞賛してこそのティモフェイ様です」
取り巻きに宥められて、幾分落ち着きを
取り戻したティモフェイだった。
「わかりました。彼らの後詰として、兵を指揮いたします」
ドレルアンは鷹揚に頷いた。
0
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説
異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
リケジョの知識で異世界を楽しく暮らしたい
とも
ファンタジー
私、遠藤杏奈 20歳。
某私立大学 理工学部の3年生。
そんなリケジョの卵だったんだけど、バイトに行く途中、交通事故に巻き込まれて…
…あれ、天国で目が覚めたと思ったのに、違うってどういうこと?
異世界転生?なにそれ?美味しいの?
元の世界には戻れないっていうし、どうやら転生者の先輩もいるそうだから、仕方がないので開き直って楽しく生きる方法を考えよう。
そんな杏奈がのんびりまったり、異世界ライフを楽しむお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる