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813. ジェルミラ領進撃5
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「しかも鬼谷に頭を叩かれたのに助けもしないし。
サリナは助けたのにね。ねえ、どういうこと?」
誠一は過去の経験を思い返し、脳をフル回転させたが、
何も思いつかなかった。
元の世界では女性と修羅場を経験するようなこともなかった。
そもそも女性と無縁の生活であった。
故に全く経験不足であり、誠一にとって
初めての相手であるキャロリーヌに対して無意識に
甘えていた。
しかし、今、誠一の心は極限まで追い込まれていた。
そしてその事が如実に彼の身体に表れていた。
誠一の身体は左右にメトロノームのように振れ始めた。
「ちょっ、アル。大丈夫?」
誠一の珍妙な身体の動きを見たキャロリーヌは、
大いに焦った。
慌てて、近寄り誠一の両肩に手をかけて、
誠一の身体を前後に振った。
前後左右に動く誠一の身体は、正確に十字を描いた。
「うっうううっ」
心配そうに見つめるキャロリーヌだった。
「うううっ、げえっ」
誠一は焚き火に向かって吐瀉してしまった。
キャロリーヌに吐きかけなかったことが唯一幸いだった。
「ちょっと、アル。
ごめんなさい、そこまで追い詰めたつもりはなかったんだけど」
更に誠一は吐瀉した。
何度も吐き、最後は吐き出すものがなく、
胃液を吐き出していた。
酸味の強い不快な臭いが周囲に充満した。
「アル、口を濯いで」
キャロリーヌは誠一の口に水を含ませた。
誠一はうがいをして、水を吐き出した。
何度かうがいを繰り返すと、
誠一は少し落ち着きを取り戻した。
「キャロ、ごめんなさい」
誠一はその事を言うだけで精一杯だった。
誠一の態度は真剣そのものだった。
そのことにキャロリーヌは満足したのか
誠一に向けて軽く微笑んだ。
その微笑みを見た誠一はホッとした。
「まっ落ち着いたら、
買い物にでも付き合って貰おうかなぁー」
形の良い顎に右手を当てて、
ニッコリと微笑むキャロリーヌだった。
ただ誠一は頷くだけだった。
軍に喝を入れたもののその後も襲われることなく
誠一たちは輜重を護衛しながら進んだ。
最前線を進む王国軍は、小城や砦を次々と陥落させ、
意気揚々と南方地方を進軍していた。
特にティモフェイ・ストラッツェールは
得意の絶頂であった。
幾つもの城や砦を落し、南方地方で
それなりに名の通った敵将や貴族を討ち取り、降していた。
本軍に従軍していたファブリッツィオやラムデールも
いつの間にか誠一たちに合流していた。
ふと誠一はほとんど覗いたことのない彼等二人の称号や
能力が気になってしまった。
この時、誠一は過去、リシェーヌに犯した過ちを
すっかり忘却の彼方に押しやっていた。
仲間の能力を正確に知っておくのはリーダーとして
戦略・戦術を練るのに至極当然であると自分を
納得させる十分な理由が脳の大半を占めていた。
サリナは助けたのにね。ねえ、どういうこと?」
誠一は過去の経験を思い返し、脳をフル回転させたが、
何も思いつかなかった。
元の世界では女性と修羅場を経験するようなこともなかった。
そもそも女性と無縁の生活であった。
故に全く経験不足であり、誠一にとって
初めての相手であるキャロリーヌに対して無意識に
甘えていた。
しかし、今、誠一の心は極限まで追い込まれていた。
そしてその事が如実に彼の身体に表れていた。
誠一の身体は左右にメトロノームのように振れ始めた。
「ちょっ、アル。大丈夫?」
誠一の珍妙な身体の動きを見たキャロリーヌは、
大いに焦った。
慌てて、近寄り誠一の両肩に手をかけて、
誠一の身体を前後に振った。
前後左右に動く誠一の身体は、正確に十字を描いた。
「うっうううっ」
心配そうに見つめるキャロリーヌだった。
「うううっ、げえっ」
誠一は焚き火に向かって吐瀉してしまった。
キャロリーヌに吐きかけなかったことが唯一幸いだった。
「ちょっと、アル。
ごめんなさい、そこまで追い詰めたつもりはなかったんだけど」
更に誠一は吐瀉した。
何度も吐き、最後は吐き出すものがなく、
胃液を吐き出していた。
酸味の強い不快な臭いが周囲に充満した。
「アル、口を濯いで」
キャロリーヌは誠一の口に水を含ませた。
誠一はうがいをして、水を吐き出した。
何度かうがいを繰り返すと、
誠一は少し落ち着きを取り戻した。
「キャロ、ごめんなさい」
誠一はその事を言うだけで精一杯だった。
誠一の態度は真剣そのものだった。
そのことにキャロリーヌは満足したのか
誠一に向けて軽く微笑んだ。
その微笑みを見た誠一はホッとした。
「まっ落ち着いたら、
買い物にでも付き合って貰おうかなぁー」
形の良い顎に右手を当てて、
ニッコリと微笑むキャロリーヌだった。
ただ誠一は頷くだけだった。
軍に喝を入れたもののその後も襲われることなく
誠一たちは輜重を護衛しながら進んだ。
最前線を進む王国軍は、小城や砦を次々と陥落させ、
意気揚々と南方地方を進軍していた。
特にティモフェイ・ストラッツェールは
得意の絶頂であった。
幾つもの城や砦を落し、南方地方で
それなりに名の通った敵将や貴族を討ち取り、降していた。
本軍に従軍していたファブリッツィオやラムデールも
いつの間にか誠一たちに合流していた。
ふと誠一はほとんど覗いたことのない彼等二人の称号や
能力が気になってしまった。
この時、誠一は過去、リシェーヌに犯した過ちを
すっかり忘却の彼方に押しやっていた。
仲間の能力を正確に知っておくのはリーダーとして
戦略・戦術を練るのに至極当然であると自分を
納得させる十分な理由が脳の大半を占めていた。
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