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801. 動乱 諸国の事情2
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「叔父上、結局のところ、モレロンって奴は死んだ上に
そいつの領土がアルフレートに落されたってことだよな」
島崎は遠縁にあたるジェルラ・ジェルミラを詰問した。
無論、自領のことであり島崎も把握していたが、
嫌味のつもりでジェルラに質問した。
「その通りだ。
だがダンブル皇帝はレドリアン導師とデルガド様を通じて、
様々な策と魔術師を送り込んでくれたぞ。
それらは、十分すぎる程の援助だ」
虚勢を張り、対等な立場でいようとするジェルラだが、
声は震えて、視線を島崎と合わせないようにしていた。
島崎は一段高い場所からジェルラを見下ろして、笑った。
「叔父上、そう怖がるな。
皇帝はやれるだけのことはやったということだろう。
アルフレートの野郎の侵攻を防げなかったのは、
ジェルミラ家の連中が無能であったからだろ。
なあ、そうなんだろう。それが皇帝の意見なんだろう」
皇帝という言葉が島崎より出てしまっている以上、
ジェラルはおいそれと答える訳にはいかなかった。
一つ言葉の扱いを間違えれば、ジェルラ自身の
身の破滅となるだろう。ジェラルは曖昧に笑った。
「答えられないか。まあいい、叔父上の立場もあるからな」
島崎は、後方に直立する粗暴そうな武人と
無能そうな文官に声をかけていた。
2人は直立不動の態で一切動かなかった。
毎度のことながら、ジェルラは、2人を気味悪げに見た。
話が纏まったようで、島崎はジェルラの方へ目を向けた。
「叔父上、一つ相談があるんだが」
「なっなんだ。
これからもジェルミラ家の領土防衛のために
協力するとのお言葉を導師より頂いているぞ」
ジェルラはこれから言うであろう島崎の無理難題を牽制した。
「叔父上、そう構えるなって。大したことはない。
なーに皇帝陛下の皇女を俺に輿入れさせるだけだ。
より強固な関係を皇帝陛下と築きたいと思っているんだよ。
子沢山な皇帝陛下のことだ。継承順位の低い皇女でいい。
そうだなあ、敢えて俺の好みを言えば、
容姿は程ほどでもグラマラスな女だ」
ジェルラの頭は真っ白になった。
そして身体はいまにも倒れそうな程にふらついてしまった。
ジェルラの両脇を島崎に侍っていた女たちが慌てて、
ジェルラを支えた。
ゆっくりとジェルラの意識が戻って来た。
「儂ごときが使者として、
伝えられるような案件ではないだろ!
ジェイコブ、いい加減にしろ。無理だ。
儂を殺す気か。もう沢山だ。
取次は別の者にするようにレドリアン導師に伝える」
ジェルラは両脇の女性を乱暴に振り払うと
踵を返して退室しようとした。
しかし、その場から動くことができなかった。
ジェルラは、いつの間にか首根っこをがっしりと
押さえ付けられていた。
「叔父上、そうお怒りなさるな。
あくまでもこれは我ら先祖代々からの南方の領土を
彼奴らから守るための方策。
俺が皇帝陛下の親族になれば、南方領の防衛に
更に力をいれるでしょう。
流石に皇帝領が王国に陥落させられる訳にはいかないだろう。
叔父上は、只、思い付きのような感じで
北関の城主に話せばいいだよ」
島崎はジェルラの耳元に囁いた。
島崎の生臭い臭いがジェルラの鼻を突いた。
勢いジェルラは顔をのけぞらそうとしたが、
島崎にがっちりと掴まれており、逆に顔を下げた。
それを島崎は頷いたと勘違いしたのか、
満足そうにジェルラを解放した。
そいつの領土がアルフレートに落されたってことだよな」
島崎は遠縁にあたるジェルラ・ジェルミラを詰問した。
無論、自領のことであり島崎も把握していたが、
嫌味のつもりでジェルラに質問した。
「その通りだ。
だがダンブル皇帝はレドリアン導師とデルガド様を通じて、
様々な策と魔術師を送り込んでくれたぞ。
それらは、十分すぎる程の援助だ」
虚勢を張り、対等な立場でいようとするジェルラだが、
声は震えて、視線を島崎と合わせないようにしていた。
島崎は一段高い場所からジェルラを見下ろして、笑った。
「叔父上、そう怖がるな。
皇帝はやれるだけのことはやったということだろう。
アルフレートの野郎の侵攻を防げなかったのは、
ジェルミラ家の連中が無能であったからだろ。
なあ、そうなんだろう。それが皇帝の意見なんだろう」
皇帝という言葉が島崎より出てしまっている以上、
ジェラルはおいそれと答える訳にはいかなかった。
一つ言葉の扱いを間違えれば、ジェルラ自身の
身の破滅となるだろう。ジェラルは曖昧に笑った。
「答えられないか。まあいい、叔父上の立場もあるからな」
島崎は、後方に直立する粗暴そうな武人と
無能そうな文官に声をかけていた。
2人は直立不動の態で一切動かなかった。
毎度のことながら、ジェルラは、2人を気味悪げに見た。
話が纏まったようで、島崎はジェルラの方へ目を向けた。
「叔父上、一つ相談があるんだが」
「なっなんだ。
これからもジェルミラ家の領土防衛のために
協力するとのお言葉を導師より頂いているぞ」
ジェルラはこれから言うであろう島崎の無理難題を牽制した。
「叔父上、そう構えるなって。大したことはない。
なーに皇帝陛下の皇女を俺に輿入れさせるだけだ。
より強固な関係を皇帝陛下と築きたいと思っているんだよ。
子沢山な皇帝陛下のことだ。継承順位の低い皇女でいい。
そうだなあ、敢えて俺の好みを言えば、
容姿は程ほどでもグラマラスな女だ」
ジェルラの頭は真っ白になった。
そして身体はいまにも倒れそうな程にふらついてしまった。
ジェルラの両脇を島崎に侍っていた女たちが慌てて、
ジェルラを支えた。
ゆっくりとジェルラの意識が戻って来た。
「儂ごときが使者として、
伝えられるような案件ではないだろ!
ジェイコブ、いい加減にしろ。無理だ。
儂を殺す気か。もう沢山だ。
取次は別の者にするようにレドリアン導師に伝える」
ジェルラは両脇の女性を乱暴に振り払うと
踵を返して退室しようとした。
しかし、その場から動くことができなかった。
ジェルラは、いつの間にか首根っこをがっしりと
押さえ付けられていた。
「叔父上、そうお怒りなさるな。
あくまでもこれは我ら先祖代々からの南方の領土を
彼奴らから守るための方策。
俺が皇帝陛下の親族になれば、南方領の防衛に
更に力をいれるでしょう。
流石に皇帝領が王国に陥落させられる訳にはいかないだろう。
叔父上は、只、思い付きのような感じで
北関の城主に話せばいいだよ」
島崎はジェルラの耳元に囁いた。
島崎の生臭い臭いがジェルラの鼻を突いた。
勢いジェルラは顔をのけぞらそうとしたが、
島崎にがっちりと掴まれており、逆に顔を下げた。
それを島崎は頷いたと勘違いしたのか、
満足そうにジェルラを解放した。
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