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798.円卓1

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翌日、ラムデールを除くクランのメンバーで
円卓を囲んだ。

誠一が話始めようとすると、剣豪がそれを遮った。
「いけませんな。これはいけませんな」
剣豪がぼやいた。

マリアンヌは、雰囲気的に剣豪に賛同しているようであった。
ファブリッツィオは不貞腐れているように見えた。
誠一には剣豪のぼやきの意味が全くわからなかったし、
思い当たる節もなかった。

そのうちシエンナが納得したように頷いた。
「あーそういうことか。
そうね、確かに円卓はよろしくなかったかな。
クラン以外のメンバーが見たら確かにね。
まーでも今回はもうこれでいいんじゃないの」

誠一は、何が良いのか皆目見当がつかなかった。

「おう、そうだな。今回はこれでいいんじゃないか」
ヴェルがシエンナに賛成した。
誠一はヴェルの表情を読み取った。
どうやらヴェルは分かったふりを
しているような気がした。

「そうだね。ところでヴェル、次回はどうするべきか。
教えて貰いたいけど」

「はっ、何で俺に聞く?シエンナに聞けよ。
俺が分かる訳ないだろ。
単に今回はこれでいいんじゃねえかと賛成しただけだろ」

まるでそれが当然の如くヴェルが胸を張って答えた。
確かにヴェルは、今回の件に賛成しただけであって、
何が悪いか分かったとは言っていないと誠一は思った。

しかし、誠一は思い直した。
いやいや話の流れから考えるとヴェルは
分かっているはずだと誠一は強く自分に言い聞かせた。
そしてその思いをシエンナが代弁した。

「ちょっと、ヴェル。
話の流れから当然分かっているものと思うでしょ」

「だからぁ、ちゃんと言っただろう。
分からんと!何度も言わせて、シエンナ、嫌味かよ」

「いやそう言うつもりじゃないけど」
言いよどむシエンナだった。

「分かったら、シエンナ、早く説明してくれよ」

何故かシエンナがヴェルに怒られていた。
どうも納得できないことがシエンナの表情から見てとれた。

「ふうう、まあいいわ。
軍の体裁を整えている以上、
その立場を明確にしなさいということよ。
円卓、これは皆が対等で忌憚なき意見が
言い合える良い案だけど、軍紀、軍律をもって
統制する軍ではあまり良いとは言えないわ。
私たちのクランだけで行動していたら、
良いんでしょうけどね」

誠一とヴェルの表情は納得していることを示していた。
「まー今回はいわば内輪だけだから、
もうこのままでいいんじゃない」
シエンナのその言葉で各所の状況の擦り合わせが始まった。

誠一はモレロン領での件を話し、

今後の展望について説明をした。

「そうでござるか。モレロン領を接収いたしましたか。
それは重畳。あの地域は南方地域でも要所なる場所。
今後、アルフレート様が南方を攻略するにあたって、
まっことにめでたきことにござる」
珍しく皮肉も利かせずに手放しで褒める剣豪であった。
誠一は剣豪に対して警戒の色が強くなった。

「そうですね、確かにヴェルトゥール王国の
南方経略において、今後、非常に重要になります」

「それではアルフレート様の留守を
預かっていた間に関して、説明するでござる」

「まず、周辺の治安ですが、概ね良好に維持できております。
また、周辺の土豪、小領主でアルフレート様に
敵対する勢力は、粗方降伏もしくは
我が方へ接収済みでござる。
ジェルミラ家より解放された多くの領地で
アルフレート様への感謝で溢れております。
また、その忠誠を示すために多くの住民が
武器を取って、参陣を求めております」

いや待て、この人は自分に何をさせたいのかと
誠一は自問自答した。
まさかと思うが、ジェイコブ・ジェルミラのように
この地を拠点に独立させたいのだろうか。
どうもヴェルトゥール王国の声望より
アルフレート・フォン・エスターライヒの声望の方が
遥かに大きくなっているような気がしてならなかった。
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