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790.南方戦役37
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埋葬がすむと、誠一たちは
ヴェルトゥール王国の名において、
幾つかの課役免除や減税を告知した。
この地はモレロン卿の施策によって、
住民よりの治世が行われていた。
そのため告知に対する住民の反応はいまいちであった。
続いて、誠一は、モレロン卿の名誉を守り、
手厚く埋葬したことを伝えた。
すると、住民たちの反応は誠一たちへ
好意的に傾いたように感じられた。
それと同時にニコラ・モレロンの一人娘、
フォーニエ・モレロンの行方を心配する声が上がり始めた。
誠一はどうしたものかと悩んだ。
南方地方を訪れた最大の目的は、
冒険譚を入手することであり、
この地をヴェルトゥール王国領に
組み込むことでなかった。
しかし、彼らの心証を敢えて悪くする必要もないと思い、
遠征先で捜索することを告知することにした。
誠一は、どの道、この地を離れてしまえば、
適当に捜索しても大丈夫だろうと高を括っていた。
旧ジェルミラ子爵領で最大の外様領主であった
モレロン卿の領地を誠一はヴェルトゥール王国に接収した。
このことは南方に領土を持つ貴族たちに瞬く間に広がった。
この地の最大勢力であるジェイコブ・ジェルミラが
外様とはいえ派閥のモレロン卿を助けることが
できなかったことで彼らの思惑に様々な選択肢を
投げかけることとなった。
激戦の地となったモレロン卿の城は
この領地の中心地であり、誠一は疫病の蔓延を
防ぐ点からも遺体の埋葬を急いだ。
近隣住民総出で事に当たった。
参加した住民には、今年度の全ての課役免除を告知した。
城の復旧、街道の再整備等、必要な工事に対して、
ヴェルトゥール王国の金庫から吐き出させる
算段を考えねばならなかった。
考えるだけも誠一は億劫になった。
最終的に誠一はそのことに関して考えることを放棄して、
いずれこの地に派遣される王国の代官に丸投げすることにした。
「モレロン領の防衛と治安回復のために
誰かに残って貰わないと」
誠一は仲間を見渡した。
誠一の中での候補はマリアンヌかロジェであった。
ヴェルとアミラは論外、時点でシエンナかキャロリーヌだった。
サリナは職務上、表立って活動させる訳にはいかなかった。
「まあ、このメンバーなら俺か」
ロジェが自ら名乗りを上げた。
「すみませんが、ロジェさん、よろしくお願いします」
「まあ、しかしなんだな。
こうなってくるとどうにも人材が足りないな。
王都で雇入れた冒険者で千晴様を信仰して、
アルフレート君に忠誠を誓う連中を
クランに引き入れざるを得ないな」
誠一はロジェの意見に懐疑的であった。
領土を得て、ジェイコブ・ジェルミラのように
王を僭称するつもりは毛頭なかった。
冒険者として、己が求める路、
つまりはエリクサーを入手することが目的であった。
そのうち王都から正規軍が派兵されてくるだろうから、
それまでの辛抱だと考えていた。
「では我々は翌日、戻るとしよう。
あんまり留守にしていると剣豪殿が悪知恵を働かせて、
良からぬ企みを始めるかもしれない」
マリアンヌが剣豪の治める城の方を見つめていた。
本来ならば、笑って終わるとこであったが、誰も笑わなかった。
全員が一抹の不安を感じていた。
ヴェルトゥール王国の名において、
幾つかの課役免除や減税を告知した。
この地はモレロン卿の施策によって、
住民よりの治世が行われていた。
そのため告知に対する住民の反応はいまいちであった。
続いて、誠一は、モレロン卿の名誉を守り、
手厚く埋葬したことを伝えた。
すると、住民たちの反応は誠一たちへ
好意的に傾いたように感じられた。
それと同時にニコラ・モレロンの一人娘、
フォーニエ・モレロンの行方を心配する声が上がり始めた。
誠一はどうしたものかと悩んだ。
南方地方を訪れた最大の目的は、
冒険譚を入手することであり、
この地をヴェルトゥール王国領に
組み込むことでなかった。
しかし、彼らの心証を敢えて悪くする必要もないと思い、
遠征先で捜索することを告知することにした。
誠一は、どの道、この地を離れてしまえば、
適当に捜索しても大丈夫だろうと高を括っていた。
旧ジェルミラ子爵領で最大の外様領主であった
モレロン卿の領地を誠一はヴェルトゥール王国に接収した。
このことは南方に領土を持つ貴族たちに瞬く間に広がった。
この地の最大勢力であるジェイコブ・ジェルミラが
外様とはいえ派閥のモレロン卿を助けることが
できなかったことで彼らの思惑に様々な選択肢を
投げかけることとなった。
激戦の地となったモレロン卿の城は
この領地の中心地であり、誠一は疫病の蔓延を
防ぐ点からも遺体の埋葬を急いだ。
近隣住民総出で事に当たった。
参加した住民には、今年度の全ての課役免除を告知した。
城の復旧、街道の再整備等、必要な工事に対して、
ヴェルトゥール王国の金庫から吐き出させる
算段を考えねばならなかった。
考えるだけも誠一は億劫になった。
最終的に誠一はそのことに関して考えることを放棄して、
いずれこの地に派遣される王国の代官に丸投げすることにした。
「モレロン領の防衛と治安回復のために
誰かに残って貰わないと」
誠一は仲間を見渡した。
誠一の中での候補はマリアンヌかロジェであった。
ヴェルとアミラは論外、時点でシエンナかキャロリーヌだった。
サリナは職務上、表立って活動させる訳にはいかなかった。
「まあ、このメンバーなら俺か」
ロジェが自ら名乗りを上げた。
「すみませんが、ロジェさん、よろしくお願いします」
「まあ、しかしなんだな。
こうなってくるとどうにも人材が足りないな。
王都で雇入れた冒険者で千晴様を信仰して、
アルフレート君に忠誠を誓う連中を
クランに引き入れざるを得ないな」
誠一はロジェの意見に懐疑的であった。
領土を得て、ジェイコブ・ジェルミラのように
王を僭称するつもりは毛頭なかった。
冒険者として、己が求める路、
つまりはエリクサーを入手することが目的であった。
そのうち王都から正規軍が派兵されてくるだろうから、
それまでの辛抱だと考えていた。
「では我々は翌日、戻るとしよう。
あんまり留守にしていると剣豪殿が悪知恵を働かせて、
良からぬ企みを始めるかもしれない」
マリアンヌが剣豪の治める城の方を見つめていた。
本来ならば、笑って終わるとこであったが、誰も笑わなかった。
全員が一抹の不安を感じていた。
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