転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

786.南方戦役33

モレロン軍の騎士たちは全滅した。
一人の兵士が椅子に座るモレロン卿に近づいた。
その瞬間、兵士の頭が飛んだ。
首なしのモレロン卿が立ち上がっていた。
右手に剣を握っていたが、首を飛ばした剣筋が
見えた者はいなかった。
隣のドレスを身に纏った首なしの女性も立ち上がった。

兵士たちは後退りした。
目の前の怪物相手が自分たちの手に負えないことを
彼らの経験が訴えていた。

誠一やヴェル、アミラは目の前の化け物の動きに
集中していた。そんな中でシエンナは、広範囲に探知魔術を展開した。

「敵意を見せる者、この場を観察する者を探せ。水蝕探知」
幾本もの水の筋が広間の隅々まで舐め回すように這いだした。
そして、最も闇の深い場所で動きが止まった。

「そこかぁああぁー」
マリアンヌが一気にその場所へ距離を詰め、
ソードブレイカーを振り下ろした。
闇は切り裂かれ、窓より射しこむ陽がその場を照らした。

「流石はS級ライセンス持ちの戦士というところか」
切り裂かれた闇は再び、一か所に集まり結合した。

「ふん、貴様の存在を感知したのは、
魔術院をまだ卒業すらしていない魔術師だがな」

「それで煽っているつもりですかな。
S級、神剣の担い手マリアンヌ殿」
余裕を見せているつもりのようだったが、
声は上擦っていた。
シエンナはついつい笑ってしまった。
つられる様に誠一とヴェルも笑った。
　元々、マリアンヌを前に余裕がないのか、
それともプライドがいたく傷つけられたのか、
一気に声のトーンが変わった。

「貴様ら笑ってられるのも今の内だけだ。
魔物の中でも高位に位置するデュラハン2体を
相手にどこまで強がってられるか見物だ」

「うーん、デルガドの使い走りかな。
数多の魔術院の首席卒業者の中でも
かなり低レベルな時期の首席だし。微妙」
シエンナが小首を傾げた。

「どういうことだよ、分かんねーぞ。
シエンナちゃんと説明しろ。気になってしかたないだろ」

ヴェルはシエンナに説明を催促した。
何故か黒衣の男もシエンナの説明を待った。

「デルガド自身の研究も微妙だし、
亡くなった方には申し訳ないけど、
デュラハンという魔物の強度を
人の身体で模倣できるとは思えないのよね」

「つまりそういうことか！納得だ。
あれはデュラハンのかっこをしたゾンビってことだな。
北関で見たゾンビの群れと同じか。
くだらないこけおどしに人の命を犠牲にしやがって。
おまえ、覚悟はできているだろうな」

ヴェルの啖呵を聴きながら誠一は、
果たしてデルガドほどの魔術師がその程度で
終わらせるだろうかと疑問を感じた。