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744.領土防衛戦13

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屋敷の門をくぐると、シエンナが語気を強めて、話し出した。
「アル、さっきのは駄目よ。今後、絶対に止めてね」

「さっきのって一体、何のこと?」
思い当たる節のない誠一はシエンナと対照的に呑気に答えた。

「あーあー、これは全く気付いてないわね。
シエンナ、はっきりと伝えないと一生気づかないよ」

シエンナがため息をついて、続けた。

「いいアル。ここは敵地よ。
あの老人が暗殺者なら、背後から首を掻っ切られた。
お終いよ。親切な対応だと思うけど、軽率な行動は控えて」
サリナもうんうんと頷き、シエンナの意見に同意していた。
指摘された誠一も納得していた。
元の世界と違って、どこにでも死が潜んでいるこの世界では
確かに軽率であったと誠一も反省した。
「ごめん、これからは気を付けるよ」

「そうね。そうするべきね。
あんた、クランのリーダーなんだから、
そこら辺をもっと自覚して貰わないと」
サリナが厳しい口調で追い打ちをかけた。

「シエンナ、どうかした?」
誠一がシエンナの方を向くと言いにくそうな表情で
口をもごもごしていた。

「いやそのね。確かに軽率な行動だったけど、
そのあのアルらしいなって。
何ていうかその優しさは殺伐とした時世だけど、
無くしてほしくないなーなんて思ったりしたり」
厳しく誠一を叱責した手前、
シエンナは物凄くばつの悪そうな表情で捲し立てた。
隣でサリナが大仰に両手で自分の顔を仰いでいた。

「はあっ、まったく。これだから、こいつらは。
まったくごちそうさまとしか言えない」

「むっ」
誠一が唸った。

「むう」
シエンナが唸った。

「はいはい、それよりデュプレが溜め込んだ財宝の確認に
向かってはどうでしょうか、アルフレート・フォン・エスターライヒ様」

それはサリナが普段、使わないような丁寧な言葉遣いであった。
しかし、その口調が適当で、誠一とシエンナはつい笑ってしまった。

「そうだね、そうしないと当面の食料を
ここら一帯の村に提供できないしね」

館の最奥には幾重にも施錠と鎖の巻かれた巨大な扉があった。

「うふふふっ。やっと私が腕を見せる時が来たわ。
この時をどれだけ待ったことやら」

サリナが悦に入っている。

「まったく遺跡にも迷宮の攻略に
全然、行かないから、腕が鈍るじゃん」

誠一は、いやいやそこまで経験値高ないでしょ
と心の中で突っ込んだ。
その誠一の隣でシエンナの魔術が展開されていた。

「いまここに全てを白日の下に晒せ、アンロック」
扉の取っ手に巻き付けられていた太い鎖がごとりと床に落ちた。
その音に反応して、シエンナを睨みつけるサリナだった。

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