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734. 領土防衛戦3
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誠一は一度、仲間たちを見渡した。
「それでだけど、今の状況を
何とかするための良案があれば、提示して欲しい」
誠一の言葉にヴェルがすぐさま応じた。
「俺とアミラを中心として、
近隣の反王国派を一つ攻め落とす。
小規模な領主なら大丈夫だろ。
それでしっかりと分からせてやるわ。どうだ!」
「うーん、農村部に幾人かの冒険者たちを
送って、自衛させるのはどうかな。
どうも敵対している領主たちも連携はとれてないようだし、
自衛がある程度、上手くいきそうな目途をつけて、
攻め込んだ方がいいかな」
シエンナが地図とにらめっこをしながら、
最初に自衛すべき村を指差していた。
誠一もうんうんと頷きながら地図を眺めていた。
そもそもジェイコブ領の攻略がメインじゃなかったはずだがと
首をひねりながらも二人の意見を吟味した。
暫く活発な意見交換が行われていたが、突然、
酒臭さが漂ってきた。
バシッ、誠一たちが眺める地図の一点を扇子が叩いた。
「げふぅ、この村が今のところ一番、
ちょっかいを出されているでござる。
隣接するジェイコブ派としても一番、勢力が大きいでござる。
なれば、ここの抑えとして、マリアンヌ殿と
5名の傭兵を送り、守るが良策」
剣豪が言葉を口にする毎に漂う不快な臭いを
我慢しながら、誠一たちは耳を傾けた。
議論の余地あるまともな意見であった。
しかし、誰しもがその意見でなく、臭いに眉を顰めていた。
「鬼谷殿、流石にマリアンヌ殿でも
その人数ではきついのではないか」
「そうね。そこに最低でも私かシエンナ、
無理だけどアルが同行しないと。
強力な遠距離攻撃や補助魔術のサポートが
欲しいところかな」
ロジェの懐疑的な意見にキャロリーヌが補足を加えた。
「要らぬお世話。マリアンヌ殿、1人で十分でござる」
マリアンヌがにやりとした。
「確かに村からの撤退を前提としての
殿軍の立ち位置ならば、上手くやれそうだな。
だが、それなら、鬼谷殿でも問題なかろう。
今の案、私は受け入れる。
だが、最終的にはアルフレート、判断してくれ。
無論、私か剣豪殿のどちらを派遣するかも含めてな」
「いや本殿を守護する役目、これは拙者しかできぬであろう」
誠一が決断を下す前に剣豪が素早く派遣を暗に拒否した。
「ふむ、酒を呑み、酔っぱらうのが
本殿を守護する仕事なら私でも務まるな」
誠一の決断を迷わすような事をマリアンヌが補足した。
「無理でござる。マリアンヌ殿では
貯蔵された酒の量が足りぬでござる」
よく分からない理屈で反論する剣豪に誠一は呆れたが、
実際のところ、屍山血河の前に佇む剣豪の姿を思い出していた。
誠一はやり過ぎを心配して、マリアンヌに頼むことにした。
「マリ、頼みます。
もし守りきれないと判断したら、
住民ごと本城まで撤退してください。
住民を引き入れても1か月程の糧秣はあります。
少なくとも1か月程度の時間を稼げれば、
ヴェルトゥール王国から何らかの指示があるはずです。
それを受けてから具体的な次の方針を定めます」
「よかろう。その任、受け賜わった」
マリアンヌは何の不平・不満も言わずにその任務を受けた。
「他の村の巡回と防衛はロジェさんとキャロで頼みます。
サリナを斥候にヴェルとアミラを先鋒にして、
隣接する反王国派の領主を一人、一気に攻め落とす。
僕が本陣で後衛はシエンナ。本城の防衛は先生、お願いします」
「ふむ、あいわかった。10名ほど借り受けよう」
「ならば俺の方は15名ほどだな。
アルフレート君、それでいいか」
率いる兵数は約30名。数としては非常に少数であったが、
スケードの存在を考えれば、十分であると誠一は判断した。
「分かりました。僕らは明後日に出発します。
マリは準備ができ次第お願いします」
予定通り誠一たちは出発した。
晴天に恵まれ、路を進む誠一たちの行軍は
予定を遅れる事無く進んでいた。
「それでだけど、今の状況を
何とかするための良案があれば、提示して欲しい」
誠一の言葉にヴェルがすぐさま応じた。
「俺とアミラを中心として、
近隣の反王国派を一つ攻め落とす。
小規模な領主なら大丈夫だろ。
それでしっかりと分からせてやるわ。どうだ!」
「うーん、農村部に幾人かの冒険者たちを
送って、自衛させるのはどうかな。
どうも敵対している領主たちも連携はとれてないようだし、
自衛がある程度、上手くいきそうな目途をつけて、
攻め込んだ方がいいかな」
シエンナが地図とにらめっこをしながら、
最初に自衛すべき村を指差していた。
誠一もうんうんと頷きながら地図を眺めていた。
そもそもジェイコブ領の攻略がメインじゃなかったはずだがと
首をひねりながらも二人の意見を吟味した。
暫く活発な意見交換が行われていたが、突然、
酒臭さが漂ってきた。
バシッ、誠一たちが眺める地図の一点を扇子が叩いた。
「げふぅ、この村が今のところ一番、
ちょっかいを出されているでござる。
隣接するジェイコブ派としても一番、勢力が大きいでござる。
なれば、ここの抑えとして、マリアンヌ殿と
5名の傭兵を送り、守るが良策」
剣豪が言葉を口にする毎に漂う不快な臭いを
我慢しながら、誠一たちは耳を傾けた。
議論の余地あるまともな意見であった。
しかし、誰しもがその意見でなく、臭いに眉を顰めていた。
「鬼谷殿、流石にマリアンヌ殿でも
その人数ではきついのではないか」
「そうね。そこに最低でも私かシエンナ、
無理だけどアルが同行しないと。
強力な遠距離攻撃や補助魔術のサポートが
欲しいところかな」
ロジェの懐疑的な意見にキャロリーヌが補足を加えた。
「要らぬお世話。マリアンヌ殿、1人で十分でござる」
マリアンヌがにやりとした。
「確かに村からの撤退を前提としての
殿軍の立ち位置ならば、上手くやれそうだな。
だが、それなら、鬼谷殿でも問題なかろう。
今の案、私は受け入れる。
だが、最終的にはアルフレート、判断してくれ。
無論、私か剣豪殿のどちらを派遣するかも含めてな」
「いや本殿を守護する役目、これは拙者しかできぬであろう」
誠一が決断を下す前に剣豪が素早く派遣を暗に拒否した。
「ふむ、酒を呑み、酔っぱらうのが
本殿を守護する仕事なら私でも務まるな」
誠一の決断を迷わすような事をマリアンヌが補足した。
「無理でござる。マリアンヌ殿では
貯蔵された酒の量が足りぬでござる」
よく分からない理屈で反論する剣豪に誠一は呆れたが、
実際のところ、屍山血河の前に佇む剣豪の姿を思い出していた。
誠一はやり過ぎを心配して、マリアンヌに頼むことにした。
「マリ、頼みます。
もし守りきれないと判断したら、
住民ごと本城まで撤退してください。
住民を引き入れても1か月程の糧秣はあります。
少なくとも1か月程度の時間を稼げれば、
ヴェルトゥール王国から何らかの指示があるはずです。
それを受けてから具体的な次の方針を定めます」
「よかろう。その任、受け賜わった」
マリアンヌは何の不平・不満も言わずにその任務を受けた。
「他の村の巡回と防衛はロジェさんとキャロで頼みます。
サリナを斥候にヴェルとアミラを先鋒にして、
隣接する反王国派の領主を一人、一気に攻め落とす。
僕が本陣で後衛はシエンナ。本城の防衛は先生、お願いします」
「ふむ、あいわかった。10名ほど借り受けよう」
「ならば俺の方は15名ほどだな。
アルフレート君、それでいいか」
率いる兵数は約30名。数としては非常に少数であったが、
スケードの存在を考えれば、十分であると誠一は判断した。
「分かりました。僕らは明後日に出発します。
マリは準備ができ次第お願いします」
予定通り誠一たちは出発した。
晴天に恵まれ、路を進む誠一たちの行軍は
予定を遅れる事無く進んでいた。
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